画像引用:© 2016 Studio Ghibli – Wild Bunch – Why Not Productions – Arte France Cinema – CN4 Productions – Belvision – Nippon Television Network – Dentsu – Hakuhodo DYMP – Walt Disney Japan – Mitsubishi – Toho
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【レッドタートル ある島の物語】です。
2016年公開のスタジオジブリが初めて国外との共同製作した作品です。
監督はオランダ出身のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット。
全篇台詞の無いサイレント映画。
シンプルなストーリーの中に奥深いテーマを感じさせる作品です。
美しい映像が圧倒的な没入感をもたらします。
この映画はこんな人におススメ!!
●孤独を感じる人
●圧倒的に美しい映像に触れたい人
●神話や暗喩的な物語が好みな人
●人生の深い余韻を味わいたい人
タイトル | レッドタートル ある島の物語 |
製作国 | 日本、フランス、ベルギー |
公開日 | 2016年9月16日(日本公開) |
上映時間 | 80分 |
監督 | マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット |
出演 | ノン・クレジット |
生きる事の意味を考えたい時に観る映画
この作品の最も大きな特徴は無声映画だという点だと思います。
台詞やモノローグによる登場人物の感情表現が無い。
状況説明も無い。
更に画面は映画草創期の作品の様な引き画で多くが説明されるので、
登場人物のクローズアップというカットが殆どありません。
これはどんな国の人でも、
どんな年齢の人でも、
或いは普段映画を殆ど観ないという人でも、
誰にでも伝わるシンプルさというものの究極の形だと言えるのでは無いでしょうか。
余計な説明や描写が無いからこそ、
圧倒的な余白が物語に生まれ、
そこに観る者それぞれの感情移入が出来る様な懐の広さを持っているのです。
これは高畑勲監督の作品にも通じる演出でもあります。
80分間で描かれるのは人間の「孤独」と、
生きる事の「意味」を問い掛けるストーリー。
ジブリ作品ではお馴染みのキャッチコピーは、
「どこから来たのか どこへ行くのか いのちは?」
というものでした。
19世紀の画家ポール・ゴーギャンの代表作、
「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」
を連想させるフレーズですが、
この人類の命題とも言える壮大なテーマを冠するに相応しい、
奥深い物語を描いた作品です。
現代の御伽噺
画像引用:© 2016 Studio Ghibli – Wild Bunch – Why Not Productions – Arte France Cinema – CN4 Productions – Belvision – Nippon Television Network – Dentsu – Hakuhodo DYMP – Walt Disney Japan – Mitsubishi – Toho
物語はある一人の男が嵐の末にある島に漂着する所から始まります。
小高い山と大きな竹林に囲まれた島はどうやら無人島の様。
圧倒的な孤独の中、
男は必死にサバイバルと島からの脱出を試みます。
しかし筏で海に出ようとする度に何者かの妨害を受けて転覆してしまう。
何度も行方を阻まれた男の前に現れたのが、
一頭のウミガメだったのです。
澄んだ真っ直ぐな目で見つめてくるウミガメは、
男が島から離れるのを拒んでいる様にも映りますが、
海の向こうを例えば「黄泉」と深読みすれば、
それは男の命を助けているという事にも受け取れたりします。
つまりこの物語には「説明」というものが無いので、
そこには無数の捉え方が存在し得るということなのです。
男が何故嵐の中漂流していたのかも、
その島がどこで、いつの時代なのかも、
全ては観客の想像力に委ねられます。
つまりそれは「生きる」とい事の意味を考えて欲しいという作者の意図なのだと思います。
我々の「いのち」はどこから来て、どこへ行くのか?
この無駄なものが何も無い世界で繰り広げられる物語によって、
私達は否が応にも自分達の「いのち」の理由を考える事になるのです。
そして自分の怒りの対象であったウミガメが、
人の形を取りやがて愛する存在となっていく。
そんな御伽噺の寓話性の中にも、
「いのち」というものが私達に何を与えてくれるのかという事を示唆してくれるのです。
熱々のいのちの恵み
今日のおつまみは【海老グラタン】です。
既に3年近い期間の中200に迫る記事を公開してきたこの「えいがひとつまみ」。
映画をおつまみに晩酌をするというコンセプトでやってきましたが、
ここまで年月が過ぎると流石にメニューを被ってきてしまいます。
妻の大好物である海老のメニューも多めに登場しますが、
寒い冬に嬉しいのはやっぱり熱々のグラタン。
食いしん坊の我々ですのでマカロニ多めのボリューム増し。
バゲットを焼いてちょっとグラタンを乗せてなんてのも乙です。
冬でももっぱら白ワインをキリっと冷やして晩酌です。
名も無き人の一生
画像引用:© 2016 Studio Ghibli – Wild Bunch – Why Not Productions – Arte France Cinema – CN4 Productions – Belvision – Nippon Television Network – Dentsu – Hakuhodo DYMP – Walt Disney Japan – Mitsubishi – Toho
この映画には登場人物が三人しかいません。
男と、女と、その子供です。
無人島に漂着した男が、
ウミガメの割れた甲羅から出てきた女と出会って、
一人の男の子が誕生する。
慎ましくもシンプルな暮らし向きは本当に幸せそうです。
しかし世界には「時の流れ」というものと無関係ではいられません。
男の子はやがて青年に成長し外の世界に憧れを持つ。
それは人間にとって至極当然の事だと思います。
私達の人生の様に、
この三人にも喜びがあり悲しみも訪れます。
どうしようも無い大きな災難の前に立ち尽くす日もあります。
そして互いの幸せを願いながらの別れ。
老いて力尽きる者との永遠の別れ。
名も無き人の一生に私達は自分自身の人生を重ねるのです。
生き方は人それぞれ千差万別ですが、
物語から受け取る様々な思索もまた人それぞれ。
そこには正解も無ければ不正解もありません。
あるのはただ名も無き人の生きた足跡だけなのです。
生きる事の意味を考えたい時に観る映画。
監督のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットは、
2000年に【岸辺のふたり】という短篇アニメーション作品を発表しています。
第73回アカデミー賞で短篇アニメーション賞を見事に受賞した作品です。
これも8分という短い物語ですが、
人生の深い余韻をサイレントで見事に表現しています。
スタジオジブリは言わずと知れた世界に誇るアニメーション制作会社ですが、
こういった我々が普段触れる事の無い世界中の優れたクリエイターの作品を、
知る事にも貢献してくれています。
本当に映画に国境は無いのだという事を再確認できた素晴らしい作品でした。