画像引用:©︎2025「1ST KISS」製作委員会
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【ファーストキス 1ST KISS】です。
2025年公開の日本の恋愛ドラマ作品。
人気脚本家・坂元裕二のオリジナル脚本を、
【ラストマイル】などのヒットメーカー・塚原あゆ子が監督しています。
結婚15年目のとある夫婦におとずれた思ってもいなかった突然の別れ。
しかし残された妻がひょんなことからタイムトラベルし、
15年前の出会った頃の夫と再び恋に落ちるという突飛なストーリー。
笑えて、泣ける全部乗せのエンターテイメント恋愛ドラマのおススメです!
この映画はこんな人におススメ!!
●切ない恋愛ドラマに目が無い人
●笑える軽妙な演技が好きな人
●タイムリープ物が大好物な人
●人生の意味を考えたい人
| タイトル | ファーストキス 1ST KISS |
| 製作国 | 日本 |
| 公開日 | 2025年2月7日 |
| 上映時間 | 124分 |
| 監督 | 塚原あゆ子 |
| 出演 | 松たか子、松村北斗、吉岡里帆、 森七菜、リリー・フランキー |
どうしても人生をやり直したい時に観る映画
もしも人生をやり直せるなら。
誰しも一度は考えた事があるのでは無いでしょうか?
そんな実際には到底不可能な事も、
起こせたりするのが映画の魅力でもありますよね。
今作は大きな後悔を抱えてしまった主人公が、
タイムリープを繰り返して人生をやり直してしまおうという、
大胆不敵な物語なのです。
過去に戻って大金持ちになるのでもなく、
世界を救うでもなく、
15年前の夫ともう一度恋をするという、
何とも切なくて感動的なストーリーなのです。
今作の脚本は2023年公開の是枝裕和監督作品【怪物】で、
第76回カンヌ国際映画祭脚本賞に輝いた坂元裕二。
登場人物の内面をさり気無い台詞で説明する無駄の無さと、
ある種強引な設定ながらテーマに観客の目を惹き付ける熟練の技法は、
映画に於ける脚本というものの重要性を改めて感じさせるに十分な、
見事な出来栄えであったと思います。
監督は数々のヒットドラマの演出を手掛け、
2024年には【ラストマイル】を大ヒットさせた塚原あゆ子。
主演には2017年の【カルテット】や2021年の【大豆田とわ子と三人の元夫】で、
坂元ドラマとの相性の良さを証明している松たか子。
正に日本のヒットメーカーが集結した珠玉のラブストーリーとなっています。
時をかける淑女

画像引用:©︎2025「1ST KISS」製作委員会
物語は列車事故で夫を亡くすという衝撃的な幕開けになっています。
のっけから攻めた脚本の技を見せ捲っているのですが、
丹念に生活の機微を描写する事で次第に浮かび上がってくる
主人公の人間性と周辺人物達との関係性。
そしてかなり強引な、物理学的な説明の一切無い、
有無をも言わせぬタイムリープによって
物語は主人公カンナ(松たか子)の人生やり直しループに突入するのです。
近年のタイムリープ物の氾濫で観客の脳内には既に十分な抗体が出来ているので、
特に違和感なくSF要素に身を委ねられるという事を逆手に取った大胆な構成。
毒を吐いても嫌味にならない松たか子の天性のキャラクターを活かした台詞の数々。
「恋愛感情と靴下の片方はいつかなくなる」
「好きなところを発見しあうのが恋愛。嫌いなところを見つけ合うのが結婚」
「恋は盲目っていうじゃないですか。結婚は逆に解像度があがります。
見逃していた欠点が4Kで見えてきます」
これらの台詞で浮かび上がってくる結婚15年目の夫婦の温度感。
端的な台詞の中に人間の複雑な感情と夫婦の関係性をさり気無く忍ばせるのが、
本当に巧いです。
離婚届を用意するまでに冷え切ってしまっていた夫婦関係。
タイムリープして15年前の夫と出会い直す主人公のカンナの心には、
駄目になってしまった未来を変えたいという思いと共に、
実はこれまでの日々のすれ違いの中にも、
忘れていたり気が付かなくなってしまっていた様な互いを想う気持ちがあった事に、
改めて気付かさせていくという展開になっているのです。
結婚とは理想では無く現実そのものでもあります。
出会った頃の気持ちを再体験する事によって蘇る、
相手を想う気持ちの豊かさ。
そこには結局タイムリープなどしなくとも、
人はいつでも人生をやり直せるという
深いメッセージが込められている様な気がするのです。
おつまみのやり直し

今日のおつまみは【青茄子のトロトロ煮】です。
スーパーの産直コーナーにあった旬の青茄子。
豚肉と一緒に味噌醤油で煮れば、
果肉がトロトロになって何とも言えない風味になってくれます。
素材の持ち味をシンプルに引き出した一品。
お酒にもご飯にも合う絶品の一皿でした。
人生は何度でもやり直せる

画像引用:©︎2025「1ST KISS」製作委員会
自分と結婚しなければ夫が事故で死ぬ事も無いと考え、
15年前の夫と出会ったカンナは恋に落ちない様に過去を変えようとします。
しかしどんなに小細工を施そうとしても、
夫はカンナに興味を抱いてしまう。
そこには理屈を超えた不思議と惹かれ合う運命が存在し、
相手にどうして惹かれるかを再確認する事で、
同時に自分自身を改めて知る事にもなる。
未来からやってきた将来の妻であると身バレしてしまったカンナ。
15年後の不慮の事故によって自分が死んでしまうという事が分かっていても、
夫はカンナと共に生きる事を選択し年月を重ねる。
4Kの解像度で相手の欠点が見えてしまっても、
二度目の夫婦は互いに深く共感する関係性を築いていた。
妻のカンナはタイムリープで過去を変えようとしていたのですが、
夫のカケルは彼にとって未来である15年間の夫婦生活を変えたのです。
例え15年という短い時間であっても、
愛するカンナと過ごす事を選んだ夫のカケル。
例え人生が鳥の「チュン」という一鳴きの様に呆気ないものであっても、
掛け替えの無い幸せを選択する事が出来るのだという力強いメッセージになっています。
どうしても人生をやり直したい時に観る映画。
時間とは過去から現在、そして未来へと不可逆的な流れを持っています。
しかしこの作品では時間とは一方向に流れていくのもでは無く、
ミルフィーユ状に折り重なっていくものであると説明しています。
マルチバース理論の様に、様々な選択肢の結果が同時に存在する。
人生をやり直すというよりは、別の可能性で出来た世界を体験するという様な、
それはつまり今現在という時間も、
無限の可能性で出来ているという事の暗喩なのでは無いでしょうか。
夫が死んでしまうという結果が変わらなかった事で、
人生の選択が失敗に終わった訳では無く、
それまでの人生に掛け替えの無い瞬間が積み重ねられた事に意味があるという事。
映画のラストでそれを噛みしめるカンナの表情が実に感動的です。
逆説的に、たった一度きりの人生だからこそ素晴らしいのだと、
まんまと坂元脚本にうなされる幕切れでした。



