アクション映画

映画【ウォッチメン】おつまみ【胡瓜のキューちゃん】

画像引用:© 2009 Warner Bros. Entertainment Inc., Paramount Pictures Corporation and Legendary Pictures. All Rights Reserved.

この映画はこんな人におススメ!!

●DCコミックのファンの人

●フィルムノワール風の探偵物が好きな人

●驚愕のビジュアルエフェクトを体験したい人

●世界平和と正義の意味を考えたい人

タイトルウォッチメン
製作国アメリカ
公開日2009年3月28日(日本公開)
上映時間163分
監督ザック・スナイダー
出演マリン・アッカーマン、ビリー・クラダップ、ジャッキー・アール・ヘイリー、
ジェフリー・ディーン・モーガン、
パトリック・ウィルソン
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善悪の境目について考えたい時に観る映画

アメリカンコミックスの人気作家、アラン・ムーアの伝説的作品の映画化。

荒唐無稽なヒーロー作品に政治情勢や社会問題を絡ませ、

一筋縄では行かない複雑な人間ドラマに昇華させた物語になっています。

今作の映画化には困難な歴史があり、

プロデューサーのローレンス・ゴードンは、

80年代末から様々な映画会社や監督や出演者達と交渉を続けながら、

幾度となく暗礁に乗り上げやっと念願の完成に漕ぎ着けたのです。

かつてはテリー・ギリアムが監督の候補に挙がったり、

ロビン・ウィリアムスやアーノルド・シュワルツェネッガーなどが

キャスト候補になっていたりもしました。

予算が膨大になる事へのスタジオ側からの圧力や、

その他様々な理由から何度も映画化が流れていた呪われた企画。

そこで同じ様にアメコミ界のレジェンド作家であるフランク・ミラー原作の

【300】を見事に映画化したザック・スナイダー監督に企画が持ち込まれたのでした。

ザック・スナイダーはこの偉大な原作漫画を忠実に再現する事に注視しました。

複雑で奥深い物語性とキャラクター達の関係性とを丁寧に描き、

尚且つ最新の映像技術で迫力満点のアクションシーンを演出。

コミックスの持つ独特なダークな世界観と風刺性を損なう事無く、

ユーモラスでありシリアスでもある味わい深い映画として見事に結実しています。

ヒーローが不在の世界で

画像引用:© 2009 Warner Bros. Entertainment Inc., Paramount Pictures Corporation and Legendary Pictures. All Rights Reserved.

物語は1980年代を舞台にしていますが、

これは我々の知る実際の80年代とは異なるパラレルワールドの80年代なのです。

「ミニッツマン」と呼ばれる第一世代のヒーロー達によって、

アメリカはベトナム戦争に勝利し、ニクソンが3期目の大統領に就任していて、

アメリカとソ連は核戦争も辞さない様な第三次世界大戦への緊迫感の只中にいます。

「ウォッチマン」として結成された第二世代のヒーロー達は、

歴史の闇に暗躍しケネディ暗殺やアポロ計画に関与し、

その余りの影響力の強さを懸念した政府は、

ヒーロー達の活動を禁止する法律を制定するに至ります。

そんな中でかつてのヒーローの一人である「コメディアン」と呼ばれた男が、

何者かに殺される所から物語は始まっていくのです。

語り部の役を担うのは、「ウォッチメン」のメンバーの一人であるロールシャッハ。

精神鑑定のテストの一種である「ロールシャッハテスト」の左右対称のインク染みが、

白いマスクの表面で絶えず形を変え続けるという不思議なキャラクター。

真意の読めない移りゆく人間の感情の機微を体現した様な人物が、

事件の謎を探偵の様に調査していくストーリー展開になっていきます。

悪の存在を討つ事に存在意義のあったかつてのヒーロー達が、

時代の変革と共に行き場所を失って迫害される側になってしまう。

凡そハリウッド超大作の作風とは異なる皮肉に満ちた設定ですが、

ヒーローが不在の荒廃し暗澹たる雰囲気が、

そのままクラシックハリウッドのギャング映画の様で思わず引き込まれてしまいます。

実際の歴史の運びとは異なるパラレルな世界においても、

対立と分断は危機的状況にあり、更にヒーローを否定した社会に巣食うのは、

ギャングよりも陰湿で救いの無い「悪」が常態化した世界。

追い詰められていくかつてのヒーロー達それぞれの物語が丁寧に描写され、

ヒーロー狩りの真相に近付いていくサスペンスフルな展開は、

見事な脚本と映像の迫力で我々観客の緊張感をフルに煽り続けます。

テンションの高い、没入感満点のハリウッド映画の真骨頂。

当代きってのストーリーテラーであるスナイダー監督の手腕が遺憾なく発揮されています。

食卓のヒーロー

今日のおつまみは【胡瓜のキューちゃん】です。

可愛らしいネーミングに似付かわしく無い程、

食卓のヒーローとして頼りになる一品なのです。

この茹だる様な暑さの夏において、

食欲減退気味の中年にとってはこのサッパリとした箸休めの

キューちゃんは本当に食卓のヒーローなのです。

実家の畑で採れたオバケ胡瓜を、妻が生姜と共に漬け込んでくれました。

料理の副菜にも、お酒の共にもピッタリのいぶし銀の存在です。

ヒーロー達の存在理由

画像引用:© 2009 Warner Bros. Entertainment Inc., Paramount Pictures Corporation and Legendary Pictures. All Rights Reserved.

地球の危機を救うヒーローと言えばハリウッド映画の常套句であり、

近年のマーベル映画でも散見出来る映画のトップコンテンツです。

アメリカという国はその国家の性質上、ヒロイズムに傾倒した歴史があります。

そしてその英雄観は時代の変化と共に如何様にも解釈を変え、

絶対的な「正義」というものもまた存在し得ないのです。

「正義」の名の元に為された「悪行」は枚挙に暇が無く、

また「悪行」の中にも本質的な「正義」は存在しました。

つまりはこの【ウォッチメン】という社会に於ける「監視者」という存在は、

絶対的な「正義」がないという前提の上で

戦わなければならない宿命の元に存在するのです。

それはベトナム戦争も、キューバ危機も、ソ連との冷戦も、

更にはその後の中東戦争も、アフガニスタン紛争も、此度のイスラエル紛争も。

ヒーロー達に絶対的な「正義」の元に振るう鉾は持たされず、

どちらか側からにとっての「正義」を取る事しか出来ないという事なのです。

全てを救う事は出来ず、そこには犠牲があり、それを選択する。

そんな余りにリアルで身の蓋も無いテーマに踏み込んだ映画という事なのです。

映画でも言及されている「終末時計」というものを皆さんはご存知でしょうか?

これはアメリカの原子力科学者会報が実際に毎年発表している指標です。

午前0時を核戦争による人類滅亡の時刻と仮定して、

現在どの位の危機的状況にあるかをその何分前であるのかで表現しています。

2023年はその午前0時の90秒前だそうです。

ウクライナ侵攻において核兵器の圧をチラつかせたプーチン大統領の言動が、

「終末時計」を確実に進ませているのです。

映画と同様に絶対的な「正義」など誰にも判断出来ませんが、

最後のスイッチが押されてしまってからでは取り返しはつきません。

ヒーロー不在の世界で生きる私達も、一人一人の行動で

「未来」を選び取っていくしかないシビアな状況にあるという事なのかも知れません。

善悪の境目について考えたい時に観る映画。

社会悪を監視するのが「ウォッチメン」の任務でした。

しかしその監視者達を監視するのは一体誰なのか?

それがこの物語の主題です。

それは勿論、観客・読者である私達一人一人です。

私達はヒーローではありませんが、

物事の本質、その奥にある真実に目を向けなければいけないのです。

人種差別や宗教対立、ヘイトスピーチやネットの誹謗中傷に至るまで、

自分だけの「正義」で他方を攻撃する事の危険性に、

そろそろ本当に気付かなければならないのでは無いでしょうか?

コンプライアンスなどという都合の良い囲いでは無く、

ヒーロー不在の世界を生き抜く知恵を私達はかつてない程に必要としているのです。