ドキュメンタリー映画

映画【クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男】おつまみ【ハンペンバーグ】

画像引用:© 2019 Wood Entertainment

この映画はこんな人におススメ!!

●クエンティン・タランティーノのファンの人

●映画の制作秘話が好きな人

●好きな事に夢中になりたい人

●映画に掛ける情熱を感じたい人

タイトルクエンティン・タランティーノ 映画に愛された男
製作国アメリカ
公開日2023年8月11日(日本公開)
上映時間104分
監督タラ・ウッド
出演マイケル・マドセン、ティム・ロス、
サミュエル・L・ジャクソン、
クリストフ・ヴァルツ、ゾーイ・ベル、
ジェイミー・フォックス、カート・ラッセル

映画に愛された男をこの目で観たい時の映画

1992年の【レザボア・ドッグス】で衝撃的なデビューを飾り、

以来最近作の2019年公開【ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド】まで、

一貫して個性的で映画愛に満ちた作品で映画ファンの心を鷲掴みにしている

クエンティン・タランティーノ監督。

かく言うころっぷも例に漏れず、

彼の作品を貪るように観ていた時期がありました。

過激な暴力描写とブラックユーモア。

数々の名作映画からのパロディやオマージュを散りばめ、

自身の映画オタク振りを遺憾なく発揮した綿密な脚本。

余りにも個性的な独特の世界観で他を圧倒したその存在感は、

長い映画の歴史に於いても前例の無い様なスター監督と呼ぶに相応しいものでした。

1994年の【パルプ・フィクション】でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。

自身はアカデミー脚本賞に2度輝き、

出演俳優達にもオスカー像をいくつも掲げさせました。

彼の映画には常に一流の俳優達が挙って集まります。

そして彼等は口を揃えてタランティーノの制作現場の素晴らしさを伝えます。

このドキュメンタリーを観れば、

映画に愛された男が如何に仲間達にも愛されていたかが分かります。

これは正に映画ファン必見の作品だと思います。

どんなに技術やシステムが発展しようとも、

映画を作るのは人間の情熱であるという事を

これ程感じさせてくれる機会もそうそう無いはずですから。

不可能を可能にする才能

画像引用:© 2019 Wood Entertainment

古今東西、偉大な映画監督は数多く存在していますが、

最も数多くの映画を観ている映画監督と言ったら、

それは間違いなくクエンティン・タランティーノでしょう。

それがどうしたと思うかも知れませんが、

実はこれもの凄い事だと思うんです。

彼には映画しかなかったのだと思います。

自分を夢中にさせてくれて、自分を完璧に表現出来るもの。

どこまでものめり込めて、賞賛と成功を運んできてくれるもの。

目に映るもの全てがファインダー越しの映画の世界。

人から聞いた話も、陰惨な事件であってもそれは脚本のネタ。

人間の素の部分を見抜き、目も背けたくなる様な狂気をも晒け出させる。

映画に全てを捧げ、そこに一切の遠慮も妥協も無く、

正に全身全霊の映画作家として孤高の極みに昇り詰める。

全ては映画に対する絶対的な肯定、盲目的な愛とも呼べる狂信の為せる業。

このドキュメンタリーではタランティーノ自らのインタビューはありません。

全てこれまでの作品のスタッフとキャストによる証言。

そこから映画監督クエンティン・タランティーノの実像が炙り出されてくるのです。

皆が口を揃えて語るのは、

クエンティン・タランティーノという人間が如何に映画に憑りつかれた人間であるか、

そして作品の為にどれだけのものを捧げてきた人間であるのか。

先見性、多様なテーマ、捻った設定、予想外の展開。

彼の書く天才的な脚本は全て彼の日常の洞察力と、

映画で培った豊富な知識から成り立っています。

無名のビデオショップ店員が、

映画史を変える大監督になる。

不可能を可能したその才能は、

長い年月でとうとう沸点に達した心のマグマの大爆発の様なものでした。

おつまみに愛された男

今日のおつまみは【ハンペンバーグ】です。

誤植ではありません。

ハンペンで作ったハンバーグです。

フードプロセッサーでミンチにしたハンペンに、

塩・胡椒で下味を付けてカニカマを刻んだものを混ぜ合わせます。

それを成型しパン粉を付けてサラダ油で揚げ焼き。

こんがりとした焼き目が堪らない、ビールに最適の一品。

ヘルシーだけど満足感もあります!

永遠の映画オタクの野望

画像引用:© 2019 Wood Entertainment

タランティーノ作品で一番好きな映画はと聞かれたら、

悩みはするけど結局デビュー作の【レザボア・ドッグス】と答えると思います。

低予算でシンプルな作りだけど、

ここには既にタランティーノの魅力が全て詰まっていて、

複雑なプロットを必要としない力強さが台詞や映像に溢れています。

出演者のグルーヴを引き出す才はこの頃から圧倒的だし、

音楽の使い方も文句のつけ所が無い。

何度観ても興奮するし、また悲しくて美しい。

映画の世界を志したタランティーノが、

【ナチュラル・ボーン・キラーズ】や【トゥルー・ロマンス】という

素晴らしい脚本を書きながら無名故に監督を任せて貰えなかった。

そのフラストレーションが物凄いパワーになってぶつけられ、

作品に得体の知れないピリピリとする緊張感がみなぎっています。

自分の才能を固く信じ、自分の表現に絶対の自信があるからこそ、

あの人を喰った様なジョークから始めて観客を煙に巻き、

その後のバイオレンスと時間軸を弄った展開で度肝を抜いてみせたのです。

正にしてやったりといった所。

その後の作品群でもジャンル映画への偏愛をメインストリームにまで引き上げ、

自分の感性に付いて来られない者はセンスが無いと言うかの如く強気な攻めの姿勢。

批判や反感を肥やしに次々と話題作を世に放つその姿は、

映画界のアナーキスト、ロックンローラーの如きカリスマ性でした。

同じ時代に生き、リアルタイムで作品を鑑賞出来た事を本当に幸運に思います。

きっとキューブリックや黒澤明を見続けた先輩映画ファン達も、

同じ様な心境だったのかなぁなどと想像します。

映画に愛された男をこの目で観たい時の映画。

タランティーノは10本の映画を撮ったら引退すると公言しています。

2024年現在、彼の監督作品は9本。

つまり次が最後の作品となります。

ロサンゼルスの小さなビデオショップから始まった彼の物語は、

一体どんな結末を遂げるのでしょうか?

映画ファンとして、それは楽しみであり寂しくもあります。

しかししかと見届けなければなりません。

僕等映画ファンは彼の様な偉大な映画馬鹿のおかげで夢を見てこられたのですから。