サスペンス

映画【アフタースクール】おつまみ【刺身盛合せ】

画像引用:©2008「アフタースクール」製作委員会

この映画はこんな人におススメ!!

●どんでん返しが好きな人

●ミスリードに心地良く騙されたい人

●探偵物が好きな人

●懐かしい学生時代を思い出したい人

タイトルアフタースクール
製作国日本
公開日2008年5月24日
上映時間102分
監督内田けんじ
出演大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人、
常盤貴子、田畑智子

時には騙されてみたいという時の映画

世には「伏線好き」という趣向を持った人たちが一定数存在します。

サスペンス作品などに多く見られる終盤のどんでん返しで、

「あ~、あのシーンのあれはこの為だったのかぁ」

という奴ですね。

さり気無く散りばめられた「伏線」を綺麗に回収する事で、

ストーリーとはまた違ったカタルシスを観客に与える事が出来るのです。

この【アフタースクール】という作品にも、

その手の所謂巧妙な「伏線」という奴が張り巡らされているのです。

観客の視線を敢えて違った方向へ導く「ミスリード」と呼ばれる手法で、

まんまと騙されてから種を明かされる驚きは、

サスペンス作品の一つの醍醐味でもあります。

一度目鑑賞してその巧みな仕組みに驚いてから、

二度目の鑑賞で細かい仕掛けを確認するなんて楽しみ方も出来ます。

こういった作品は緻密な脚本と入念な演出、

そして何より演者の実力が試されるものです。

今作の脚本・監督の内田けんじは、

数々の映画監督を輩出した「ぴあフィルムフィスティバル」出身。

そのスカラシップ作品として制作した「運命じゃない人」が、

第58回カンヌ国際映画祭で4つの賞を受賞した事で有名になった人物です。

今作の後に2012年公開の【鍵泥棒のメソッド】でも

高い評価を受けましたが、

その後新作映画の報が無いのが残念な所です。

おそらく日本映画界で最も新作が期待され続けている監督だと思うので、

劇場公開作品を期待したい所です。

騙される快感

画像引用:©2008「アフタースクール」製作委員会

物語は堺雅人演じるエリート会社員、木村の謎の失踪に端を発します。

身重の妻を残し若い女とホテルで密会している所を写真に収められ、

会社の上役にも、それに雇われた探偵にも、

そして大泉洋演じる中学時代から親友の神野からも

必死に行方を探されるというサスペンス展開が映画前半を占めます。

しかしこれは観客の目を欺く「ミスリード」。

映画後半のどんでん返しを観てみると、

嘘をつく事無く先入観や映画の常套手段を逆手に取った手法で、

まんまとそう思わされてしまっていた事に

気が付くという仕掛けになっているのです。

何の予備知識も入れずにまんまと騙される快感を是非味わって欲しいのですが、

この観客の先入観というものを巧みに利用した見事な仕掛けは、

映画冒頭から既に「伏線」として張られているので必見です。

そしてこの観客を「ミスリード」する為に大いに役立っているのが、

佐々木蔵之介演じる捻くれた探偵・北沢の存在なのです。

彼は木村の失踪事件をヤクザの女との痴情の縺れと早合点し、

何も知らないお人好しの神野をまんまと利用して、

自分だけが甘い汁を吸おうと画策したのですが、

それが見事に我々観客を騙す為の仕掛けになっていたのです。

彼の立ち回りによって事が必要以上に大袈裟になり、

それが場を混乱させ結果観客ごとミスリードして展開していくという作り。

まさにピエロの役回りなのですが、

一旦は神野を手籠めにし意気揚々とする子憎たらしい彼のキャラクターが、

絶妙に作品全体のテーマに直結していく所も良く出来た脚本たる所以なのです。

実はこの映画は神野と木村と常盤貴子演じる妊婦との、

初恋を描いた「あの頃の青春」的な物語なのです。

そこを云わば不可抗力的な外的存在の引っ掻き回しによって、

違和感無くサスペンス要素を付加しているのです。

この辺りのバランス感覚と大胆なアイデアが本当に秀逸。

正に映画にしか出来ない表現であると思います。

お刺身サミット

今日のおつまみは【刺身盛合せ】です。

最近自宅からやや遠距離にあるスーパーに遠征していて、

そこで購入した鰹の藁焼きに薬味をたっぷりと掛け、

さらに近所のスーパーで買ったタイムサービスの盛合せを足しました。

鯛に鮪に甘海老、イナダという感じです。

これはもう日本酒以外選択肢はありません。

スーパーのはしごでお刺身のプチサミット。

幸せな一時でした。

先入観は恰好のツール

画像引用:©2008「アフタースクール」製作委員会

この手の作品は全て理解した上でもう一度観るという楽しみも付属します。

あらゆる描写が伏線として後に回収される快感。

全ては作為の上で作られたストーリーですから、

多少は無理あるんじゃないかというシーンもあるにはあります。

しかしそれを鑑みても今作の驚き、

鑑賞後には誰かに進めたくなって仕方がないという喜びは絶大です。

日頃映画や小説に慣れ親しんでいる人間ほど、

その先入観を逆手に取ってミスリードする事が実は容易。

勝手に色々と詮索し想像していくれるので、

蒔いた餌に確実に飛びついて判断してくれるという習性を利用された訳です。

この映画はボタンの掛け違いで生じた「勘違い」が、

多くの人間を巻き込んで大騒動となる仕掛けですが、

物語の根幹にあるテーマは三人の男女の想いの掛け合いにあるのです。

中学時代の同級生達がそれぞれの人生を経ていい歳の大人になって再会する。

その中で思い通りにいったことも、そうならなかった事も含め、

互いに変わらぬ人間性の中でもう一度自分の人生を見つめ直していく。

そこにたまたま予想外の事件に巻き込まれただけという話。

主演の三人は共に演劇出身で長い下積み時代を経て人気俳優になったメンバー。

確かな演技力がそれぞれのキャラクターに説得力を与えているからこそ、

我々観客は気持ち良く騙されてしまう訳です。

特に今作では大泉洋の多彩な表現力が光っています。

コメディセンスは勿論の事、

彼の演技には常に実在感が伴っていて安心して見ていられる所があります。

その後の活躍は周知の事ですが、

今作辺りから俳優として評価が一段階上がった様な印象があります。

時には騙されてみたいという時の映画。

多様な映画のジャンルに於いて、

こういったどんでん返しを用意した緻密な作品を撮れる演出家は実に貴重です。

内田監督の新作は本当に待ち遠しいですが、

日本映画界に新たなる旗手が現れる事にも期待したいと思います。