画像引用:© 2013 Dallas Buyers Club, LLC. All Right Reserved.
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【ダラス・バイヤーズ・クラブ】です。
80年代のダラスを舞台に実話を元にした物語。
HIV感染によって余命宣告を受けた男が、
未認可の薬剤によるビジネスで成功するという奇想天外のストーリー。
型破りの主人公の生き様が鮮烈で、
人間の生命力を強く感じる圧巻の映画に仕上がっています!
この映画はこんな人におススメ!!
●型破りな主人公が好きな人
●不屈の精神を学びたい人
●医療問題に関心のある人
●人生の意味を考えたい人
タイトル | ダラス・バイヤーズ・クラブ |
製作国 | アメリカ |
公開日 | 2014年2月22日(日本公開) |
上映時間 | 117分 |
監督 | ジャン=マルク・ヴァレ |
出演 | マシュー・マコノヒー、ジャレッド・レト、 ジェニファー・ガーナー、スティーヴ・ザーン |
死に際を考える時に観る映画
今回の映画は重いテーマを扱いながらも、
適度に笑えて適度に泣けるバランスの優れた作品であると言えます。
第86回アカデミー賞に於いて主演男優賞と助演男優賞をそれぞれ受賞。
特に主演のマシュー・マコノヒーは体重を21キロも減量し、
鬼気迫る演技力の高さを見せ付けました。
主人公はダラスに住むHIV感染で余命30日を宣告された電気技師のロン・ウッドルーフ。
実際に生前のロンにインタビューをして執筆された脚本は、
この驚くべき人生の顛末をリアルに描く事に成功しています。
絶望的な境遇に立たされた人間が、
それをバネに起死回生の快進撃を繰り広げる嘘の様な実話。
どんな逆境に於いても生きる事のエネルギーを失わなかったロンの
生命力をダイナミックに描写した作品です。
弱者や敗者と見なされ、差別され蔑まされた人間達の、
なにくそ精神の大逆転劇が胸を空くエンターテインメントになっています。
追い詰められたアウトロー達
画像引用:© 2013 Dallas Buyers Club, LLC. All Right Reserved.
80年代当時、HIVやエイズに対しての理解や知識は皆無に等しい状況でした。
人々は空気感染すると本気で信じていた様な時代です。
性的マイノリティに対する偏見と差別は更に酷い有様で、
その両方がこの映画の登場人物達には襲い掛かってくるのです。
劣悪な職業環境や治安の乱れ、違法ドラッグの氾濫。
主人公のロンも例に漏れず、
酒と女と薬と賭博にまみれた生活を送り、
荒みきった所に追い打ちの様にHIV感染の事実が付き付けられるのです。
正に詰んだ状況、自暴自棄にならざるを得ない展開。
エイズと言えばゲイの病気というレベルの知識しかなかったロンは、
いざ自分が差別される側の立場になって初めてその不条理に憤るのです。
しかし人は誰しもそんなものでは無いでしょうか?
中々当事者でなければその辛さをリアルに感じる事は出来ないでしょう。
ロンの荒んだ生活から人生のどん底に至るまでの映画前半は、
本当に痛々しくて、観るも無残な展開のオンパレードです。
追い詰められた人間の悲しく惨めな姿。
しかしこの主人公のただでは転ばないバイタリティはこのどん底から始まるのです。
当事者となって初めて知る病気の事、そしてその治療に用いられる薬の事。
巨大な製薬企業の金儲け主義による治験者達への非人道的扱い。
副作用による死者が明らかな薬剤を推奨し、
海外で成果のある薬を承認しないアメリカ食品医薬品局と正面から対立します。
独自のルートで未承認薬を密輸入し、それを会員制クラブで売りさばく。
正に崖っぷちの綱渡りで事業を起こし成功させてしまうのです。
社会的弱者、差別を受ける者達の逆襲。
追い詰められたアウトローに怖い物など何も無いという様な迫力です。
フワフワのアウトロー
今日のおつまみは【ニラ玉あんかけ】です。
卵に悪い奴はいません。
ましてや滋養たっぷりのニラと蟹カマ入り。
甘酢あんかけをこれでもかと掛ければ、
ご飯もススムし、お酒もススム。
コスパも良くて大満足。
本当に鶏には足向けて寝られませんよね。
救世主が見据えていた未来
画像引用:© 2013 Dallas Buyers Club, LLC. All Right Reserved.
彼は清廉潔白なヒーローではありません。
少なくとも病気になる前の彼は決して褒められた人間では無かったと言えるでしょう。
更に彼の事業は慈善事業でもありません。
法的にもギリギリスレスレで、弱者を救う救世主を気取っていた訳でもありません。
それでは何が彼を駆り立てていたのでしょうか?
それはただ生きていたいという渇望そのものだった様な気がします。
自分の命が燃え尽きそうになって初めて、
彼は猛烈に生きていたいと感じたのではないかと思うのです。
自分の身体に巣食う病に対する怒り、
大手製薬会社への怒り、
周りの偏見や差別への怒り、
それは全て彼の生きようとするエネルギーの餌だったのだと思います。
彼はそれを糧に生き永らえていたように感じるのです。
元来が欲望に屈しやすい弱い人間であった男が、
ただシンプルに生きる事に必死になった結果、
多くの同じ病を抱える人間達の希望になっていたという偶発的な奇跡。
そのヒーローでも救世主でも無い主人公像が魅力的で、
かつ私達の共感を深く呼ぶことに繋がった様な気がします。
死に際を考える時に観る映画。
人間誰しも必ずいつかは「死」を迎えます。
それと実際に対峙した時、どこまで「生」への渇望を持てるのかは
人それぞれ千差万別でしょう。
しかし最後の最後のその瞬間まで、
やれることの全てを尽くして生き切ったと思い果てられる人生とは、
とても立派だと思います。
権力や偏見に屈せずに戦い続けたアウトロー。
名も無き一人のエイズ患者の姿を、
こうして後世に残す事の意義は大きいのではないでしょうか。
今作の監督であるカナダ出身のジャン=マルク・ヴァレ監督。
その演出力の高さで世界中から注目を集めていましたが、
2021年に58歳という若さで亡くなってしまいました。
人の一生は他人がどうこうと評価出来るものではありませんが、
素晴らしい映画をこの世に遺してくれた監督の戦いに、
深い敬意を捧げます。