アクション映画

映画【ダークナイト】おつまみ【海老と蕪のあんかけ】

画像引用:© Warner Bros. Entertainment Inc. BATMAN and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics.

この映画はこんな人におススメ!!

●迫力のアクションシーンを体感したい人

●DCコミックが好きで堪らない人

●善悪の攻防に熱くなりたい人

●名優達の全身全霊の演技に酔いしれたい人

タイトルダークナイト
製作国アメリカ、イギリス
公開日2008年8月9日(日本公開)
上映時間152分
監督クリストファー・ノーラン
出演クリスチャン・ベール、ヒース・レジャー、
マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマン、マギー・ギレンホール
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善悪の曖昧さについて考えたい時に観る映画

”バットマン”と言えばハリウッドのドル箱スター。

嘗てはティム・バートンやジョエル・シュマッカーなどのヒットメーカー達が、

独自の路線の怪作を作り上げてきた歴史があります。

マーヴェル作品に対抗した近年のジャスティス・リーグにも登場したり、

そのダークでミステリアスなキャラクターは長く映画ファンに愛されてきました。

そして今回の【ダークナイト】はあのクリストファー・ノーランが”バットマン”を

未だ嘗てない程のリアリティ溢れる演出で描いた三部作の二作品目になっています。

ノーランといえば「本物」に拘る映画監督。

極力CGや特殊加工を施さずに、

生身の人間と本物の物体で撮影する事を信条としているのです。

今作でも終盤の病院が爆破されて崩れ落ちるシーンでは、

実際に巨大な建物を一棟丸ごと実際に爆破してしまっています。

正に現代の黒澤明というようなとんでもないスケールを持った演出家なのです。

第81回アカデミー賞では8部門にノミネートされ、

ヒース・レジャーの助演男優賞と音響編集賞の2部門で受賞を果たしました。

興行収入も全世界で10億ドルを超える大ヒットを記録。

”バットマン”映画の中でも随一の評価と人気を獲得しています。

”バットマン”という孤高の存在をより人間的なリアリティで描き、

その弱さや内面に抱えた矛盾を丁寧に描いていく。

派手なアクションシーンだけでは無いその味わい深いドラマ性が、

高く評価され長く愛される要因となった作品なのです。

善悪の狭間で

画像引用:© Warner Bros. Entertainment Inc. BATMAN and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics.

”バットマン”もヒーローの例に漏れず、

その正体を隠した二面性を持った人物です。

ゴッサムシティという架空の大都市を舞台に、

大富豪であるブルース・ウェインが人知れず悪と戦うという物語。

しかし彼は清廉潔白・完全無欠のスーパーヒーローなどでは無く、

己の心に巣食う「闇」と常に戦い続けるダークヒーローなのです。

街は凶悪な犯罪者達が日夜市民の生活を脅かす様な状態。

組織に属さない私的自警団として非合法な活動をする”バットマン”に対して、

否定的な見方をする存在も多いのです。

ブルースは嘗て目の前で両親を犯罪者の手によって殺された過去を持っています。

その激しい私怨の思いと、街の平和の為という思いとの狭間で、

常に葛藤し悩み続けているのです。

対する今作のヴィラン(悪役)であるジョーカーという人物も、

複雑な内面を持った一筋縄ではいかない人物。

富裕層の独善的な政策に漏れ落ちてしまった落伍者の象徴として、

全ての人間が公平な立場で負荷を背負う世界を実は標榜していたりもするのです。

格差社会によって捨て置かれた弱者達。

踏み潰され、苛まれ、忌み嫌われる醜悪の代弁者として、

世の偽善を暴き剥き出しの欲望を眼前に突き付ける誘導者。

権力に反抗し、混沌を愛する復讐のカリスマなのです。

大きな視点で見た時にどちらが善でどちらが悪なのか、

その曖昧な境目に揺れ動く、勧善懲悪とは言い難い複雑な物語が、

この作品の最も人を惹き付ける深い部分なのでは無いでしょうか。

おつまみの善悪

今日のおつまみは【海老と蕪のあんかけ】です。

いよいよ冬ぽっくなってきた今日この頃。

冬野菜の美味しい季節でもありますが、

その代表的なお野菜が蕪では無いでしょうか。

柔らかく炊き上げればお出汁の風味を存分に吸い込み、

海老の風味と共に心も体も温まる極上のおつまみとなります。

おつまみに善も悪もありません。

ただ美味しく楽しく味わい尽くすのみ。

心の中の悪魔

画像引用:© Warner Bros. Entertainment Inc. BATMAN and all related characters and elements are trademarks of and © DC Comics.

今作のヴィランにもう一人印象的な人物としてトゥーフェイスがいます。

彼は元々はゴッサムシティの希望とまで言われた正義感の強い検事官。

しかしジョーカーの魔の手に懸かり最愛の恋人を無くし、

更に自らの顔の半分を失ってしまう。

それまで信じて疑わなかった正義が大きく揺らぎ、

復讐の鬼と化してしまう展開には心が痛みます。

彼は物事の判断を下す時にコイントスをして二分の一の確率に全てを委ねます。

彼の中の善と悪もコインの表裏の様に表裏一体。

それまでの価値観が何かのキッカケで全く逆に振れてしまうという事もまた、

人間の真理を突いたキャラクター設定になっています。

自らの存在意義に常に揺れ動くヒーロー”バットマン”。

世の偽善を暴く狂気のアンチヒーロー”ジョーカー”。

そして善悪の曖昧さを体現した悲劇のヴィラン”トゥーフェイス”。

三者三様の哲学が激しくぶつかり合う展開は、

単なるヒーローアクション映画の枠を遥かに超えて私達に様々な思索を促します。

古今東西様々な創作物に於いて悪役とはヒーローの引き立て役であり、

ただ作品を盛り上げる為に立ちはだかり敗れ去っていく者でありましたが、

今作に於いてはヒーローの存在意義迄揺さ振りかねない複雑な内面を表現されています。

そのキャラクターを大胆かつ繊細に演じ切った、

ヒース・レジャーの演技は正に神掛かっていました。

主役を食う演技とはよく言ったものですが、

その存在感は公開から長い年月が経った今でも、

私達に衝撃を与えてくれます。

間違いなく映画史に残る名演でした。

善悪の曖昧さについて考えたい時に観る映画。

善悪に限らず物事の表部分だけでは無く、

その裏まで見て考える事は重要であると思います。

法で裁けぬグレーゾーンで戦う”バットマン”にとって、

負の部分の権化の様な”ジョーカー”との対峙は避け難い必然であったのでしょう。

清濁併せ吞むとも言いますが、

綺麗事だけでは世の中は回っていかないという面もあるのかも知れません。

曖昧な価値判断の狭間で揺れるヒーローとヴィランの僅かな境目。

このテーマの深さが他のヒーロー作品とは一線を画す、

”バットマン”の魅力なのでは無いでしょうか。