画像引用:© 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス】です。
言わずと知れた、世界中の映画賞を総ナメにした傑作SFコメディ作品。
アジアの映画人の評価を著しく向上させた、
エポックメイキングな作品でもあります。
とにかくぶっ飛んだ設定と展開に目が離せない、
超ド級のエンターテインメント映画になっています!
この映画はこんな人におススメ!!
●マルチバース物が好きな人
●カンフーアクションに目が無い人
●複雑設定のSFに飢えている人
●そのままの自分を全肯定したい人
タイトル | エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス |
製作国 | アメリカ |
公開日 | 2023年3月3日(日本公開) |
上映時間 | 140分 |
監督 | ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート |
出演 | ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、 ステファニー・スー、ジェームズ・ホン、 ジェイミー・リー・カーチス |
自分の人生を肯定したい時に観る映画
奇想天外な設定。
予想不可能な展開。
そして意外な程に感動的な結末。
そのどれもが映画ファンの度肝を抜き世界中で喝采された作品。
凡そ考え得るアイディアは出し尽くされ、
新しい価値観の創造よりも過去作のブラッシュアップでしか無くなっていた映画界に、
強烈な一撃をかましたのが紛れもなくこの作品なのです。
監督はA24配給の【スイス・アーミー・マン】で高い評価を集めた、
ダニエル・クワンとダニエル・シャイナートのコンビ。
主演は香港アクション映画で活躍し、
1997年の【007 トゥモロー・ネバー・ダイ】では
ボンドガールを務めたミシェル・ヨー。
共演には80年代に【インディー・ジョーンズ/魔宮の伝説】や【グーニーズ】で活躍した、
元子役のキー・ホイ・クァン。
アジア系俳優が主要キャストを務めた今作が、
アカデミー賞に於いて主要賞を独占する7部門に輝いたのは歴史に残る快挙となりました。
またSF映画がアカデミー作品賞を受賞したのも史上初。
A24配給作品としてはそれまでで最高の興行収入も叩き出し、
世界中がエブエブフィーバーに沸き立ちました。
昨今のエンターテインメントでは既に手垢が付いた感のある「マルチバース」を、
実に分かりやすく、そして最も馬鹿馬鹿しく視覚化した映像センス。
目まぐるしく展開するスピード感と、小気味良い編集技術。
そして特異なSF的世界観の中に普遍的な「家族愛」や「多様性」というテーマを
盛り込んだ作話の巧さが受け、
嘗てないオリジナリティを実現した作品となったのです。
母は何と戦うのか
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この複雑怪奇な物語も「マルチバース」というSF的設定を敢えて度外視すれば、
至ってシンプルな「家族」の葛藤を描いたホームドラマと言えます。
主人公のエブリンは幼馴染の夫ウェイモンドと共に、
アメリカに移住してコインランドリーを営んでいます。
生活は困窮し事業も火の車。
一人娘のジョイとエブリンは顔を合わせれば反駁しあう微妙な関係。
こんなはずでは無かったと後悔しても後の祭り、
人生とは待った無しの底無し下りエスカレーターと化しています。
多忙極まりない日常の中で人生の目標は霞み、
何の為に生きているのかを見失ってしまう様な心境にあります。
そんなヒリヒリとしたリアリティが突如何の前触れも無く崩壊します。
パラレルワールドからジャンプしてきた別次元の夫ウェイモンドが現れるのです。
理論物理学に於ける多元宇宙を仔細に描くと訳が分からなくなってしまいますが、
今作では兎に角別世界で無数のエブリンが存在していて、
それぞれが別の可能性の人生を歩んでいるといった風に描かれています。
このマルチバースを滅ぼしてしまう様な強大な力を持った存在がいて、
それを倒せるのは何故かコインランドリー経営者のエブリンであるという設定なのです。
たった一人の娘とも分かり合う事の出来ない主婦のエブリンが、
果たして宇宙の危機を救う事が出来るのかという壮大な物語。
しかし母は何と戦うのでしょうか?
彼女はこの戦いの中で様々な自分自身と出会います。
「あの時こうしていたらこうなっていたかも知れない」という自分自身です。
選択の無限の枝葉の先にある可能性としての人生。
誰でも一度はそんな考えを持った事があるはずです。
後悔とはいずれもそんなもので、別次元の人生は光って見えたりするものです。
結局自分とは今ここいいる自分でしか無く、
可能性とはあくまでも選択されなかった物の幻なのです。
それがマルチバースで存在しているからといってそれは自分では無い。
戦わなければならない相手は自分自身だったのです。
百点パスタ
今日のおつまみは【チキンバジルパスタ】です。
我々は毎日の晩酌の末、まだそれでもお腹がちょっと足りないな、
なんて時にパスタを〆に食べます。
そんな時に活躍するのがこのバジルソース。
そして具材の鶏ササミは愛犬のご飯用に茹でて冷蔵庫にストックしてあるものを、
ちょっと分けて貰います。
ほろ酔いの妻がパッと作ってくれるこのパスタが、
まあ何とも高い確率で百点パスタなのです。
食いしん坊の二人の執念の様な一品。
年甲斐の無く食べ過ぎて後悔するのですが、
それはまた多元宇宙の話という事で。
現実逃避の果ての世界
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今作はあらゆる映画へのオマージュや、
振り切れたユーモアシーンに溢れた極上のエンターテインメント映画です。
しかしその根幹には人生に於ける最も重要なテーマを、
至極真面目に語る切実さがあったりもします。
それはどんなに人生が詰んだと思った時にも、
今まで当たり前すぎて忘れていた「幸せ」が、
実はそこにずっとあったのだという事実の重要性なのです。
主人公のエブリンには一挙に人生の困難が降り掛かってきます。
手に負えない無理ゲーに陥り、
精神分裂の如くマルチバースの可能性の自分を夢見てしまうのです。
しかし本当の自分の人生は一つだけ。
それは自分が選んだ人生なのです。
誰の所為でも無く、そこには勿論成功もあれば失敗もある。
でもそのすべてが掛け替えの無い時間の結果なのです。
現実逃避したいという気持ちは誰にもあるとは思いますが、
本当に逃避出来る状況になったエブリンは、
やはり愛する家族がいるこの世界に帰ってくるのです。
煌びやかな成功を遂げた自分でも無く、
何かを極めた自分でも無く、
薄汚れてくたびれた自分。
そこにある平凡で物足りない幸せ。
或いは解決困難で修復不可能な現実。
でもそれが何よりも愛おしく感じる様になったのです。
ここに今作の予想不可能な感動ポイントがあるのです。
自分の人生を肯定したい時に観る映画。
人生のとある瞬間に、こんなはずではなかったと思うのは人間の性です。
後悔とは選ばなかった人生の先を想像してしまう事にも原因があるのでしょう。
でも自分の人生を肯定してあげられるのも自分しかいないのです。
それは諦めとは違くて、
見えて無かったり、忘れてしまっていたりする「幸せ」を取り戻す事。
改めてその価値を認識し直す事なのです。
マルチバースをそんな装置として使用した今作は、
実は極上の人生讃歌の作品なのではないでしょうか?
SFを絵空事と思っていると本当に勿体無いと思います。
そこには何よりも現実を変えてくれる力があったりするのです。