画像引用:© 2017 Universal Studios. All Rights Reserved.
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【ゲット・アウト】です。
2017年公開のアメリカのホラーサスペンス作品。
人種差別をテーマに盛り込みつつも、
ホラーとコメディの味付けで見事にエンターテイメント化した脚本。
再鑑賞必須の伏線の嵐が強烈に観る者を惹き付け、
恐怖とブラックジョークに感情を掻き乱される103分間。
低予算ながら口コミで大ヒットした話題作のおススメです!!
この映画はこんな人におススメ!!
●アメリカの人種問題に関心がある人
●不条理ホラー作品が好きな人
●自分に無い物をつい他人に欲してしまう人
●確固たるアイデンティティが欲しい人
タイトル | ゲット・アウト |
製作国 | アメリカ |
公開日 | 2017年10月27日(日本公開) |
上映時間 | 103分 |
監督 | ジョーダン・ピール |
出演 | ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ、キャサリン・キーナー |
新時代の恐怖体験をしたい時に観る映画
アメリカの黒人俳優でコメディアンのジョーダン・ピールが
自ら脚本を書き初監督したこの映画。
不条理な恐怖体験をする主人公の末路を描いたホラー映画ではあるのですが、
箇所箇所にブラックなユーモアを盛り込んでいる所が如何にもこの監督の
鋭い社会風刺精神を感じさせます。
並居るハリウッド超大作を押しのけ低予算ながら口コミで大ヒットし、
遂には第90回アカデミー賞に於いて脚本賞まで獲得してしまいます。
世界中の映画ファンを驚かせた新時代のストーリーテラーは、
緻密な伏線と不穏な雰囲気を随所に散りばめた演出で、
謎に満ちた物語を驚愕のエンターテイメントへと昇華させました。
今作にはアメリカに於ける長い黒人差別の歴史が根っこにあり、
そこから様々な価値観の変革を経てきたアメリカ人の欺瞞と歪が表現されています。
単純なレイシズム批判に留まらない、
人間の根源的な欲望にまで言及し、
更にそれを普遍的な主人公の自己覚醒にまで達する物語。
見た目の怖さでホラーが苦手な人にこそ、
この作品は奥深い恐怖を味わえる好テキストであると思います。
「恐怖」とは自分の理解の及ばない物に対する拒否反応でもあります。
人間の恐ろしさから解放されるには、
その恐ろしさの正体を白日の下に晒す必要があると思うのです。
そう言った意味でもこういったフィクションの持つ効能は絶大なのでは無いでしょうか。
孤立無援の恐怖感

画像引用:© 2017 Universal Studios. All Rights Reserved.
黒人カメラマンの主人公クリスは、
恋人の白人女性ローズの家族に会う為に郊外の邸宅を訪れます。
豪勢な屋敷に暮らすローズの両親はクリスを歓迎しますが、
まるで前世紀の奴隷時代の様に黒人使用人がいるその家にクリスは違和感を持ちます。
表向きの穏やかさとは裏腹な居心地の悪さを感じ続けるクリスはやがて、
この家族の驚きの秘密と恐ろしい陰謀に巻き込まれる事になっていきます。
白人社会にたった一人放り込まれて孤立無援の主人公。
しかしこの映画は単純な白人対黒人という図式のプロットでは無いのです。
人種以外にも私達の世界には様々な格差が存在します。
如何にリベラルな顔をしていても自分達と違うタイプの人間を前にすれば、
挙動が乱れるのがまた人間というものです。
主人公のクリスは所謂黒人青年のイメージとは少し違うインテリで穏やかなタイプ。
白人女性の恋人を心から愛し、彼女の実家でも落ち着いた言動に終始します。
日本と違って多くの人種が共存するアメリカ社会に於いて、
こういったシュチュエーションが与えるストレスには免疫があるのでしょう、
黒人であるというアイデンティティは私達の想像を遥かに凌駕する、
「異常な日常」であるのかも知れません。
前世代の様なあからさまな差別がNGとされ、
表向きは融和に向かっていた様に見えたバラク・オバマ時代のアメリカ。
しかしその中で実は人々の中に根深く存在する潜在的差別意識に
敏感だったジョーダン・ピールは、
ちょっとした言葉の端々に現れる差別や格差、分断を鋭く描写しているのです。
白人リベラル派の富裕層が、
オバマ大統領やプロゴルファーのタイガー・ウッズを支持する裏には、
彼等自身信じて疑わないリベラルの顔の裏にしつこくへばり付いた差別心があり、
そこをコミカルに描いたさり気無いシーンにこの監督の作為の真意があるのでしょう。
富裕層が無意識で周りに振りまくマウント感なども、
この作品には細かく散りばめられています。
恐怖のホラー作品のフォーマットの中で、
誰もが生活の中に感じる違和感だったり嫌悪感だったりを
さり気無く脚本に練り込む技術とセンスが、
この作品と他とを分けるポイントなのでは無いでしょうか。
夏の風物詩

今日のおつまみは【枝豆とトウモロコシのかき揚げ】です。
実家の両親が畑で育てた枝豆が届き、
早速塩茹でで食べた残りを、
トウモロコシと人参の細切りと合わせてかき揚げにしました。
もうこれぞ夏の風物詩。
新鮮採れ立ての野菜は何にしたって美味しいのですが、
カラッとかき揚げにした枝豆は最高です。
これはキンキンに冷えたビールですよね。
恐怖と笑いは表裏一体ですが、
健康に留意しつつも晩酌は辞められません!
美味しい!
緊張と緩和のテキスト

画像引用:© 2017 Universal Studios. All Rights Reserved.
この映画が人の目を引く最大の要因はバランス感覚にあると思います。
恐怖や笑いは観る者にとって千差万別、
程度加減が僅かでもズレてしまえば、
もうそれは怖く無いし可笑しくも無いとなってしまいます。
ジョーダン・ピールのジョーク感覚と、
人間のどんな部分に恐怖を感じるかと言うポイントが、
実に用意周到にバランスが計られているなと感じるのは、
各登場人物達の立ち位置とそれが織り成す関係性が絶妙である点が挙げられます。
恋人ローズの家族構成も、そこで働く使用人達も、
またパーティーシーンで招かれる客人達も、
実に巧いバランスで主人公のクリスに違和感と猜疑心を与え、
映画を観ている私達には色んな考察を促す仕掛けになっているのです。
平穏な雰囲気が一変する瞬間。
優しかった人の顔に陰りが差す一瞬。
そんな部分を実に丁寧に描写されているので、
自然と主人公に感情移入し同化した上で恐怖体験にどっぷりと浸かる事が出来るのです。
「笑い」とはよく緊張と緩和だと言います。
緊張状態が長引けばそれだけ人はそこから解き放たれた時の喜びで気が緩む。
そこへ予期せぬ状況をぶつけると何故か可笑しくなってしまう。
今作は人の感情の誘導が巧みなので、
色んな気持ちを自然とデトックス出来る効用もあったりします。
映画のラストシーンを当初予定していたものから変更したらしいのですが、
監督の意図するメッセージがもたらすカタルシスもどこか風変りで、
緊張と緩和の様な脱力した可笑しみが湧き上がってきます。
(それがまた同時に恐怖でもあるのが凄い所なのですが)
新時代の恐怖体験をしたい時に観る映画。
個人的にはホラー映画が苦手というか興味を持てなくて、
このえいがひとつまみでも殆ど扱っていませんでした。
サスペンスというジャンルに一応は与するのですが、
ホラー映画の多くが見た目の残酷さや気持ち悪さに終始するので、
今作の様なよくよく考えると恐ろしいという所まで達している作品は稀有な存在です。
劇中に張り巡らされた伏線を綺麗に回収する為に、
二度観三度観にも十分耐え得る映画でもあります。
是非ホラーが苦手な人にこそ観て欲しい作品です!