アニメーション映画

映画【ももへの手紙】おつまみ【茶エノキの豚肉巻き あおさクリームソース】

画像引用:(C) 2012『ももへの手紙』製作委員会

この映画はこんな人におススメ!!

●リアルな作画のアニメーションが好きな人

●瀬戸内海の美しい風景が観たい人

●家族に対して後悔している事がある人

●ひと夏の冒険を体験したい人

タイトルももへの手紙
製作国日本
公開日2012年4月21日
上映時間120分
監督沖浦啓之
出演美山加恋、優香、西田敏行、
山寺宏一、チョー
created by Rinker
¥3,947 (2025/03/14 02:56:42時点 楽天市場調べ-詳細)

自分の殻を破りたいと思った時に観る映画

日本のアニメーションが世界で高い評価を受けている要因の一つに、

アニメーションの世界に緻密な設定と描写でリアリティを構築するという点があります。

その最たるクリエイターが今作の監督の沖浦啓之であると言えます。

沖浦監督はアニメーションの歴史に革命をもたらした傑作、

1995年公開の押井守監督作品【GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊】において

キャラクターデザインと作画監督を担当しています。

初見では理解しきれない様な複雑な物語とクールな語り口。

深いテーマとシニカルな視点は正に大人向けアニメーションの奔りでしたが、

この【ももへの手紙】もおよそアニメーションとは思えない様な、

味わい深い人生の悲喜こもごもを見事に描いています。

妖怪が出てきたり何とものほほんとした雰囲気とは裏腹に、

「死」や「不寛容」や大人と子供の「無理解」などのテーマが、

冒険物語のそこかしこに散りばめられ実に考えさせる内容になっているのです。

誰しも覚えのある思春期の不安や反抗心。

社会や世界と初めて対峙した時の感情がリアルに伝わってくる作品なのです。

心を閉じた少女のひと夏

画像引用:(C) 2012『ももへの手紙』製作委員会

物語は瀬戸内海の小さな島に母子がフェリーで引っ越してくるシーンで始まります。

主人公のももは事故で父親を亡くしているのですが、

その父親との生前最後の時に些細な事で喧嘩をしてしまい

酷い言葉を掛けてしまっているのです。

その後悔の念と理不尽な世界に対する苛立ちから、

母親との関係もまたギクシャクしてしまいます。

そんな多感で難しい年頃のももの前に、

奇妙奇天烈な妖怪達が表れてドタバタの大騒動になっていくという展開。

今作最大の魅力は何と言っても手書きアニメーションの見事な表現力です。

スタジオジブリの数々の名作で作画を担当してきた名うての作画スタッフが集結し、

美しい瀬戸内海の風景の中、見事な動きと表情のキャラクター達が躍動します。

CGが飛躍的に発展しスタンダードとなった現代では、

まず再現不可能な人の手による「絵」の力。

美しい背景画にも目を奪われますが、

各キャラクターの動きの細かさや表情の繊細さは驚愕のレベルです。

このリアリティこそが物語に説得力を与え、

観客の感情移入を誘う原動力になっているのです。

周りとの壁を感じ、自分の殻が破れずに悶々とするももの日常。

彼女の気持ちに変化をもたらしたものは一体何だったのか。

子供から大人へと成長するあの一時にしか感じられない高揚感と、

世界に対する憤り。

そんな凝り固まった彼女の心を強引にこじ開けたのが奇妙な妖怪三人組だったのです。

おつまみの殻を破る

今日のおつまみは【茶エノキの豚肉巻き あおさクリームソース】です。

妻の創作料理の数々を紹介し続け、

最早おつまみメニューも200に近い数になってまいりました。

レパートリーに毎回悩みは付き物ですが、

おつまみの殻を破ったのが今日のレシピです。

我が家で何かと重宝されている茶色のエノキ茸を豚肉の薄切りで巻きソテー。

そこに掛けたるソースは牛乳とあおさ海苔と柚子胡椒。

磯の香りとピリっとした柚子胡椒の風味が茶エノキの香りを一層引き立てます。

どんなお酒にも合うオリジナルレシピです。

壁の外の世界へ

画像引用:(C) 2012『ももへの手紙』製作委員会

主人公のももは亡くなった父親の書き掛けの手紙を発見します。

喧嘩別れのまま亡くなってしまった父親からの最後の言葉。

そこには「ももへ」という一文しか記されていませんでした。

その続きに何を書こうと思っていたのだろうか。

途切れてしまった想いに心を捉われまま、

ももは自分の殻に閉じこもって世界に背を向けてしまいます。

多感な時期に衝撃的な出来事を経験して、

精神的なショックとまだ周りの世界とどう接して良いのか分からない年頃。

これは多かれ少なかれ誰にでも覚えのある事なのではないでしょうか。

届かなかった手紙。伝えられなかった想いはももの方でも同じでした。

それは父親にも、母親にも、友達にも、新しい環境で出会った人達にも。

そんなももを半ば強引に、抗えない困難と混乱を伴って

変えていったのが個性豊かな三人の妖怪。

実直で面倒見が良いがおっちょこちょいでだらしない「イワ」

狡賢くて理屈っぽい「カワ」

マイペースな天然キャラだが心優しい「マメ」

この三人(三体?)がそれぞれ西田敏行と山寺宏一とチョーが演じていて、

その掛け合いが絶妙で実に楽しい。

演技巧者達のアドリブをふんだんに取り入れたであろう空気感が、

次第にももを明るく活気づけていく様が生き生きとしていて、

観ていて元気が出てくるシーンなのです。

自分の殻を破りたいと思った時に観る映画。

監督の沖浦啓之は今作に七年の制作期間を費やしました。

前作の2000年公開の【人狼 JIN-ROH】からは12年という寡作振り。

その制作スタイルは余りにストイックで商業的な成功とはまた別な所で、

職人的な意味で業界の尊敬を集めている。

今作は笑えるシーンも豊富で難しい事抜きに楽しめるエンターテイメントも兼ね備え、

更に少女の心の成長を丁寧に描いた人間ドラマにもなっている点が秀逸。

ハイレベルな日本が誇るアニメーター達の仕事に唸りながら、

笑って泣いてお腹一杯になれる見事な作品になっていると思います。