アクション

映画【ワン・バトル・アフター・アナザー】おつまみ【生春巻き】

画像引用:© 2025 Warner Bros. Entertainment Inc. and Domain Pictures, LLC. All Rights Reserved.

この映画はこんな人におススメ!!

●迫力のアクションシーンが見たい人

●名優達の演技合戦が見たい人

●キワモノキャラクターを目撃したい人

●父娘の絆を体感したい人

タイトルワン・バトル・アフター・アナザー
製作国アメリカ
公開日2025年10月3日(日本公開)
上映時間162分
監督ポール・トーマス・アンダーソン
出演レオナルド・ディカプリオ、
ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロ、
テヤナ・テイラー、チェイス・インフィニティ

戦わなければならない時に観る映画

第98回アカデミー賞に於いて作品賞を含む6冠に輝き、

監督のポール・トーマス・アンダーソンは初めての監督賞を受賞しました。

主演のレオナルド・ディカプリオは嘗て

1997年公開の【ブギーナイツ】で主役のオファーがありながら

役柄の際どさに出演を断った過去があり、

今回念願のポール・トーマス・アンダーソン作品への出演となりました。

162分という長尺にも関わらず一切中弛みが無い見事な脚本。

コンビ6作品目となるジョニー・グリーンウッドの素晴らしい音楽。

色彩設計と構図、そして緩急のバランスが見事な撮影と編集。

そして演技派俳優達の身体を張った熱量の凄まじい演技合戦。

全ての要素が見事に合致した奇跡的な出来栄えになっています。

20世紀アメリカ文学を代表する作家トマス・ピンチョンの

傑作パラノイア小説「ヴァインランド」は、

60年代のカウンターカルチャーを

80年代の冷戦期から見て再評価していく様な作品でしたが、

今作では80年代に革命に明け暮れた若者達が、

2020年代の現代に於いて

如何なる役割も得られずに落ちぶれている様を露呈します。

しかしアメリカ社会が繰り返してきた政治的、経済的内乱を土台に、

強権主義や白人至上主義の成れの果ての深い病巣を描きつつも、

また新たな若い世代が新しい価値観の元に世界を変えていくという

希望を感じさせてくれるストーリーにもなっています。

そこに主人公の元革命家と娘との絆。

その歪ながらも深い愛情を絡めた波乱万丈の物語が

グイグイと観る者を惹き込んでいくのです。

正にアメリカ社会を描き続けてきた天才監督の、

集大成とも言える作品になっているのです。

落ちぶれても元革命戦士

画像引用:© 2025 Warner Bros. Entertainment Inc. and Domain Pictures, LLC. All Rights Reserved.

タイトルの「ワン・バトル・アフター・アナザー」とは、

戦いに次ぐ戦いという様な意味だそうです。

白人至上主義の秘密結社と革命家との戦いを描くストーリーは、

正に現代のアメリカの分断を彷彿とさせたりしますが、

今作はあくまでエンターテイメント作品であり、

硬派な社会派映画という感じではありません。

主人公のパット(レオナルド・ディカプリオ)は

移民解放を目的とする革命組織「フレンチ75」の元メンバー。

組織の中心人物だったパーフィディアという黒人女性と恋に落ち、

一人娘ウィラが生まれますが母親は逮捕され

残された父娘は身分を伏せ逃亡生活を余儀なくされます。

16年の年月が経ち、すっかり立派に成長したウィラ。

しかし嘗ての革命戦士パットはボブという偽名で世を忍び、

ドラッグやアルコール依存に成り果てる体たらく。

やがてウィラが仇敵のロック・ジョー(ショーン・ペン)に拉致され、

ボブは娘を助けようと立ち上がるもドジばかりで不甲斐ない。

結局ウィラは自分の力で追手を倒し、

全て終わってからやっとボブは娘と再会します。

正直何の役にも立っていないのですが、

それでも父親というのは子供の為に命を投げ打って戦うもの。

たとえ無様で惨めで役立たずだとしても。

この主人公が恰好付かない所とか、

新しい世代の娘のスペックが異常に高い所とか、

正にポール・トーマス・アンダーソンらしい皮肉が効いています。

かなり特殊な関係の父娘ではありますが、

そこには普遍的な愛情もしっかりと描かれているのです。

これまでのフィルモグラフィでも、

父親という存在が作品の大きなテーマを担ってきました。

【マグノリア】のでは父親の愛を受けずに育った息子の葛藤、

【ゼア・ウィル・ビー・ブラッド】では強権的な父親と息子の愛憎を描き、

【ザ・マスター】では疑似的親子関係の興廃を綴りました。

今作では遂に父親を必要としない若い世代の台頭を描き、

ライフテーマであった父性というものに一旦の着地点を付けたとも受け取れます。

終わらないおつまみの戦い

今日のおつまみは【生春巻き】です。

最近妻はライスペーパーにハマっていて、

手軽に映える料理が作れると多用しております。

今回は生ハム入りと、

サーモン入りの豪華共演。

スイートチリソースを掛ければエスニックに、

ワサビ醤油なんかでも美味しそうですね。

これはビールでもワインでも何でもいけるおつまみです。

終わらない戦い

画像引用:© 2025 Warner Bros. Entertainment Inc. and Domain Pictures, LLC. All Rights Reserved.

子は親を選んで生まれてくる事は出来ませんが、

家族の絆は血の繋がりだけで成立するものでもありません。

あらゆる分断と差別が渦巻く現代のアメリカ社会にとって、

家族の在り方というものも時代と共に多様になってきました。

嘗ての強権的な家長制度は既に崩壊し、

新たな世代の力強さを感じられる今作のラストシーンには、

未来へのポジティブなイメージと共に、

終わらない戦いへの負のイメージも同時に予見させるものでした。

移民排除政策による軋轢は過去最大の分断を世界中で巻き越していますが、

その根源的な原因たる戦争が今尚留まる事の無い現状にも心を痛めます。

それぞれ主義主張の差異はあれど、

その解決策に暴力を用いた時点で双方共に引き返す事の出来ない泥沼に陥る。

そんな幼児でも容易に分る筈の事がいつまでも改善出来ない人類に、

戦いが終わる日は訪れないのでしょうか。

ボブは世界を変える為に嘗て命を掛けて戦っていた訳ですが、

革命が破れ志が潰えても、

ただ一人の人間を守る為に再び命懸けの戦いに踏み出すのです。

世界ではなく自分自身を変える革命。

一人一人の人間がそれを完遂出来れば、

或いは世界は戦争を必要としなくなるのかも知れません。

戦場で生まれた子供にも無限の未来がある様に、

私達は例えそれが夢想家の夢だと揶揄されようと、

それを信じて日々を過ごすしか無いのではないでしょうか。

いつの日か戦いが終わりを告げる日を信じて。

戦わなければならない時に観る映画。

大人達があらゆる矛盾を自認しながら暴走する現代。

ポール・トーマス・アンダーソン監督の痛烈な批判精神と、

同じ轍を何度も踏む人類の愚かな歴史を皮肉った、

圧倒的なエネルギーを持った歴史的傑作です。

何度観ても新たな気付きと深い考察を促す、

実に懐の深い作品でもあります。