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映画【エセルとアーネスト ふたりの物語】おつまみ【米なすの味噌グラタン】

画像引用:©Ethel & Ernest Productions Limited, Melusine Productions S.A.,The British Film Institute and Ffilm Cymru Wales CBC 2016

この映画はこんな人におススメ!!

●絵本が好きな人

●イギリスの文化に興味がある人

●家族の絆を感じたい人

●人生について深く考えたい人

タイトルエセルとアーネスト ふたりの物語
製作国イギリス、ルクセンブルク
公開日2019年9月28日(日本公開)
上映時間94分
監督ロジャー・メインウッド
出演ブレンダ・ブレッシン、ジム・ブロードベント、ルーク・トレッダウェイ

平凡な幸せの有難さを思い出したい時に観る映画

「スノーマン」や「さむがりやのサンタ」の様な

子供心をワクワクさせてくれる様な絵本。

そして「風が吹くとき」やこの映画の原作である

「エセルとアーネスト」の様に大人が読んでも感動する絵本。

イギリスの絵本作家レイモンド・ブリッグスの作品は

世代を越えて世界中の人々に愛され続けてきました。

彼自身が映画の冒頭で語る様に、

この映画の主人公エセルとアーネストは

どこにでもいる様な平凡で普通の人々です。

彼等の1920年代から激動の戦争を経た、

40年にも及ぶ生活の機微が、

深い愛情を持って丹念に描かれています。

手書きのタッチを活かす新技術が用いられ、

水彩画の様な滲みや色褪せを敢えて感じさせる様な豊かな色彩。

細部に至る美術の徹底した時代考証。

そしてイギリスを代表する名優二人の

見事な演技が物語に奥行きを与えています。

今や先の大戦を経験した世代はかなりの高齢になり、

その貴重な体験談を聞ける機会はどんどん少なくなってしまっています。

そんな中でこういった戦争そのものを描くのでは無く、

当時の人々がどんな暮らしをしていて何を思っていたのかという事を

描いた作品はとても貴重だと思います。

当たり前の事ですが彼等が懸命に命を繋いでくれたから、

今の私達がいる。

遠い国の馴染みの無い人達の物語であっても、

こうして大切な事を学べる事は映画というメディアが持つ

大きな力の一つであると思います。

レイモンド・ブリッグスが作り出した一冊の絵本、

彼の両親の物語が時代を越えて私達に教訓と希望を与えてくれる。

戦争を知らない幸せな私達にこそ

語り継がなければならない物語であると言えるでしょう。

戦争が市井の人々に見せたもの

画像引用:©Ethel & Ernest Productions Limited, Melusine Productions S.A.,The British Film Institute and Ffilm Cymru Wales CBC 2016

エセルとアーネストはごく平凡な市民です。

牛乳配達員のアーネストと元メイドのエセル。

ごく平凡な出会いをし、ごく平凡な恋愛を経て、

ごく平凡な家庭を築きました。

小さな裏庭があって、日の当たるダイニングがあって、

ちょっと広い寝室に二人は心を躍らせていました。

やがて一人息子のレイモンドが生まれ、

ごく平凡な家族はささやかな幸せを享受していました。

戦争という悪夢が訪れるまでは。

1939年9月。

ヒトラー率いるナチスドイツのポーランド侵攻を受けて、

イギリスはフランスと共に宣戦布告しました。

暗く長い第二次世界大戦の幕開けです。

翌年にはドイツ空軍による無差別爆撃がイギリス国内でも行われました。

この期間の市民の生活不安は筆舌に尽くし難く、

エセルとアーネストが住む近隣も被害を受けるシーンがあります。

戦争というものが人間の歴史にもたらすものを、

レイモンド・ブリッグスは淡々と描写します。

彼自身は田舎に疎開して直接爆撃を経験した訳では無いですが、

敢えて俯瞰的に描く事でよりその恐ろしさがリアルに感じられる様な気がします。

そこに日常として存在する戦争。

そんな中でもユーモアを忘れずに生活を楽しもうとする

エセルとアーネストの日々が実に愛おしく描かれています。

戦争は人々からあらゆるものを奪いましたが、

それでもそこに生きる人々には確かな希望もあったのです。

徹底して普通の人々を描く事で、

その当時の空気感がリアルに伝わってくる演出になっています。

おつまみの有難さも思い出す

今日のおつまみは【米なすの味噌グラタン】です。

米なすと豚バラ肉を味噌で炒め、

くり抜いた米なすの器に戻しチーズを掛けてオーブンで焼く。

大葉をのせて香り付け。

まるで料亭の様な凝った一品。

見栄えもするし味も美味しい。

器のなすも素揚げしているので美味しく頂けます。

平凡な日々の特別なおつまみ。

冷えたビールが美味しくなってくるこの季節。

堪らない一皿でした。

人を描き歴史を語る

画像引用:©Ethel & Ernest Productions Limited, Melusine Productions S.A.,The British Film Institute and Ffilm Cymru Wales CBC 2016

2005年の日本映画【ALWAYS 三丁目の夕日】は、

嘗てどこにでもあった日本の普通の人々の生活を

丁寧に再現した事でも絶大な支持を得ました。

当時を知る人達にとっては懐かしく、

知らない世代の人達には新鮮な驚きを与え、

義理と人情に溢れた古き良き時代のノスタルジーは、

私達が忘れてしまった大切な何かを思い出させてくれました。

この【エセルとアーネスト ふたりの物語】という作品も、

イギリス人にとって同じ様な映画なのでは無いでしょうか。

二人の生活は決して裕福ではありませんが、

真面目に働き慎ましい生活を送り、

当たり前の公共心と当たり前の道徳心を持ち、

戦争に心を痛め、わが子の成長に心を尽くし、

足るを知るという様な佇まいの元に、

誰もが覚えのある普遍的な感情を呼び起こしてくれます。

実直に勤めを果たし、

名も無い内にその生涯を静かに閉じる。

ふとした瞬間に思わず口角が僅かに上がるような。

私達の人生の機微に起こる、

ささやかだけれど、役にたつこと。

エセルとアーネストの互いを想い合う姿には、

そんな人生の些細な喜びが溢れています。

レイモンド・ブリッグスは声高に反戦を叫ぶのでは無く、

ただ幸せだった両親の姿を描きたかっただけなのでしょうし、

人生が始まって閉じていく過程の一瞬の輝きを、

永遠に残したいと願ったのかも知れません。

平凡な幸せの有難さを思い出したい時に観る映画。

人を描き歴史を語る事が、

芸術家の細やかな時の流れへの抵抗なのかも知れません。

この作品が実に感動的なのは、

それが私達自身の人生を映す鏡であるからです。

エンドクレジットが終わって劇場に灯りがともる瞬間、

確かに得た温もりを無くしてしまわない様に、

何度も何度も心の中で場面を反芻したくなる様な、

本当に素敵な映画だと思います。