恋愛

映画【We Live in Time この時を生きて】おつまみ【ミックスピクルス】

画像引用:© 2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION

この映画はこんな人におススメ!!

●感動の恋愛ストーリーが観たい人

●夫婦の絆を感じたい人

●自分の残された時間について考えたい人

●今の大切さを感じたい人

タイトルWe Live in Time この時を生きて
製作国イギリス、フランス
公開日2025年6月6日(日本公開)
上映時間108分
監督ジョン・クローリー
出演フローレンス・ピュー、アンドリュー・ガーフィールド

今を生きる事の尊さを感じたい時に観る映画

人は自分の生涯をふと振り返る時、

過去から現在へと時系列で思い出すでしょうか?

きっと多くの人はあんな事やこんな事と、

記憶の発端を手掛かりにして非線形に

自在に編集された時間軸で

色んな出来事を交錯させながら紐解くのでは無いでしょうか。

今作も一組の男女の出会いから死別してしまった現在に至る、

掛け替えの無い日々をランダムな非線形で描いていきます。

時間軸がシャッフルされる事で過去も未来も常に現在形で語られ、

その一瞬の掛け替えの無さに自然とフォーカスする効果を発揮しています。

それが私達観客にとっては絶大な没入感にも繋がっています。

断片的な情報が次第に体系化されていく事に依って、

シーン間の伏線と回収とが繰り返され、

今がどんな状況であるかを肌感で理解出来る様になれば、

それはより自分自身の物語として映画を捉える事にも繋がります。

そんな構造的なクレバーさと共に、

常に被写体を優しく包み込む様なソフトな映像の質感、

そして若き演技派と評価の高い主演の二人の自然体な演技の素晴らしさによって、

今作は多くの観客にとって忘れ得ぬ感動をもたらす名画となりました。

監督はアイルランド出身のジョン・クローリー。

2015年公開の【ブルックリン】でも

丁寧な感情描写で高い評価を得た舞台出身の演出家です。

そして主人公の天才シェフ役には

2019年の【ミッドサマー】や【ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語】で

演技力を高く評価されたフローレンス・ピュー。

その優しく繊細な夫を演じたのが

【アメージング・スパイダーマン】シリーズのアンドリュー・ガーフィールド。

二人の息の合った見事な演技が

この作品のテーマに魂を吹き込みました。

限りある時の中で、何を選び生きていくか

画像引用:© 2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION

物語は言葉を選ばずに言ってしまえば、

よくある難病物の定型の範疇を出ないストーリーです。

主人公の天才シェフ・アルムート(フローレンス・ピュー)は

ステージ3の卵巣がんに侵され余命僅かとなってしまう。

残された時間の中で愛し合う二人は掛け替えの無い日々を共に過ごす。

これを時系列で描くと人生の困難に対する悲壮感に隠れ、

そこに生きる人間の本来の輝きが薄れてしまう事にも繋がります。

それを時間軸をシャッフルする事である種の記憶の混乱を観客に起こす。

今が一体いつのタイミングのシーンなのか。

前後不能に陥った私達は半ば強制的に

「今」という瞬間にフォーカスを合わさざるを得なくなる。

それが映画という枠を越えた絶大なリアリティをもたらす効果にもなっているのです。

彼等の生活の中に飛び込んで共にその一瞬の感情に身を浸す。

その積み重ねが観客と物語を無関係のままでおく事を困難にしていくのです。

無可逆的な時間の流れの中では、

悲しい結果に向かって一方向にしか感情は成長していきません。

しかしこの映画では絶望の隣に馬鹿げたシーンがあり、

愛し合う二人に感動した直後に笑ってしまう様なジョークがある。

散々に感情を掻き回された挙句に、

気が付けば私達もまた「今」というこの瞬間にだけ

生きているのだという事を教えられているのです。

主人公のアルムートは、

自身の余命を悟った時に貴重な時間を治療に奪われるよりも、

好きな人と好きな事に使う事を選択します。

人はどこで誰と何をしていても時の流れの中に生きるしかない運命です。

残り時間を長いと感じるか、

或いは短いと感じるかも、

どう生きるかに依るのです。

物事の見方は決して一つでは無い。

あらゆる方向から多視点で見る事に依って、

人生とは無限の色彩を伴うのだと気付かされるのです。

今を生きるおつまみ

今日のおつまみは【ミックスピクルス】です。

冷蔵庫に常備菜としてストックされている頼れる存在。

かんたん酢とスパイスで漬けた

胡瓜・人参・紫キャベツたち。

脂っこい料理が好きな我々の食卓に、

箸休めとして重宝するのがこれらのピクルスなのです。

酢の物は健康的ですしね。

白ワインのお供にも最適です。

異なる二人だからこそ分け合えたもの

画像引用:© 2024 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION

今作の構造的な時間軸の仕掛けによる効果は前出しましたが、

もう一つ主人公の二人の性格的な差異が

テーマに於いて重要な効果を持っているという事について少し話したいと思います。

アルムートは自由奔放で芯の強いチャレンジャー気質。

困難に対しても弱音を吐かずに立ち向かっていく勇気を持った人物です。

対する夫のトビアスは繊細でやや心配性な所のある人物。

しかしその優しさと正義感は周りの人間を惹き付け、

相手の意見を尊重し寄り添う事で幸せを得るタイプの人間です。

彼等にも当然考え方の違いがあり、ぶつかる事もあります。

しかし相手を否定するのでは無く、

その違いこそを慈しんで困難を分け合える所に

この物語の本当の素晴らしさがある様な気がします。

人生に対する考え方も、

勿論育ちも価値観も違う他人同士。

仕事に対する想いも違ければ娘に対する感情も違うでしょう。

しかし全く自分と異なる相手だからこそ懸命に想像し、

寄り添い、荷物を分け合って背負う事が出来る。

その方法を模索し、

決して諦めず、投げ出さず、

泥臭く、しぶとく食らい付いていく。

限りある命を全うする為に、

何よりも必要不可欠だったのが互いを理解しようとする「意思」だったのです。

今を生きる事の尊さを感じたい時に観る映画。

余命を知ろうが知らなかろうが、

命には終わりが必ず訪れます。

私達が残された時間を有意義なものにするのに必要なものは、

「今」という瞬間を必死に築き上げてきた二人が、

静かに教えてくれている様な気がします。

一秒でも不要な瞬間など存在しない。

その一瞬に素直に向き合う事で、

永遠よりも大事なものを人は手にする事が出来るのかも知れません。