恋愛映画

映画【スーパーノヴァ】おつまみ【チーズハンバーグ】

画像引用:© 2020 British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Supernova Film

この映画はこんな人におススメ!!

●名優による名演技に酔いしれたい人

●パートナーとの別れについて考えたい人

●美しいイギリスの原風景が観たい人

●人生の意味を再考したい人

タイトルスーパーノヴァ
製作国イギリス
公開日2021年7月1日(日本公開)
上映時間95分
監督ハリー・マックイーン
出演コリン・ファース、スタンリー・トゥッチ、
ジェームズ・ドレイファス、ピッパ・ヘイウッド
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愛の意味について考えたい時に観る映画

今作は深い愛を描いたラブストーリーですが、

愛の始まりの高揚を描いた作品では無く、

愛の終わりのその時に何を思うかという重いテーマを描いています。

しかし作品自体は決して重苦しいだけでなく、

愛し合う二人の生活の中にある機微を丹念に描き、

そこにあるユーモアに溢れた喜びをじっくりと感じられる作品になっています。

名優コリン・ファースとスタンリー・トゥッチ。

この二人が作り出す空気感がとにかく素晴らしい。

20年連れ添った酸いも甘いも知り尽くした間柄。

言葉を交わさずとも相手の気持ちが痛い程分かる関係性。

深く愛しているからこそ、自分の事以上に相手の事を考えてしまう。

喜びと苦しみに満ちた最後の日々。

観ている者の心を締め付ける様な心動かされる物語が

美しい景色の中で展開されていきます。

監督は今作が監督二作品目になる俳優としても活動するハリー・マックイーン。

シンプルなストーリーの中に二人の感情の機微を丁寧に乗せ、

台詞だけでは無く些細な風景描写の中にも豊かな感情表現を感じさせる、

繊細で奥深い演出で見事な人間ドラマを作り上げました。

星がその命を終える時、太陽の100億倍の光を放って爆発する事象。

その一生で持ち得た要素を宇宙空間に放出する現象。

それがこの映画のタイトルであるスーパーノヴァ(超新星)という意味だそうです。

人がその命を燃やし尽くす時、

その人は目に見えない何かを世界に残して消えていく。

儚くも美しい、二人の愛の物語は私達に深い余韻を残してくれる筈です。

愛する者の死

画像引用:© 2020 British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Supernova Film

20年もの間深い愛で結ばれていた二人。

ピアニストのサム(コリン・ファース)と

作家のタスカー(スタンリー・トゥッチ)。

タスカ―が重度の認知症を患い記憶が次第に曖昧になっていく。

そんな中で二人は思い出の地を訪ねる為にキャンピングカーで旅に出るのです。

作家であるタスカ―が文字すら書けなくなっている状況には、

その心中を想像すれば胸が張り裂ける様な思いに駆られます。

彼は自分が自分でいられるうちに尊厳を持って自ら「死」を迎える事を望む。

愛するサムを苦しめる事に他ならない決断ではあっても、

美しい記憶のままに自分を思い出して欲しいと切望するのです。

これは本当にやるせないですよね。

人は誰しも等しく「死」を迎える訳ですが、

その一生の終わりに超新星の様に光を放って宇宙の一部として生き続けたい。

タスカ―の考えも理解出来るし、サムの身になったらそんなの耐えられる訳が無い。

観ている私達も自分だったらどうするだろうかと本当に考えてしまう所です。

徐々に記憶が曖昧になっていく、

愛する人の事も忘れてしまうかも知れない。

これは本当に身を切る様な恐怖だと思います。

そんな中でもユーモアを忘れず、人に優しく、愛する者の事を考え続けるタスカ―の

強さと美しさを体現したスタンリー・トゥッチの柔らかい演技は、

正に筆舌に尽くし難いものがあります。

対するピアニストのサムは普段は物静かなタイプなのですが、

その実感情的で揺れ動く心の苦悩に打ちひしがれる弱さも持った人間。

苦しい思いを内に秘め耐えるも、

タスカ―に対する絶対的な信頼の元まるで子供の様に追いすがるその姿には、

繊細なアーティストとしての一面と共に

実に感情豊かな人間であるという事が垣間見えます。

二人の関係性が説明的に描かれる事無く、

さり気無い台詞や表情の中に如実に語らせる所に、

監督の思慮深い演出センスと二人の名優の圧倒的な演技力を感じます。

おつまみの超新星

今日のおつまみは【チーズハンバーグ】です。

今回はタネに豆腐を入れたヘルシーなレシピ。

しかしチーズを乗せて焼いた事によって健康値相殺。

切っても切れぬ相性のポテトで更に糖質追加。

しかし幸福度はマックスなので良しとしましょう。

おつまみは私達の血や肉となりこの宇宙を循環していきます。

大いなる時の巡りに想いを寄せながら、

この後スタッフが美味しく頂きました。

人一人のライフタイムが紡ぐもの

画像引用:© 2020 British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Supernova Film

超新星が宇宙の塵となり長い年月を掛けまた何かの構成要素になっていく。

それはまた星の一部になったり、生き物の一部になったりする。

私達の記憶の一粒一粒もその宿主を失った後でも、

誰かの一部となって生き続け、その人が死んでもまた誰かの記憶の一部となる。

物質は消える事無く、何かに生まれ変わり続けその中に微かな記憶が蓄積されていく。

それがDNAの螺旋であっても、コンピューターのプログラミングであっても、

何一つ消える事は無いという概念はどこか希望を感じさせてくれます。

おそらくタスカ―を失った後のサムが、

ピアニストとして復帰し舞台上で奏でたエルガーの旋律。

その優しい旋律の中には確実にタスカ―と生きた時間の記憶が溶け込んでいる。

人一人の一生は実に儚いものですが、

音楽でも小説でも映画でもこの世に残されたものは

形を変え解釈を変え人の心の中に受け継がれていく。

二人が共に過ごした長い年月の中で培われた、

病や死すらも越えて奏で続けられる記憶の一粒は、

掛け替えの無い一瞬に分かち合った温もりで構成された微かな光。

余りにも深く愛し合った二人だからこそ、

その記憶は美しい形のままこの宇宙の構成要素として輝き続ける。

そんな奇跡を描いた一遍の物語なのです。

愛の意味について考えたい時に観る映画。

愛する者を残して逝く者と、

愛する者に残される者。

どちらであっても想像を絶する悲しみを抱えている訳ですが、

彼等が互いに相手の思いを何よりも大切にして最後の日々を過ごす姿に、

激しく胸を打たれました。

それこそが儚い人間の一生が持ち得た何よりも美しい光なのでは無いでしょうか。