SF映画

映画【ブレードランナー2049】おつまみ【椎茸の肉詰め天ぷら】

画像引用:© 2017 Alcon Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

この映画はこんな人におススメ!!

●ブレードランナーが好きな人

●驚異的な映像が観たい人

●人間の定義について考えたい人

●静謐な様式美に酔いしれたい人

タイトルブレードランナー2049
製作国アメリカ
公開日2017年10月27日(日本公開)
上映時間167分
監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演ライアン・ゴズリング、アナ・デ・アルマス、ジェレッド・レト、ハリソン・フォード

自分の存在意義について考えたい時に観る映画

SF映画の世界に多大な影響を与え、

今尚伝説の作品としてリスペクトされ続けている、

リドリー・スコット監督作品の【ブレードランナー】。

アメリカのSF作家フィリップ・K・ディックの小説、

【アンドロイドは電気羊の夢を見るか?】の映画化。

原作から大胆に脚色された物語と、

斬新なデザインで表現された近未来の都市の姿が、

当時の映画ファンに忘れられない原体験を与えました。

それから30年以上の時を経て、

続編の白羽の矢を立てられたのが、

2016年の【メッセージ】で静謐なSF世界を構築し、

絶賛されたカナダ人監督ドゥニ・ヴィルヌーヴでした。

既に伝説となり様々な考察を繰り返されてきた作品を、

現代に蘇らせるという失敗の許されないミッションへと果敢に挑戦し、

見事期待以上の作品を作り上げてしまった事は驚き以外の何物でもありませんでした。

圧倒的に美しい映像世界の中で、

人間と人間に忠実である様に作られたレプリカントと呼ばれる人造人間が、

互いの存続を懸けた戦いを繰り広げるサスペンスフルな展開。

人間とは何か?生きる意味とは?

深遠なテーマを問う哲学的な側面を持ち、

かつ迫力満点のアクションシーンも満載。

正に唯一無二のエンターテイメント作品になっています。

存在理由を求め彷徨うレプリカント

画像引用:© 2017 Alcon Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

物語は前作から30年後の世界。

環境破壊が進んだ2049年には地球外に住む裕福層と、

それ以外の貧困層との格差が更に如実になっています。

主人公のKは新型のネクサス9型レプリカントの警察官。

彼の仕事は逃亡中の旧型ネクサス8型レプリカントを解任(抹殺)する事。

謂わば同胞殺しでもある仕事を坦々とこなしながら、

人間からは蔑まれ実に孤独な生活をしています。

汎用型AIヴィジョンであるジョイという女性だけが唯一心を許せる相手。

危険を伴う任務も忠実にこなしますが、

30年前に死んだレプリカントの遺骨に、

帝王切開をした痕跡が見つかった事をきっかけに、

自分の存在意義について心を乱していく事になります。

レプリカントが子供を産むという、

世界の理をひっくり返してしまう様な秘密に触れ、

同時にその子供が自分なのでは無いかという疑問を持ち始めるK。

レプリカントの精神安定の為に植え付けられた人工記憶を、

自分の存在理由のよすがにしたりする辺りは、

実に切なくて観る者に感情移入を促す見事な演出だと思います。

自分が生きる意味を求めて彷徨う姿は、

人間の命令に忠実に動くレプリカントという存在から逸脱した、

実に人間らしい行動と言えます。

既に人間である事の意味が失われてしまった様に見える超管理社会に於いて、

Kこそが人間として普遍的であり真実に拘るという一種の皮肉。

システムが驚異的に発達し全てが権力の統治下にあるディストピア。

人間の生活を豊かにする為だけに生み出されたAI技術やテクノロジーの先に、

最早生きる意味を失ってしまった様な社会があるというのは、

皮肉を通り越して恐怖ですらあると言えます。

おつまみの来たるべき未来は

今日のおつまみは【椎茸の肉詰め天ぷら】です。

これは妻の創作おつまみシリーズとしては黎明期の、

かつての大ヒットメニューです。

挽肉にザーサイを刻んだものを混ぜて、

椎茸の笠に詰めたら衣を纏わせ油で揚げるだけ。

外はカリっと、中はジュワっとで、

ザーサイのコリコリ感がアクセントになってとても美味しいのです。

未来に残したいレジェンドおつまみ。

冷たいビールにピッタリの一皿!

レプリカントはどんな夢を見るのか?

画像引用:© 2017 Alcon Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

主人公のレプリカントは何を目的に戦っていたのでしょうか?

彼は自分の存在意義に疑問を持ち、

自分が特別な存在なのでは無いかという期待を胸に、

任務から逸脱し真実を追い始めます。

自分の幼い頃の記憶が、

人工的に作られた偽物の記憶である事を分かっていながら、

どこかでそれが本物である事を夢見ているのです。

人間と同じ様に感情を持ち、自己判断し行動する。

彼等は人間の役に立つ事を唯一の存在理由として作られた機械ですが、

所謂ロボットとは違い、彼等は生体であり「死」を持っています。

人工知能を持ったクローン人間という雰囲気に近いと思います。

感情というものがそこにあれば、

思索を止める事は出来ず、

高性能であるが故に、

限りなく人間に近付き、

ある意味それを凌駕してしまう。

人間以上に人間らしい存在として、

レプリカントも進化し自分達の理想の世界を夢見る。

愚かで醜い人間なんかよりも、

高次元な存在であると言えるのに、

彼等が求める物が実に人間らしく、

他者を愛し他者から愛される事をただ一心に欲するのが、

実に切なくて美しいと感じます。

世界にとってより良い存在であろうとするプログラミング上の性なのか、

汎用性AIヴィジョンであるジョイのひたむきな愛情や、

冷酷なブレードランナーである筈のKが怒りや悲しみを全身で表現するシーンには、

この物語が「人間とは何なのか?」という深いテーマを描こうとしている事が、

深い感動と共に伝わってきます。

自分の存在意義について考えたい時に観る映画。

人は高度にシステム化された社会の中で、

時に自分の存在のちっぽけさに立ち竦む事があります。

何をやっても無駄で、何も変わらず何も得られないと諦めてしまう。

しかし私達はAIでは無く、レプリカントでも無く、

自由意志を有した人間なのです。

自分の頭で考えて、自分の生活を変えていく力があります。

悲しいレプリカントの運命に背き戦った今作の主人公Kは、

もしかしたら前作の【ブレードランナー】に於いては、

主人公のデッカードでは無く悪役のロイ・バッティに近い存在なのかも知れません。

運命にあがない藻掻き、苦しみの果てに人間を越えた尊厳を持って死んでいく。

彼等から私達が学ぶ事は存外に多い様に感じたりします。

本当に偉大なSF映画だと思います。