画像引用: ©2018 Midwestern Films LLC 2018
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【華氏119】です。
2002年公開の【ボーリング・フォーコロンバイン】や、
2004年公開の【華氏911】で世界中から高い評価を受けた、
不屈のドキュメンタリー映画監督、マイケル・ムーアの作品です。
2016年アメリカ大統領選挙で第45代アメリカ合衆国大統領となった、
ドナルド・トランプ氏への痛烈な批判と、民主党の腐敗した権力体制を描いた、
政治的ドキュメンタリー映画。
鮮やかな論説とユーモラスな描写でアメリカの闇を浮き彫りにしています。
この映画はこんな人におススメ!!
●アメリカ社会について学びたい人
●権力構造について知りたい人
●政治の話題に関心がある人
●未来への微かな希望を感じたい人
タイトル | 華氏119 |
製作国 | アメリカ |
公開日 | 2018年11月2日(日本公開) |
上映時間 | 128分 |
監督 | マイケル・ムーア |
出演 | マイケル・ムーア、ドナルド・トランプ、 バラク・オバマ |
世界の行く末を考えたい時に観る映画
アポなし突撃取材で有名なマイケル・ムーア監督。
今作品では2016年の大統領選でしのぎを削った、
共和党候補のドナルド・トランプ氏と民主党候補のヒラリー・クリントン氏が
主な対象となってます。
圧倒的優位と予想され史上初の女性大統領の誕生を誰もが疑わなかった2016年。
実際に総得票数も多かったヒラリー・クリントンは何故大統領になれなかったのか?
史上最低の大統領と言われたドナルド・トランプが何故大統領の座に就けたのか?
今作品の冒頭で語られるこの大統領選挙の顛末は、
まさに最高の喜劇であり最大の悲劇でした。
アメリカ合衆国の大統領は今日に至るまで世界最高の権力者であり、
世界の行く先を決める事になる重職です。
そんな地位に人種差別者であり、女性軽視者であり、
権力主義者である人物が就いてしまったのです。
そしてそれがアメリカ社会や世界にどんな影響をもたらしたのか。
この映画は政治をモチーフにしたドキュメンタリー作品ですが、
その描き方は劇画的で、喜劇であったり時には背筋も凍る様なホラーでもあります。
幼稚なナルシシズムを持った人間が権力を握った時、
世界は如何に地獄へと変化していくのかという恐怖の物語。
劇中でも比較されますが、それは20世紀最大の悲劇である
ナチスドイツのアドルフ・ヒトラーとも酷似しています。
時を経た今、本当にこれが実際に起こった出来事なのかと驚愕してしまいます。
驚くべき凶行
画像引用: ©2018 Midwestern Films LLC 2018
本編で最も時間を割き言及されているのがミシガン州フリントという街の
水道水汚染の問題です。
監督のマイケル・ムーアの出身地でもあるこの町は、
アメリカの自動車産業の大手「ゼネラルモーターズ」の大きな拠点地です。
当時のミシガン州知事であったリック・スナイダーは資産家や銀行の既得権益拡充の為に
公共事業を決行します。
それは新たな巨大水道パイプラインの建設でした。
この工事に伴う水源の変更で、工場からの排水にも使われていたフリント川から
生活用水が供給されました。
そしてその水を飲んだ市民に健康被害が出始めたのです。
水道水から規定値以上の鉛が検出され、子供達の健康診断でも高い鉛の血中濃度が出ます。
しかしその事実は組織的に隠蔽され、公共事業は継続されました。
この政府による許し難い犯罪行為は、この映画に於いて最も我々の関心を引く物でした。
僅か数パーセントの権力者達のゲームの為に、その他大勢の市民の命は軽んじられている。
そしてそれは隠蔽され、誤魔化され、記憶の彼方に葬られてしまう。
こういったドキュメンタリー作品の存在意義は、
我々に「真実」を伝え、あらゆる「問題提起」を与えるその事以前に、
自分も当事者であるという「事実」を突き付ける事にあるのでは無いでしょうか?
これは全く他人事では無く、明日は我が身の凶行なのです。
おつまみの行く末
今日のおつまみは【小海老のパン粉焼き】です。
小さな海老もパン粉を付けて野菜と合わせると立派なメイン料理になります。
今回はジャガイモとマッシュルームとブラックオリーブ。
セロリの葉っぱを一緒に炒めると、独特の香りが爽やかで美味しいです。
味付けはシンプルに塩・胡椒・オリーブオイルのみ。
最後に粉チーズを振り掛けます。
世界の行く末には不安もありますが、
海老のおつまみは不動の安定感です。
民主主義の未来
画像引用: ©2018 Midwestern Films LLC 2018
この作品を観ていて一番強く感じるのは、
権力側からのマインドコントロールの恐ろしさ。
アメリカという世界有数の多民族国家に根強く蔓延する人種差別問題は、
民衆の団結を最も恐れる政府による分断へのキャンペーンによる賜物の様。
互いのコミュニティを敵視させ、本当の敵である政府に対する不満を逸らす。
白人主義、男性優位社会、マイノリティ弾圧、銃社会。
搾取され、事実を隠蔽され、差別され、銃犯罪の犠牲になり続ける
アメリカの善良な市民達には希望は無いのだろうかと思ってしまいます。
選挙の票も無視され、不正操作され、民主主義の根幹までも踏みにじられている現実。
しかし、そんな中で立ち上がる人々の姿も映画は映し出しています。
未来への微かな希望とも言える彼等の正体は、至って普通の怒れる市民達。
最低賃金で過酷な労働を強いられていた教職員達や、
差別され軽んじられてきた有色人種の労働者達や、
銃乱射事件で級友を失った学生達。
彼等はストライキを起こし、デモ行進をし、それをSNSで世界に発信します。
一人一人の小さな力も、合わされば大きな岩を砕くという事。
小さな変化は拡散され、模倣され、大きな現象となっていきます。
政府や企業や権益団体がどんな手で不正し阻害しようとも、
サイレントマジョリティーが声を上げればその声量は絶大になっていきます。
我々日本人の最も苦手な物の一つかも知れませんが、
草の根の行動以外に社会を変える事など出来ないのではないでしょうか?
世界の行く末を考えたい時に観る映画。
人間が集まれば色んな考えがあって、対立もすれば断絶も起こります。
批判も勿論あるし、情報が有り過ぎる事の弊害もあったりします。
それでも「考える」という事から離れてはいけないと思う。
自分の「意見」を持つ事は、自分らしく生きる事の大前提であると思うし、
そういった価値観の創造に於いても、この映画の様な存在は貴重であると言えるでしょう。
マイケル・ムーア監督にはまだまだ突撃し続けて欲しいと切に願います。
世界に終焉の火が自然発火する温度に達しない事を祈りつつ、
ドキュメンタリー映画好きとして、是非この作品をおススメ致します。