SF映画

映画【時計じかけのオレンジ】おつまみ【はんぺんと蟹カマのパン粉焼き】

© 1971/Renewed © 1999 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

この映画はこんな人におススメ!!

●映画の多様性を感じたい人

●天才監督の挑戦を受けたい人

●カルト映画に興味がある人

●人間の本質を考えたい人

タイトル時計じかけのオレンジ
製作国イギリス、アメリカ
公開日1972年4月29日(日本公開)
上映時間137分
監督スタンリー・キューブリック
出演マルコム・マクダウェル、ウォーレン・クラーク、
ジェームズ・マーカス、マイケル・ターン
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既成概念の外側に行きたい時に観る映画

今回は映画史に残る問題作のおススメです。

言わずと知れた20世紀最高の映画監督スタンリー・キューブリックの代表作。

この映画は暴力と社会との終わる事無き関係性を、

シニカルにそして時にコミカルに描いた風刺劇です。

近未来のロンドンを舞台に、無軌道に暴力を繰り返す非行少年アレックス。

その享楽的な破壊衝動をスタイリッシュに描いた序盤のシーンと、

彼を抑圧し政治利用しようとする社会との対比が衝撃的です。

映画公開当時はベトナム戦争の末期にあたり、

政府や役人の様な指導的立場の人種に対する反感が高まっており、

その世相を皮肉を込めて表現したとも言える作品なのでは無いでしょうか。

作品ごとに様々なアプローチの異なるジャンル映画を発表し、

徹底したディティールと新しい技術の開発に熱心だったスタンリー・キューブリック監督。

彼のフィルモグラフィの中でも最も先進的で挑戦的だったのが今作だと言えます。

今でこそ過激な世相批判や、人間の狂気に迫る映画は沢山ありますが、

この映画が与えた影響の大きさは甚大です。

見た事も無いインパクトのある映像の数々。

それは私達の既成概念を破壊し、映画の無限の可能性を示唆した、

巨匠のエネルギーに満ちた野心であると言えるでしょう。

無軌道な暴力と社会性

© 1971/Renewed © 1999 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

映画の主人公のアレックスは手の付けられない悪童ですが、

決して愚かな人間では無く、教養もあれば社会性もある青年です。

一見良家の子息の様な端正な容姿をしていながら、

突如として狂気の刃を抜く所がまた強烈なインパクトを与えるのです。

現代の日本でもモラルの破壊や無軌道な暴力に関するニュースが連日報道されています。

それまでの常識や社会規範では理解出来ない様な動機で行われる犯行。

この「理解出来ない」「分からない」という恐怖。

理不尽で不条理な破壊心理。

私達の社会にもあるこの何とも言えない不気味な恐怖の種を、

最もリアルに描いた最初の作品がこの【時計じかけのオレンジ】であると言えます。

この映画では「ナッドサッド語」というオリジナルのスラング単語が登場します。

自分達の行動や感情に対して、言葉を記号化して無感情に陥るかの様な、

意味の無い記号の連呼が彼等自身の感情をコントロールしている様にも感じます。

この映画のタイトルの「時計じかけのオレンジ」という言葉も、

イギリスのスラングらしいのですが、

一見まともな物の中身も奇妙な異質性を持っているという様な意味だそうです。

アレックスの容姿とは似付かわしくない暴力性を見事に表した言葉でもあります。

前作の【2001年宇宙の旅】でも人間の進化の歴史と皮肉な結末で

社会に大きな波紋を及ぼしたスタンリー・キューブリック監督。

人間の根源的な本能ともいうべき暴力性に大胆なアプローチをした今作でも、

観る者に最大限の動揺を与える事に成功しています。

その革新的な撮影技術と、構図のインパクト、

音楽の独特の使用法や、美術・衣装に至るまで全てが観客の心を揺さ振り続ける。

不快さ怖さを感じながらも目が離せなくなってしまう中毒性。

正に映画の魔術師の名に相応しい作品であると思います。

簡単節約レシピシリーズ

今日のおつまみは【はんぺんと蟹カマのパン粉焼き】です。

妻の創作簡単レシピシリーズの新作。

はんぺんをすり潰したものに蟹カマを細かく刻んだものを混ぜ、

塩・胡椒で味付けしてパン粉をまぶしてフライパンで焼くだけ。

簡単・節約・美味しいの三拍子揃った一品。

暑くてちょっと食欲が無いなという日でも、

軽くてついつい箸が止まらなくなってしまいます。

ビールのお供に最適。

人間とは何なのか

© 1971/Renewed © 1999 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

この映画の教訓、テーマは公開当時から語り尽くされてきました。

多くの専門家が仔細に考察し、その意味を定義しています。

しかし映画に限らず表現物は皆、傍受した人がそれぞれの価値観で判断する物ですので、

この作品は一体何だったのかという事もまた当たり前ですが千差万別です。

スタンリー・キューブリックの意図というのも勿論興味深いですが、

結局それも推論の域は出ず、またそれに拘るのも余り意味が無いのでは無いでしょうか。

物語は暴力に明け暮れた青年を社会がどう扱うかというものです。

両親は見放し、仲間は裏切り、刑務所は抑圧し、聖職者は的外れ。

そして科学が彼を矯正しようとします。

人間の「悪」を「善」に強制的に変換する生体実験。

その方法もショッキングですが、

この愚かな行為自体に人間社会の病巣の縮図が見て取れます。

問題の原因には触れず(またはそれは理解出来ないとして)、

兎に角臭い物には蓋をしろという事です。

しかし人間に強制的に「悪」に対する嫌悪感を抱かせる事は結局出来ず、

皮肉にもそれが人間に「善」という物の本質を見えなくさせるという

図式になっていきます。

「善」であるという事は実に人間にとって無理ゲーであるという証明でもあります。

既成概念の外側に行きたい時に観る映画。

今作は時の洗礼を受けても尚、全く古びれない衝撃が封じ込められています。

スタンリー・キューブリックの呪いの様なちょっと背筋が凍る様な作品です。

それでも自分の既成概念を壊してくれるようなインパクトを欲している人には、

うってつけの作品だと思います。

映画の多様性をこれ程感じさせてくれる作品もまた中々ありません。

覚悟を決めて是非一度ご自分の眼で確かめてみて下さい。