SF映画

映画【スノーピアサー】おつまみ【いなり寿司】

画像引用:IMDb

この映画はこんな人におススメ!!

●ディストピア物のSF小説が好きな人

●ポン・ジュノ監督のダークな世界観が好きな人

●ゲームの様なワクワク設定の映画が観たい人

●格差社会に物申したいという人

タイトルスノーピアサー
製作国韓国、フランス、チェコ、アメリカ
公開日2014年2月7日(日本公開)
上映時間125分
監督ポン・ジュノ
出演クリス・エヴァンス、ジェイミー・ベル、
ソン・ガンホ、ティルダ・スウィントン、
オクタヴィア・スペンサー、ジョン・ハート、エド・ハリス
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究極の格差社会を体感したい時に観る映画

今回の映画は万人受けはしないと思いますが、

その特異な設定と細部に至るまでの世界観に圧倒される作品になっています。

原作はフランスのコミックという事なのですが、

所謂世界滅亡後のディストピア社会を描いたSF作品になっています。

その設定がまた凝っていて、

温暖化に歯止めを掛けようとした結果逆に氷河期になってしまい、

生命の住む事が出来なくなってしまった近未来の地球が舞台になっています。

僅かに生き残った人類は「スノピアサー」と呼ばれる高速鉄道の中で暮らしています。

そしてそこには強烈な格差社会と管理体制が敷かれ、

先頭車両の富裕層によって、後部車両の貧困層は奴隷の様な生活を強いられています。

日常的な暴力による抑圧、簡単に命さえ奪われる様な超法規的社会に革命を起こすべく、

クリス・エヴァンス演じる主人公のカーティスが反乱を企てるという物語なのです。

2019年に【パラサイト 半地下の家族】でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを、

そして第92回アカデミーでは作品賞にも輝いた韓国のポン・ジュノ監督による、

細部にまでこだわり抜いた緻密な世界観の構築が見事です。

かなり尖った特異な設定ながら、

テーマの普遍性とアクションシーンなどのエンターテイメント性を兼ね備え、

スピーディな展開で観客をグイグイと引き込んで行きます。

正に映画的表現の手本の様な作品と言えるのではないでしょうか。

現代社会の縮図

画像引用:IMDb

日本の国会でも格差是正や賃金アップなどが叫ばれて久しいですが、

残念ながら世界的に富の格差は開く一方にあります。

世界人口の10%の富裕層が世界の富の半分以上を独占し、

50%以上の多くの人々が僅か8%程度の富を分け合っているという統計もあります。

社会構造、雇用形態、法律、税制とあらゆる事が原因で、

既得権益だけが盤石な世界である事は現実なのです。

人は「お金」を持っている事だけが「幸福」な訳ではありませんが、

理不尽な社会構造によって尊厳や人命が奪われてしまうとなればそれは話は別です。

そしてそれは今日の現実社会に実際に起きている問題なのです。

勿論、この映画には作為的誇張がふんだんにあり、

物語を盛り上げる為にあり得ない様な描写も多々あるフィクションですが、

ふと自分達の暮らす世界に似たような所がある事に気が付くと、

背筋がゾクッとなる様なリアリティも感じさせる作品になっています。

またこの映画の優れた所は、

最後部の車両から革命を目指す主人公達が一車両ごとにあらゆる敵や状況に出くわし、

それを打破していくゲームの様な観客参加型の構造を持っている点です。

次は何が起きるのかというドキドキ感と驚き、

それを一緒に乗り越えて行っている様な一体感が映画に対する没入感に繋がっています。

前の車両に行くに連れ、豪華な施設や娯楽に満ちた空間が広がり、

そこにいる富裕層の堕落した生活が格差の対比をより鮮明に描いています。

【パラサイト 半地下の家族】でもポン・ジュノ監督は「格差」をテーマにしていますが、

日本以上にエリート至上主義が蔓延する韓国社会に対する警鐘とも取れます。

いつの時代にも無くなる事の無い差別意識、

他者を排除して己の利権を守ろうとする権力階級への痛烈な批判も感じたりします。

この社会派作家としての一面も併せ持った所が、

ポン・ジュノ監督への高い評価に繋がっているのだと感じます。

手土産おつまみ

今日のおつまみは【いなり寿司】です。

またも映画の雰囲気と全く合わない平和なおつまみ。

実家の姪っ子が犬好きなので、

妻がワンちゃんいなり寿司を作って持たせてくれました。

大人用のいなり寿司にはガリを刻んで混ぜてあります。

正月らしい一品で皆、喜んでいました。

革命の先の未来

画像引用:IMDb

革命には多くの血が流れ、

甚大な破壊がもたらされました。

権力構造の是正は、また新たな権力の誕生に繋がるのが世の常ですが、

地球規模の危機の末に、人類に未来はあるのでしょうか?

人間の驕りが神の逆鱗に触れ、黙示録的な天変地異の末に、

僅かな生命が「箱舟」に乗り合わせる設定は旧約聖書の様でもあります。

SF作品とはそもそも現実社会を映す鏡の様な役割があり、

飛躍表現でより強烈に社会問題を浮き彫りにしてくれたりします。

20世紀の「革命」にはそれぞれに色んな解釈や評価があるかと思いますが、

その「革命」の先にある自由や平等というものについて、

どんな風に考えたら良いのか、映画や小説などのフィクションが喚起してくれる

思索には重要な部分があると思ったりするのです。

この物語にも一筋縄では行かない「革命」の困難、矛盾に触れられています。

そもそも絶対的な「平等」など存在するでしょうか?

考え出すと本当に難しいテーマですよね。

きっとポン・ジュノ監督はエンターテインメント作品として、

映画を楽しんでもらう一方で、自分なりの考えを持って欲しいという、

作家としての意思を持っている事と思います。

映画で描かれる僅かに希望を感じさせる結末にも、

観る者一人一人の解釈と価値観を築いていって欲しいという願いが見えるようです。

究極の格差社会を体感したい時に観る映画。

「戦争」や「革命」すらも既得権益の手段であり、

増えすぎた人口の調整とされる様な絵空事とは笑えない内容の映画です。

恐ろしいのは「正しい事」と認識されている事が、

いとも簡単に反転してしまうという現実。

「価値」は常に相対的な物で、両者それぞれの目で見れば、

違った見え方があるという事なのです。

故に「富」とは分け合ったり、奪い合ったり、

独占したり出来る物では無く、

目の前に存在していながら、それに気が付く事が難しい物なのでは無いでしょうか?

この作品には見た目以上に深いテーマがあるのだと感じました。

新年早々、天災や事故で心を痛めている方も多いと思います。

それもまた自分達が「幸せ」について考える一つの契機なのかも知れません。