画像引用:© MCMXCV by CIBY 2000 – All rights reserved.
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【アンダーグラウンド】です。
1995年制作のコメディドラマ作品。
監督は旧ユーゴスラヴィア出身のエミール・クストリッツァです。
この作品は彼にとって1985年の【パパは、出張中!】以来二度目となる、
カンヌ国際映画のパルム・ドールを受賞しています。
監督の祖国である旧ユーゴスラヴィアの悲劇的な歴史を、
強烈な皮肉を込めた喜劇として描き、
圧倒的なテンションと荒唐無稽なストーリーは、
唯一無二の世界観を見せ付けてくれます!
この映画はこんな人におススメ!!
●荒唐無稽な寓話が好きな人
●賑やかなハイテンションを堪能したい人
●東欧の戦争の歴史に興味がある人
●人間の愚かさを笑い飛ばしたい人
タイトル | アンダーグラウンド |
製作国 | フランス、ドイツ、ハンガリー、ユーゴスラヴィア、ブルガリア |
公開日 | 1996年4月20日(日本公開) |
上映時間 | 170分 |
監督 | エミール・クストリッツァ |
出演 | ミキ・マノイロヴィッチ、ラザル・リストフスキー、ミリャナ・ヤコヴィッチ、 |
最悪の悲劇を最高の喜劇で吹き飛ばしたい時に観る映画
この作品は個人的にオールタイムベスト不動の一作です。
初めて観た時の衝撃が忘れられず、
何度観ても新鮮な驚きに包まれます。
ヨーロッパの火薬庫と呼ばれたバルカン半島に位置する旧ユーゴスラヴィア。
地勢的にも各国の干渉の的となり、
数多くの民族が同じ国の中で利権を争い続ける構図が、
二つの世界大戦の中で更なる困難に巻き込まれていきます。
戦後も民族間の遺恨は燻り続け、
内戦によって多くの血が流され、
遂にはユーゴスラヴィアという国は世界地図からその名を消してしまいました。
この長い苦難の歴史を描くこの【アンダーグラウンド】という作品は、
その人類史上稀に見る悲劇を何と喜劇として笑い飛ばしてしまうのです。
第48回カンヌ国際映画祭では最高賞のパルム・ドールを受賞しますが、
今作は親セルビア主義であるとの批判を受けて賛否両論の渦中に巻き込まれます。
監督のエミール・クストリッツァはこの政治論争に嫌気が差し、
監督業からの引退を宣言してしまいます。(後に撤回・復帰)
当時はまだユーゴスラヴィア紛争の真っ只中にあり、
確かに政治的な意見が出る事は避けれない情勢ではあったのですが、
この偉大な作品の評価が捻じ曲げられる様な事はあってはならない事だと思います。
監督のエミール・クストリッツァが故国の悲劇に対して、
何を訴えたかったのかを履き違えてはなりません。
それは我々映画ファン一人一人が責任を持って評価しなければならないのです。
愛すべきアウトロー達の戦い
画像引用:© MCMXCV by CIBY 2000 – All rights reserved.
この映画は三部構成になっていて、
第一部は第二次世界大戦下のナチス占領時代のベオグラードが舞台。
第二部は戦後の冷戦時代。
第三部は更に時が経って90年代のユーゴスラヴィア紛争の時代を舞台にしています。
長い戦争の歴史に翻弄される登場人物達の、
数奇な運命がこれでもかとユーモラスに誇張され描かれています。
悲劇を喜劇として描く事で、
クストリッツァ監督は祖国に降り掛かった戦争の火の粉を、
冗談の様に愚かな行為として強烈に浮かび上がらせていくのです。
生きる為に戦い、祖国の為に戦い、愛する者の為に戦う。
彼等のエネルギーに満ちた生き様が滑稽であればある程に、
悲しみもまた深く観る者の胸に迫ってくるのです。
主人公のマルコとクロという人物は、
決して正義の為に戦う様な清廉潔白な人物ではありません。
寧ろ自分の私利私欲の為に親友を20年間も騙し続ける様な人間だったりします。
しかし人間が困難の時代を生きるという事は、
綺麗ごとで片付けられるものではないでしょう。
愛すべきアウトロー達はどうしようもない人間達ですが、
それが本来の人間の姿で、
それを批難出来る様な正義はこの世に存在しないのでは無いでしょうか?
丁度如何なる戦争も正当化出来ない様に。
映画への批判で苦渋を舐めたクストリッツァ監督は、
正に人間の一方的な価値観の押し付けに辟易したのではないでしょうか。
何よりも表現の自由に特化した作家としてはとても看過出来なかったのだと思います。
戦争とは言うまでも無く愚かな人間が作り出した最大の害悪です。
しかし正論を押し付けるだけの映画には観客の心の一番奥の部分に触れる事は出来ません。
クストリッツァ監督はその事を誰よりも理解していたのでは無いでしょうか。
食欲は無くならない
今日のおつまみは【焼き餃子】です。
キング・オブ・オツマミ!
これに勝るビールのお供は地球上に存在しません。
今日は初めて訪れる近所の餃子屋さんで買ってきた、
26個入の冷凍餃子を焼き上げました。
お店の方から渡された焼き方指南を熟読し、
いざ勇気を持ってフライパンに挑んでいったのですが、
思いの外攻め過ぎて少々焦げ付きました。
しかしこれもご愛敬、味は抜群でリピート決定のお味でした。
食欲は決して無くならない。
それでこそ人生です。
音楽は鳴りやまない
画像引用:© MCMXCV by CIBY 2000 – All rights reserved.
この映画最大の特徴は全編においてハイテンションで流れ続けるスラブ音楽です。
どんな窮地にあっても賑やかな金管楽器の音色でドンチャン騒ぎを繰り返す。
そんな彼等のDNAに刻み込まれた民族性が映画のカラーとなっているのです。
喜びも悲しみも、音楽と踊りで皆一緒になって分かち合う。
そこに民族の違いも宗教の違いも霞んでしまう様な狂騒があるからこそ、
どんな悲しみを経ても歩みを止めない人間の力強さがある。
正に音楽の力で生きている人々の姿を目の当たりにするのです。
どんなに爆弾の雨が降ろうと、列強各国の干渉に晒されようと、
鳴りやまない音楽の元にだけ、生き続ける人間達がいるのです。
その力強さこそが、クストリッツァが描きたかった物語なのです。
最悪の悲劇を最高の喜劇で吹き飛ばしたい時に観る映画。
170分の長尺は決して観やすい作品とは言えないかも知れません。
独特の描写や世界観についていけない人もいるかも知れません。
しかしこの作品は一生に一度、映画ファンであるのなら是非見て頂きたい作品なのです。
人間誰しも生きていれば、悲しい事も苦しい事も避けて通る事は出来ません。
しかしそんな時に絶望の代わりに希望を見出すには、
高尚な警句も大事かも知れませんが、
力強く笑い飛ばす事こそがエネルギーの源になるのでは無いでしょうか。
第二次世界大戦での敗戦。
その後のGHQによる統治を経験した我々日本人の中にも、
クストリッツァの様な愛国精神を持った作家達が少なからず存在しました。
それを改めて思い出させてくれる様な素晴らしい作品です。