画像引用:(c)2023 Arcadia Motion Pictures S.L., Lokiz Films A.I.E., Noodles Production SARL, Les Films du Worso SARL
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【ロボット・ドリームズ】です。
2023年に公開されたスペイン・フランス合作のアニメーション作品。
第96回アカデミー賞で長編アニメーション賞にノミネートされるなど、
世界中で高い評価を受けています。
アメリカの作家サラ・バロンが発表したグラフィックノベルを原作に、
実写映画では既にキャリアのあったスペイン人監督パブロ・ベルヘルが、
初めてのアニメーション映画の監督に挑戦しました。
擬人化された犬とロボットとの友情を描いた感動作です!
この映画はこんな人におススメ!!
●海外の漫画作品が好きな人
●友情の物語が観たい人
●丁寧で細かいアニメーションを体感したい人
●誰かの幸せを強く願っている人
タイトル | ロボット・ドリームズ |
製作国 | スペイン、フランス |
公開日 | 2024年11月8日(日本公開) |
上映時間 | 102分 |
監督 | パブロ・ベルヘル |
掛け替えのない友情を感じたい時に観る映画
年を取って涙腺が緩みっぱなしな昨今、
近所のミニシアターで没入感と共に鑑賞しまんまと感涙致しました。
素朴な質感のどこか懐かしい絵の魅力と、
台詞が無くても如実に伝わってくるキャラクター達の感情。
切なくて、美しくて、悲しくて、
もう完全にノックアウトでした。
原作はアメリカのグラフィックノベル。
これを原作に映画化したのはアニメーション初挑戦という
スペイン人監督のパブロ・ベルヘル。
擬人化された動物達が暮らすニューヨークの街並み。
彼等の生き生きとした生活描写がまた素晴らしくて、
画面中に所狭しと動き回るアニメーションに圧倒されます。
単純な線で描かれた漫画的なキャラクター達なのですが、
緻密に細部に至るまで描き込まれた世界観は見ているだけで飽きる事がありません。
3DCG全盛の時代にあって敢えて平面的なセル画の様なタッチにする事で、
柔らかな印象を与えてくれるのですが、
物語のテーマの奥深さとのギャップで二重に驚かされる事になります。
古くはベルギーの漫画家エルジェの【タンタンの冒険シリーズ】を彷彿とさせる様な作画。
そこに現代的なテーマを被せる事で意外性のある作品になっているのです。
孤独な都会生活者の物語

画像引用:(c)2023 Arcadia Motion Pictures S.L., Lokiz Films A.I.E., Noodles Production SARL, Les Films du Worso SARL
物語はニューヨーク風の都会に一人で暮らすドッグの生活描写から始まります。
暗い部屋で一人、テレビを眺めながら冷凍パックの食事を取るドッグ。
正に孤独な都会生活者である彼はテレビの通販番組で見た友達ロボットを手に入れます。
そしてドッグとロボットの楽しい日々が始まるのですが、
残酷な運命に切り裂かれ、二人は離れ離れになってしまうのです。
楽しかった日々が唐突に失われてしまうという運命。
そこに我々は嘗て自分自身の人生の中で出会ってきた、
様々な人や物との出会いと別れを重ね、強烈に感情移入していくのです。
ロボットはドッグの孤独を埋める為の道具としてやってきた訳ですが、
次第に掛け替えの無い友情を育んでいきます。
その高揚感や幸福感は何物にも代え難く、
またそれがいつまでも続くものであると信じて疑わなかった者にとっては、
喪失がもたらす落胆も筆舌に尽くし難いものです。
誰しも満たされない心の隙間というものはあるのでしょうが、
一度心を通わせた存在との別れ程苦しく切ない事もありません。
それは私達にとっては「死」というあがなう事の出来ないものを連想させます。
ロボットは離れ離れになってしまったドッグと再会する夢を何度も観ます。
フィリップ・K・ディックの有名なSF小説に
【アンドロイドは電気羊の夢を見るか?】という作品がありますが、
AI技術の革新的な発達が叫ばれる昨今、
ロボットの見る夢という何とも暗喩的なモチーフが、
現実のものになる日も近いのかも知れません。
あらゆる技術が人間の生活を便利で快適なものにする一方で、
生命の線引きが複雑になっていく事を暗示してもいるのかも知れません。
これまでの人間社会が抱えていた人種間や宗教間での齟齬も、
もっと大きなスケールで語られる事になるのでは無いでしょうか。
今作のテーマとはやや離れているかも知れませんが、
来るべき世界のメタファという側面もこの映画にはある様な気がします。
おつまみロボット

今日のおつまみは【鶏手羽元の煮物】です。
ビジュアル的にロボットの取れた足をちょっと連想しちゃいますが、
酢を効かせて煮込んだ手羽元はあっさりとしていて美味でした。
ビールやワインも良いですが、
日本酒なんかも合うおつまみですね。
未来の食卓にはロボットの作ったおつまみなんかが並んだりするのでしょうか。
中々想像出来ませんが、
美味しければ何でもいいなと少し思っちゃいました。
種を越えた友情

画像引用:(c)2023 Arcadia Motion Pictures S.L., Lokiz Films A.I.E., Noodles Production SARL, Les Films du Worso SARL
今作の世界はあらゆる種類の動物達が擬人化され社会を形成をしています。
彼等には種としての固有の習性や趣向があって、
そこにも対立や差別はやはりあるのでしょう。
主人公のドッグはどうもこの社会の中に居場所が無く、
やや周りから軽んじられている傾向にあります。
心許せる存在が無く、
それが自分自身にいまいち自信を持てない要因にもなっている様です。
そんなある日唐突にそのドッグの生活に出現したロボットという存在は、
負の均衡を打ち崩す特効薬でした。
まるで生まれたての雛の様に世界に物凄いスピードで順応していくロボットは、
ドッグから見ればスーパーヒーローの様にも映っていたのでは無いでしょうか。
彼等は対等な友達関係でそれは美しい日々でしたが、
それが悲しい出来事によって失われてしまった時、
ドッグは元の孤独な生活者に戻ってしまい中々周りと関係性を築く事が出来ません。
つまりはドッグ自身は余り変わっていなかったのですが、
それでもロボットとの楽しかった日々が忘れられない彼は必死に藻掻くのです。
そしてロボットも離れ離れになってしまった友達を忘れられないのですが、
新たな生活を手にした時、嘗ての幸せを取り戻そうとするのではなく、
それぞれの生活の中で生きていく事を選択するのです。
種を越えた友情は互いの幸せを願い離れていく事を選択するのですが、
そこに我々が経験する出会いと別れの深い情感が込められているのです。
掛け替えのない友情を感じたい時に観る映画。
この可愛らしい作画に油断していると、
とんでもない深いテーマに心をかき乱される事になります。
本当の友情とは自分の幸せよりも相手のそれを望む事。
それをあんな屈託の無い子供の絵の様なロボットに教えられるのです。
遠い未来だと思っていた現代。
ロボットが人間の友達になるという世界もすぐそこまで来ています。
技術の発展は行き過ぎる事の恐怖を連想させられたりしますが、
明るいイメージも持つ事が出来るのでは無いでしょうか。
時間を戻す事は不可能なので、
我々はこれからの時代を前向きに捉えていくしかないんだなと、
なぜかそんな事を考えてしまった作品でした。