アニメーション映画

映画【この世界の(さらにいくつもの)片隅に】おつまみ【白茄子のカルパッチョ】

画像引用:IMDb

こんにちは!ころっぷです!!

今日の映画は【この世界の(さらにいくつもの)片隅に】

戦中の広島・呉を舞台に、

何気ない日常の息遣いを丁寧に綴ったアニメーション作品です。

この映画はこんな人におススメ!!

●戦争当時の人々の生活に興味がある人

●美しい日本の風景を観たい人

●悲しい歴史から何か学びたいという人

●力強く生きる女性の姿を観たい人

タイトルこの世界の(さらにいくつもの)片隅に
製作国日本
公開日2019年12月20日
上映時間168分
監督片渕須直
出演のん、細谷佳正、小野大輔、
尾身美詞、岩井七世

この世界でひとりぼっちでないと思いたい時に観る映画

今回は【この世界の(さらにいくつもの)片隅に】をお勧め致します。

そもそも2016年にミニシアター系作品として公開された【この世界の片隅に】が、

予想を上回る評価と興行成績を記録した事により新たに40分のシーンを追加し、

更に味わい深くバージョンアップされた作品です。

戦前・戦中・戦後の広島と呉を舞台に、主人公のすずとその家族の日々の生活を

丹念に写し、その何気ない暮らしの中にある生きる喜びと悲しみが強く胸に残る、

圧倒的な感動を与えてくれる作品になっています。

声高な反戦では無く、ひたすらに真っすぐ生きる主人公すずの姿を丁寧に描く事で、

その生活に牙を向ける戦争の愚かさを、より強く観客に実感を伴って感じさせる

作りになっています。

現代社会に生きる我々にとって、戦争をリアルに想像する事は困難になっています。

ただ悲惨さを伝え聞き、恐ろしさを見せられ思考停止してしまい、

人々がどんな思いで暮らし、何を得て何を失ったのか、

自分の頭で考える事が難しくなってしまうのかも知れません。

この映画は戦争のディティールを描いた歴史作品ではありません。

一人の女性の人生に戦争が寄り添ってしまったという事実の中に、

それを遥かに超える生きる喜びと、力強さを賛美したヒューマンドラマになっています。

時代を選び生まれてくる事は不可能ですが、

どんな時代であっても人から奪えないものがあるという事を、

静かな怒りと共に作品は観客に伝えています。

時代を問わず、自然に生きるという事

この物語はこうの史代さんの漫画が原作です。

私はこうのさんの作品のファンで、他作品も含めてその殆どを蔵書しています。

こうの作品の魅力の最たるはユーモアセンスだと思います。

人生に於ける辛さや悲しみの中にも、どこかに笑ってしまえる様な可笑しみが含まれる。

さり気無い間に間に、ふと漏れ出る人間らしさの様なものが、

優しくて美しくて素晴らしいと感じます。

この映画もこうの作品の持ち味をしっかりと引き継ぎ、深い洞察と丁寧な描写で

人間の可笑しみを大胆に描いています。

そういった表面をなぞるだけでは、とても表現する事が出来ない

繊細な部分まで見事にアニメーションで表現されています。

徹底された時代考証も、独特の作画手法も、

物語の大事な芯の部分に観客の目を集中させる為の、

惜しみない努力が、実にさり気無く施されています。

作り手の熱意と真摯な姿勢が、作品に命を吹き込んでいるのです。

主人公のすずは戦争で大切なものを次々に失っていきます。

それは想像を絶する痛みです。

自分だったらどう思うかという感情移入が、苦しい程の物語です。

しかしそれでも生きて、戦後の復興に前を向いた数えきれない名もなき人々の、

一歩一歩の足音の響きが、現代の我々に勇気を与えるという事。

初見の時、映画館で涙が止まらなかったのは、そんな見ず知らずの人達の生活と

人生が胸に迫ってきてどうしようも無くなってしまったからでした。

時と共に変わるもの

今晩のおつまみは【白茄子のカルパッチョ】です。

実は小さい頃は茄子が苦手でした。

皮の「キュッ」とした食感が苦手で、大人になっても余り好んで食べませんでした。

しかし妻の手料理で生活する内に気が付くと茄子が好物になっていました。

年を取ると味覚も変わっていくのかも知れませんが、

私の苦手な食材を食べられる様に工夫してくれたおかげだと思います。

このメニューは白茄子をレンジで加熱して、

塩・胡椒とオリーブオイルで味付けしたシンプルなレシピ。

素材の味をダイレクトに味わえて、暑い夏にピッタリのさっぱりおつまみです。

食は生活の中心だと思いますが、【この世界の(さらにいくつもの)片隅に】の

中でも、様々な料理が登場します。

戦時中の心許ない配給食材を創意工夫によって滋養に変えた努力を、

ユーモラスに描写したシーンは必見です。

誰がために鐘は鳴る

画像引用:IMDb

後世、人が語るのはその戦争で何が失われたかという事です。

どれくらいの人が死に、どの街が破壊され、どれだけの人生が変わってしまったのか。

戦争に至る経緯が説明され、検証され、二度と繰り返さない様な仕組みを作ります。

しかしそれが戦争を無くす手段になるのではありません。(残念ながら)

時の経過と共に、薄れゆく記憶の中で、後悔と反省は色を無くしていきます。

映画や音楽や文学に役目があるとすれば、

そこで生きていた人の顔を伝える事で、私達の想像力を変える事かも知れません。

実感のぼやけていた数字のイメージが、途端にリアルな匂いを立て始めるからです。

今作の登場人物の様に毎日の生活を楽しく生きていたんだと、

夢や希望がそこにあり、美しいものや醜いものが当たり前にあったという事。

色んな人の他愛の無い日常の上に爆弾は落ちてきたのだと、

その事は永遠に忘れてはいけないと思います。

恨みや憎しみを吐露する為にではなく、

そこからまた新しい日常を生きていく為に。

映画は後半に進むにつれ、辛く苦しい物語になります。

悔しい思いで、胸が張り裂けそうになります。

しかし命が引き継がれ、そこにいた人達の生活を知る人がまたここにいるという事に、

確かな希望の灯りを感じる事が出来ます。