コメディ映画

映画【ブラック・クランズマン】おつまみ【炊飯器チャーシュー】

画像引用:©2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

この映画はこんな人におススメ!!

●アメリカの人種問題に興味がある人

●バディ物の刑事物語が好きな人

●ノリの良いブラックムービーが好きな人

●自分のアイデンティティについて考えたい人

タイトルブラック・クランズマン
製作国アメリカ
公開日2019年3月22日(日本公開)
上映時間135分
監督スパイク・リー
出演ジョン・デヴィッド・ワシントン、
アダム・ドライバー、ローラ・ハリアー、
トファー・グレイス、

ヘイトクライムについて考えたい時に観る映画

今作を特定のジャンルに当てはめるのは非常に困難で、

タッチとしてシニカルなユーモアセンスが多く見受けられる点と、

ヘイトクライムに渦巻くアメリカ社会がまるで悪い冗談の様でもある事から、

敢えてコメディ映画のジャンルに入れさせて貰いました。

監督は長くアメリカの黒人差別問題を訴え続けてきた、

不屈の作家スパイク・リー。

主演を務めるのは後にクリストファー・ノーラン監督の【テネット】にも主演した、

名優デンゼル・ワシントンの長男ジョン・デヴィッド・ワシントン。

この映画は1970年代のコロラド州コロラドスプリングスで、

実際にあった出来事を脚色した作品になっています。

事実は小説よりも奇なりとはよく言いますが、

一人の黒人刑事が白人至上主義団体であるKKKに潜入捜査するという、

正に奇想天外な物語。

これが実話というのだから本当に驚きです。

KKKとは1860年代にテネシー州で発足されたという秘密結社。

白い頭巾を被って松明を手にしている集団というイメージですが、

簡単に言えば白人以外の全ての有色人種を否定し、

偏った愛国精神の元、数々のヘイトクライムを行ってきた狂信的な組織です。

特に彼等が忌み嫌うのが黒人なので、

この作品のストーリーは正に奇想天外と言えるのです。

そしてアメリカ社会のみならず、

世界中で人種差別、民族紛争、宗教紛争が蔓延している昨今。

その異常性を浮き彫りにし、憎しみや差別からは何も生まれない事を訴える。

この映画は肩肘張らずに鑑賞しながらも、

深いテーマについて考える事の出来る作品になっています。

パワー・トゥー・ザ・ピープル

画像引用:©2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

物語は新人の黒人警察官ロン・ストールワースが、

差別的な警察組織の中で何とか認められたいという一心で志願した情報部署で、

偶然目にした新聞広告からKKKに潜入捜査に入るという話。

勿論、黒人が直接KKKに潜入する事は出来ないので、

実際に会合に参加するのはアダム・ドライバー演じる白人捜査官のフィリップ。

二人は電話での連絡役のロンと、潜入役のフィリップという二人一役の相棒となります。

アメリカ社会に於ける人種差別問題は、

私達日本人の想像を遥かに凌ぐ程の根の深さと複雑な背景を持っています。

互いに過激な組織が乱立し、暴力による闘争が後を絶たない歴史を持っています。

その中でも有名な白人至上主義団体のKKK。

アメリカ全土に支部を置き、その影響力は経済界や政治の世界にまで及びます。

反対に黒人達も差別に対抗する為に声を上げ続けています。

映画で主人公のロンが学生団体の集会で出会うクワメ・トゥーレという人物がいますが、

彼は過激な黒人解放運動で知られるブラックパンサー党の元幹部でした。

互いに憎しみを持ち続けながら一つ国家の中で生きる。

本当に我々日本人には想像も付かない様な困難がそこにある訳ですが、

今もあのドナルド・トランプという人種差別者が大統領であるだけに、

対岸の火事でも、過去の話でも無い訳です。

白人至上主義者達のスローガンは「パワー・トゥー・ザ・ホワイト」。

黒人解放運動者達のスローガンも勿論「パワー・トゥー・ザ・ブラック」。

力を奪い合っている訳です。

それは互いに敵を倒す「力」という意味なのでしょう。

その昔ジョン・レノンは「パワー・トゥー・ザ・ピープル」と歌いましたが、

この言葉はやはり夢想家の綺麗事に過ぎないのでしょうか?

その答え、或いは結果はまだまだ見えてはきません。

楽ちんおつまみ

今日のおつまみは【炊飯器チャーシュー】です。

映画の内容とは全く関係ありませんが、

我が家定番の作り置きおつまみの紹介です。

豚肉の塊(肩ロースでもモモ肉でもバラ肉でも何でもOK)を、

塩・コショー・ミックスハーブを塗してフライパンで焼き目を付け、

ジップロックに入れて水を張った炊飯器で保温調理するだけ。

低温でじっくりと熱が入るので肉も固くならずにジューシーに仕上がります。

これは楽ちんな上に激旨なので本当におススメです!

笑いがもたらす微かな希望

画像引用:©2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

この映画がお堅い社会派映画と一線を画すのは、

ウィットに富んだユーモアセンスにあるかと思います。

何より黒人捜査官がKKKに潜入するなんていう冗談の様なプロット。

実話で無ければちょっと考え付かない話ですよね。

この前代未聞の作戦に従事する捜査チームが、

白人も黒人もユダヤ系もごちゃ混ぜの混合ユニットというのがまた面白い。

事が辛辣で救いが無い分、

それを真面目一辺倒で描いても人の心を打つ事は出来ない。

そこに思わず笑ってしまう様な状況の妙や異様なテンションが相まって、

初めて人の興味を引きテーマを伝える事が出来るという事もあるのです。

そこの所を巧く脚本に落とし込んで、実話のダイナミズムを損なう事無く、

笑わせながら考えさせるという離れ業を見事に果たしています。

カンヌ国際映画祭に於ける審査員特別グランプリも、

アカデミー賞に於ける脚色賞も納得の素晴らしい映画制作魂を見せ付けています。

ナチズムやレイシストに対抗する為の「力」は、

彼等と同じ様な生成方法では駄目なのです。

声高に彼等の不正や悪意を訴えるだけでは伝わらない事もあるのだと思います。

つまりはどちらにも与していない大多数の中間層の興味を得るには、

笑いという「希望」が不可欠であるのです。

スパイク・リーという作家はよく「怒り」の作家だと評価されますが、

彼のフィルモグラフィを眺めれば随分と笑える映画が多いのです。

彼は実に柔軟なユーモア精神を有していて、

人を楽しませる事に多くを割いている作家です。

その上で自身のアイデンティティに関わるテーマを訴えているのです。

そういう姿勢に私達日本人も多いに学ばなければならないと感じました。

ヘイトクライムについて考えたい時に観る映画。

ネット社会に於ける激しいヘイト合戦。

互いが互いを傷付ける為の「力」ばかりを蓄える時代。

何かに対して怒りを感じたり、批判したい気持ちは重々理解出来ますが、

自分も相手と同じ事をしてしまっては何も変わりません。

考える「力」を、団結する「力」を、理解する「力」を、

何に対して使うのか。

よりスペックの高い若い世代には、

自分達の限りない「力」の行き場についてより深く考えて欲しいと切に願います。

勿論、私もあなたも。

コメディ映画のひとつまみなのに熱い論調に終始しましたが、

この作品は本当に意義深い作品なので是非観て頂きたいです。