サスペンス映画

映画【ジェシー・ジェームズの暗殺】おつまみ【揚げ茄子と鶏ササミの梅肉和え】

画像引用:TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.

この映画はこんな人におススメ!!

●西部劇が好きな人

●犯罪者達の心理に迫りたい人

●演技巧者達のアンサンブルを楽しみたい人

●一つの時代の終焉を目撃したい人

タイトルジェシー・ジェームズの暗殺
製作国アメリカ
公開日2008年1月12日(日本公開)
上映時間160分
監督アンドリュー・ドミニク
出演ブラッド・ピット、ケイシー・アフレック、
ジェレミー・レナー、サム・ロックウェル、
サム・シェパード、メアリー・ルイーズ・パーカー
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アウトロー達の悲哀を感じたい時に観る映画

西部開拓時代のアウトロー、ジェシー・ジェームズ最後の日々。

1860年代から銀行強盗などの悪事を重ね、

遂には多額の賞金首になり非業の死を遂げた実在の人物です。

現代のコンプライアンスからすれば勿論極悪非道の大悪党なのですが、

彼のバックグラウンドや時代背景を鑑みるとアメリカ国民(特に南部の人間)にとっては、

義賊の様なある種英雄視されている人物。

南北戦争に於いて義勇軍の様な形で参戦したジェシーは、

全てを奪われた南軍の反骨精神を体現するかのように、

北軍の富裕層からのみ強奪した事からアンチヒーローとして神格化されていくのです。

この西部史の伝説を演じたのがブラッド・ピット。

喜怒哀楽の激しい底意の知れぬ人物像を見事に演じ切り、

第64回ヴェネティア国際映画祭に於いて男優賞を受賞。

対する暗殺者のロバート・フォードを演じたケイシー・アフレックも、

第80回アカデミー賞に於いて助演男優賞にノミネートされました。

監督はオーストリアの秀英アンドリュー・ドミニク。

2000年公開の【チョッパー・リード 史上最凶の殺人鬼】でも

実在の犯罪者を描き高い評価を受けていた実力派の監督です。

勧善懲悪のドンパチが主流の西部劇に於いて、

登場人物の感情の機微に寄り添った丁寧な演出をし、

実際の事件の裏にある人間の心理をサスペンスフルに描写しました。

犯罪に手を染めた虚構のヒーローの、

疑心暗鬼に苛まれた晩年の姿をリアルに描いた今作は、

実力派の俳優達の見事な演技も相まって、

極上のドラマ作品に仕上がっています。

孤高のアウトロー

画像引用:TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.

物語はジェシーとフランクのジェイムズ兄弟を中心とした、

列車強盗のシーンから幕を開けます。

彼等の多くは南北戦争の敗残兵で、

不景気な南部にあって生活に困窮し賊に堕ちたという背景もあります。

残虐非道で冷徹な人物として恐れられていたジェシーですが、

一方は富める者から奪い貧しき者に与えるという様な義賊としての人気もありました。

本人は全て作り話だと一蹴しますが、

そういった美談もいくつか実しやかに伝わってはいる様です。

映画では常に本心の見えない、

何を考えているか分からない人物として周りの仲間からも恐れられているジェシー。

有名になり賞金首として追い詰められていく中、

仲間に対しても疑心暗鬼で心を開かない彼の表情には

鬼気迫るものがあります。

西部劇の強盗団のお決まりパターンとして裏切りや仲間割れがあります。

金に群がるならず者集団な訳ですから仲良し小良しという訳にはいきません。

ジェシーの苦悩は日を追う事に深くなり、

やがて嘗ての仲間にも手を掛けて行くのです。

どんなジャンルに於いても頂点を極めた者だけが持つ孤独というものがあります。

その人にしか分からない苦悩。

やるかやられるかの世界に身を置くジェシーにとっては、

一旦その猜疑心に捕らわれてしまったら振り払う事は出来なかったのでしょう。

時代も変わりアウトロー達も追い詰められていました。

裏切りを怖れての同士討ちは謂わば避けて通れない道、

孤高のアウトローを暗殺したのが、

彼の事を最も崇拝していたロバートであった事も実に皮肉な結果です。

しかし暗殺者のロバートの真意はどこにあったのか。

単純に賞金目当てだったのか?或いはジェシーに対して憎悪が芽生えたのか?

この作品の肝はそこにある様な気がするのです。

おつまみのアウトロー

今日のおつまみは【揚げ茄子と鶏ササミの梅肉和え】です。

残暑厳しいこの頃にピッタリなサッパリメニュー。

素揚げした茄子と茹でたササミを、

叩いた梅肉とみりんで和えたものです。

夏バテで食欲が落ちた時なんかに助かるレシピですね。

勿論お酒のアテにも最高の一品です。

臆病者の末路

画像引用:TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.

時代の大きな変革期、

その腕前と度胸だけでのし上がったアウトロー達の時代は終焉を迎えつつありました。

数々の伝説を残してきたジェシー・ジェームズも年を取り、

或いは自分の最後の時というものをどこかで予見していたのかも知れません。

彼が暗殺される間際に、自ら銃を置き、敢えて無防備に背を向ける姿には、

自分の死を望んでいたかの様に見えます。

その最後の引き金を、嘗ての自分を崇拝し慕っていたロバートに託し、

血に彩られた自らの人生の幕を引いたジェシーの姿は荘厳ですらありました。

暗殺者のロバートもどこかでそれを察知していた様に思います。

自らの裏切りは既にバレていて、いつ殺されてもおかしくない状況にあって、

それでもジェシーは静かに何かを待っているかの様に見える。

憧れから失望へ、尊敬から哀れみに複雑に感情が変化していく中で、

ロバートは自分こそがジェシー・ジェームズの伝説を終わらせる者であると

確信したのでは無いでしょうか。

それは「愛」にも似た畏敬の念。

互いに言葉を交わさずともどこかで理解し合っていたかの様に、

その瞬間に初めて二人は対等な立場で魂の交感を果たすのです。

アウトロー達の悲哀を感じたい時に観る映画。

アメリカという国が先住民達から奪い取った侵略者の国であるという事実。

土地に染着いた血の匂いがまだ乾かぬ様な時代の、

ある意味では何の教訓も無いちっぽけな物語と言えます。

後世の人間から見れば愚かで無意味な人生であると、

或いは残酷な人間達に似合いの末路だと思うかも知れません。

私利私欲に駆られ非人道的な行為に明け暮れた彼等に同情の余地はありませんが、

国の黎明期にあって混乱の中に必死で生きてきた彼等の姿には、

社会というものの悲しさが透けて見える様で考えさせられるものがあったりします。

犯罪者達の心理に迫るという様な作品では無いかも知れませんが、

描かれない事でそれが返って際立ってくることもあるのだなと感じました。

中々に味わい深い作品であったと思います。

派手なアクションや胸をすくカタルシスとは無縁の作品ですが、

あの時代に生きた人間達をしっかりと捉えた秀作だと思います。