ドキュメンタリー

映画【blur:To The End/ブラー:トゥー・ジ・エンド】おつまみ【ライスペーパーサンド焼き】

画像引用:© 2024 Copyright Up The Game Limited & blur

この映画はこんな人におススメ!!

●ブラーのファンの人

●イギリスの文化に興味がある人

●いつまでも変わらない友情を目撃したい人

●年老いても輝きたい人

タイトルblur:To The End/ブラー:トゥー・ジ・エンド
製作国イギリス
公開日2025年1月31日(日本公開)
上映時間104分
監督トビー・L
出演デーモン・アルバーン、グレアム・コクソン、アレックス・ジェームス、デイヴ・ロウントゥリー

終わりのその先を見たいと思った時に観る映画

1990年にシングル「シーズ・ソー・ハイ」でデビューしたブラーは、

翌年のデビューアルバム「レジャー」で早くも全英7位を獲得するなど

人気と評価を集めました。

それから世界中で大ブームを巻き起こしたブリットポップブームの

中心的存在として大ヒットアルバムを連発。

2003年のギターリスト脱退に伴う事実上の活動停止まで、

シーンの最前線を走り続けてきました。

そんな彼等も2008年頃からまた再始動し、

今作には2023年リリースの8年振りのアルバム

「ザ・バラード・オブ・ダーレン」のレコーディングの為に集まった

メンバーの様子が収録されています。

嘗ての確執を越え、

リラックスした雰囲気で始まったセッションも、

時にはピリピリとした空気に包まれながら、

それでもやはり深い絆で結ばれた美しい旋律が、

一枚のアルバムへと昇華されていく光景は実に圧巻です。

更にバンド史上最大規模の

ロンドン・ウェンブリースタジアムライブに向け、

悲鳴を上げる身体に鞭打ち事前ツアーをこなす彼等の姿に、

それだけ長い年月がいつの間にか過ぎてしまったのだと実感したりします。

映画のタイトルにもなっている「トゥー・ジ・エンド」とは、

1994年発表の大ヒットアルバム「パークライフ」に集録されていた

愛の終わりを歌った切ないラブソングのタイトルです。

嘗て崩壊してしまったバンドメンバーとしての関係性。

盛者必衰の音楽業界に於いて、

その歴史に終止符を打ったバンドが、

終わりの先のそのまた先へ行こうとしている姿が、

この映画には鮮明に記録されているのです。

成功の先にあったもの

画像引用:© 2024 Copyright Up The Game Limited & blur

あくまでもこの映画で知り得る情報のみで言えば、

ブラーの活動休止の理由も、

またその再結成の契機も今回の新しいアルバム制作の意図も

特には語られません。

語られないからこそ、それが持つ意味にずっと引き摺られていって、

逆説的に彼等の活動の正当性にもなっていく。

音楽など言ってしまえば生命を維持するのには必要不可欠ではなく、

極論贅沢嗜好品に過ぎない。

そんなものに人生を賭け、

またはそんなものを拠り所にしてしまう愚かな人間達にだけ許された、

愛すべきトリップ体験を如何に魅せてくれるのかが、

バンドの存在価値なのではないでしょうか。

成功し、莫大な富を得て、世間から神格化され、

その代償として個人の自由を失う。

神は何かを捧げなければ与えてはくれないのです。

多忙なツアーとレコーディングの

果て無い繰り返しの中で摩耗していった人間性が、

臨界点を迎える事は誰しも分かっていた事なのでしょう。

時を経て、当時の事を冷静に振り返る事が出来る様になった彼等が、

既に終わってしまったバンドをもう一度始動させて

描きたかったものとは一体何であったのか。

それを見せてくれるのがこのドキュメンタリー映画と同時公開の

ウェンブリースタジアムライブという事になるのでしょう。

実に自然体で飾らない素の部分を見せているこの映画の、

特に何も起こらない日常の中にこそ、

90年代の熱狂を生き抜いたブラーというバンドの

骨太な強さが潜められています。

互いに多くを語り合わずとも、

目配せ一つ、

些細な仕草一つで思いを共有する

家族の様な存在。

彼等のリラックスした姿には、

そんな空気感が常にあった様に思います。

終わりの先のおつまみ

今日のおつまみは【ライスペーパーサンド焼き】です。

最近のヒット作であるライスペーパーおつまみの進化系。

水に戻さずそのままのライスペーパーをフライパンに並べ、

その上にレタス、味付きの豚肉、人参のラペ、チーズを乗せ、

焼きながら半分に折りたたんでいます。

表面はカリッとしていて、

色々な食材の食感や味が濃縮されていて旨いのです。

野菜やお肉をタップリ摂れて、

挟んで焼くだけなので簡単。

ビールによくあう一皿でした。

奇跡のライブ

画像引用:© 2024 Copyright Up The Game Limited & blur

今作ではウェンブリースタジアムでのライブシーンは収録されていません。

同時公開のライブフィルムの方で余すことなく見る事が出来るからです。

今作を観た人間なら続けて【blur:Live At Wembley Stadium】を

鑑賞する事は不可避でしょうが、

それにしても8万人規模のスタジアムライブというのは尋常では無いと思います。

彼等が全盛期だったのは30年前の事で、

当時を知っているファンの多くも当然老いています。(私を含め)

しかし常に彼等の音楽は新しいファンを獲得し続け、

その楽曲はずっと聞かれ続けています。

彼等の音楽は捉えどころの無い多様性が魅力でもあります。

世界中の音楽からインスピレーションを受けた多様性。

自由でお洒落で皮肉が効いていて、

何より圧倒的に美しい。

それが彼等自身の飄々としたキャラクターに起因しているという事が、

このドキュメンタリー映画を見ていると本当によく分かるのです。

いい歳したオジサン4人が本気でふざけ合って本気で笑い合って、

そして本気で涙を流して感動し合っている。

そんな姿が奇跡的なライブの成功の原動力になっているのです。

音楽の力、人間の力、そして何より4人が集まったバンドの力。

それが8万人の観衆を熱狂させるのです。

そんな姿を見ていると年を取るのも悪く無いなぁなんて思ってしまいます。

若い頃とは違って身体は痛むし、思考は低下するしで

良い事無い様に思ってしまいがちですが、

重ねてきた時間がその表現を大きなものに、

そしてより深いものにもしてくれるのです。

あの頃のブラーには無かった魅力にも溢れています。

終わりのその先を見たいと思った時に観る映画。

私達は終わる事を目的に生きている訳ではありません。

当然、いつか終わる事は避けられませんが、

積み重ねてきた時間が「今」という瞬間をより貴重なものとして

輝かせてくれる事もあるのです。

そんな奇跡とも或いは普遍的な事とも言える事象が、

このフィルムにはさり気無い形で詰まっている様な気がします。