恋愛映画

映画【ちょっと思い出しただけ】おつまみ【カジキマグロのソテー バジルソース】

画像引用:©2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

この映画はこんな人におススメ!!

●リアルな恋愛が観たい人

●東京の夜の景色が観たい人

●ちょっと過去を思い出したい人

●ちょっとだけ前に進みたい人

タイトルちょっと思い出しただけ
製作国日本
公開日2022年2月11日
上映時間115分
監督松居大悟
出演池松壮亮、伊藤沙莉、
永瀬正敏、國村隼、尾崎世界観

ちょっと過去の感傷に浸りたい時に観る映画

人は誰しも不可逆的な時間の流れの中で生きています。

明日の為に今を生きるのが常ですが、

たまには過去の出来事をちょっと思い出す時もありますよね。

今は別れてしまった嘗ての恋人。

この作品はどこにでもいる様な人間達の、

他愛の無い日々を「ある一日」という視点で切り取った恋愛映画です。

そもそもは人気ロックバンド「クリープハイプ」の楽曲から始まったというこの作品。

ボーカルの尾崎世界観が旧知の仲だった松居大悟監督に送った、

「ナイト オン ザ プラネット」という一曲から物語を膨らませたそうです。

この楽曲はタイトル通り1991年制作のジム・ジャームッシュ監督作品、

【ナイト オン ザ プラネット】が象徴的に歌詞に出てきます。

嘗ての恋人と二人で観た大好きな映画。

それが時を経て一人で久し振りに観たら何か違っていたという切ない恋愛ソングです。

この曲の歌詞の中に「ちょっと思い出しただけ」というフレーズがあり、

それがそのままこの映画のタイトルになっています。

本編のストーリーにも大きな影響を与えたこの曲は当然主題歌となっていて、

映画のラストに絶妙なタイミングでイントロが流れ出します。

主人公の人生を共に経験した観客にとっても、

絶大な余韻を引く効果的な演出になっています。

そんなお洒落な作りになっている今作は、

コロナ過の人と人との距離感をリアルに捉えた、

時代を象徴する様な作品にもなっています。

戻れない過去をふと思い出す

画像引用:©2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

映画は主人公・佐伯照生の誕生日である7月26日の一日だけを、

2021年の現在から逆行して描いていきます。

この映画の優れた点の一つは「説明」をしないという所です。

まず観客は主人公の生活のルーティンを見せられる。

その中で部屋の様子や着ている服だったり、

職場に通う道すがらの様子や会う人との会話で、

その時だけに流れる空気感を見事に閉じ込めていくのです。

飼い猫が段々と幼くなっていったり、部屋の観葉植物が小さくなっていく事が

時間を遡っている事を暗示し、同じ7月26日の風景を敢えて同じ画角で繰り返す事で、

変わっていったものと、変わらないものとを鮮やかに対比して見せていくのです。

毎朝主人公の照生がする体操。

時を遡ると嘗ての恋人である野原葉と一緒にやっていた事が分かる。

映画の冒頭で二人はもう既に別れていて別々の生活をしている。

それが時を遡るとその関係性が辿った道が徐々に明かされていくのです。

主人公にとってはちょっと思い出しただけの記憶が、

私達観客にとっては知りたかった事の答え合わせになっていく。

この作りが本当にさり気無くて巧いのです。

もう二人が違う道を歩んでいる事を知っているからこそ、

「こうやってすれ違ってしまったんだ」とか、

「この時は明るい未来を信じていたんだ」とか、

「こうやって二人は出会ったのか」とかがリアルに感じられてくるのです。

この二人の辿った道を遡っていくという体験は、

二度と戻れない「過去」に対する私達の考え方に強い刺激を与えてくれます。

ちょっと飲みたくなっただけ

今日のおつまみは【カジキマグロのソテー バジルソース】です。

肉食の我が家ですがたまには魚も食べたいという事で、

白ワインにピッタリのメニューとなりました。

最近になって健康の為に休肝日を設けようという事になったのですが、

こんなおつまみが登場してしまっては、

「明日からね!」となってしまいます。

我が家の定点観測は常にお酒と共にある景色になってしまいますが。

まぁ、楽しく程々にであればね。

あの頃の未来

画像引用:©2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

SMAPの名曲「夜空ノムコウ」に

「あの頃の未来に僕らは立っているのかな」という歌詞があります。

嘗ての自分が思い描いていた未来と今の自分とはどう違っているのか。

或いは今の自分が変わってしまったのは何時の事だったのか。

人は不意のきっかけでそんな事をちょっと思い出したりするものです。

ダンサーを夢見てた照生は足の怪我でその道を断たれます。

タクシー運転手をしている葉は照生との未来を夢見ていました。

今現在の二人はその記憶の中の「あの頃」が、

嘗て「未来」だった今と地続きで繋がっているからこそ、

「変化」の中に微かな希望を見出して歩み続けていられる事に気が付くのです。

暗い夜空の向こうに、

嘗ての若い自分達がいて、

その時を懸命に生きてきたからこそ苦しくて、

変わっていく事にも何とか足を踏ん張ってこられたという事。

出会った頃の何かが始まるとい予感に満ちたシーンが切ないのは、

もうその恋が終わってしまったという事を知っているからだけれども、

そこからまた続く物語に希望が持てるのも、

ちょっと思い出す事の出来る過去があったからなのだろう。

ちょっと過去の感傷に浸りたい時に観る映画。

過去の感傷と旬のものは酒の肴に打ってつけ。

まさに切ない恋愛映画の手本の様な作品ですが、

描き方があざとくなくて、さり気無く、

とても爽やかな余韻に浸れる映画だと思います。

失恋したての人にはちょっとおススメ出来ないかも知れませんが、

大人になってちょっと「あの頃」をふと思い出すなんてのが、

何ともまぁキュンとするという様な人にはドハマりする映画だと思います。