画像引用:©KADOKAWA 1989
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【ファンシィダンス】です。
1989年公開の周防正行監督の劇場商業映画デビュー作品。
今や大物俳優の本木雅弘初主演映画でもあります。
チャラくて軟弱なシティーボーイ達が出家するというストーリー。
知られざる禅寺の風習も学べる抱腹絶倒のコメディです!
この映画はこんな人におススメ!!
●お寺の中の世界に興味がある人
●学生時代の様なノリを味わいたい人
●本当の自分について考えたい人
●ちゃっかり悟りを開いてしまいたい人
タイトル | ファンシィダンス |
製作国 | 日本 |
公開日 | 1989年12月23日 |
上映時間 | 101分 |
監督 | 周防正行 |
出演 | 本木雅弘、鈴木保奈美、大沢健、 田口浩正、竹中直人、彦摩呂 |
煩悩を取り払いたい時に観る映画
数ある映画の中で作り手にとって最も難しいジャンル、
それは「コメディ」では無いでしょうか。
「笑い」を生み出す事は「涙」を誘う事よりも遥かに難しい。
それは多分、人が何を面白いと感じるかが余りに多様だからだと思います。
感動的な映画を作りたいのなら、
「病気」「子供」「動物」の三種の神器と昔から決まっています。
しかし笑える映画を作りたくて「坊主」という選択肢を選ぶ辺り、
周防正行という監督の尋常では無いセンスを感じたりします。
今作は岡野玲子の漫画を原作としています。
1989年というバブル真っ只中の浮ついた世相と、
禅寺での厳しい修行風景というギャップが見事に観客を引き込んで行きます。
主演の本木雅弘は「シブがき隊」の解散直後で映画初主演。
持ち前の身体能力と思いきりの良い演技で強い印象を残しました。
監督の周防正行にとっては劇場商業映画としてデビューに当たり、
切れの良い展開と細かいネタを散りばめた演出は流石の手腕です。
知られざる禅寺の掟や風習を学べるのも非常に興味深いですし、
単純にドタバタコメディとしても楽しめる。
まだ無名時代の東京スカパラダイスオーケストラが、
バックバンドとして出演しているのも見逃せません。
日本映画界のコメディ路線の指標を作ったといっても過言では無い、
内容がギュッと詰まった抱腹絶倒の作品になっています。
閉鎖的社会に於ける煩悩との戦い

画像引用:©KADOKAWA 1989
物語は都会のシティーボーイとして、
無軌道な生活を享受していた本木雅弘演じる主人公の洋平が、
実家の寺を継ぐ為に禅寺に修行に出るというストーリー。
全く異なる世界に飛び込んだ主人公が、
数々の騒動を巻き起こしながらも徐々に成長し、
最後には仏の道に目覚めていくという成長物語なのです。
普段我々には馴染みの薄い「お寺」の生活。
そのしきたりや習慣を事細かく描写しながらも、
決して説明文の様な退屈さでは無く物語の展開の中で無理なく学べるのが、
今作の脚本の秀逸な所です。
信じられない様な窮屈で細かい「きまり」に満ちた世界。
己の煩悩を払拭する為に禁欲をする訳ですが、
人間というものはそう生半可なものでは無い。
古参僧達の目を盗んであらゆる悪事をしでかす洋平達。
その一つ一つのエピソードが兎に角面白く、
尚それによって禅道の「きまり」の意味を知る事が出来る。
周防監督の次作【シコふんじゃった】でも
知られざる相撲の世界がテーマになっていますが、
この特異な世界を面白おかしく学べるというスタンスが、
周防監督の真骨頂であると思います。
我々現代人が如何に「欲」にまみれた生活をしているのか。
そして仏門に入った僧達でさえ煩悩だらけの生活をしている事実。
正に生臭坊主という訳ですが、
世の仕組みを知っていくにつれて、
何も考えていなかったただの若者が己と向き合っていくのが
この映画の見所になっていくのです。
おつまみ禅問答

今日のおつまみは【チキンカチャトラ】です。
おつまみとは如何に!
それは酒の供であり、人生を明るく照らす光なり!
カチャトラとは如何に!
カチャトラとはイタリア料理で鶏肉や野菜類をトマトで煮込んだ家庭料理なり!
映画とは如何に!
映画とは人生の供であり、人生の師なり!
まぁ、兎に角「美味しく、楽しく」がえいがひとつまみの悟りなのです。
仏の道は問い続ける事

画像引用:©KADOKAWA 1989
映画のクライマックスは主人公の洋平が修行僧達の代表として、
禅問答に挑戦するシーンになっています。
禅問答とは修行僧が和尚に対して質問をし、
それに和尚が例え話の様な一見間接的で分かり難い様な教えを与えるという物です。
ここで大事なのが和尚は「答え」を言うのでは無く、
あくまで弟子の修行僧に自分で考える「ヒント」を与えるという所。
寧ろ「問い」には「答え」など無いという事が悟りに向かう道なのかも知れません。
仏教に限らず、長い歴史の上に語られる様々な宗教の教えには、
信じる信じないは兎も角興味深いものが沢山あったりします。
禅宗に於ける禅問答にも形式的な側面の一方、
人が生きる上で「答え」の無い「問い」を考え続ける事の必要性を感じたり出来ます。
この映画は仏教について真面目に学ぶ様な映画では無いので安心して欲しいのですが、
どんな学問であっても、仕事でも、趣味であっても、
何かを追求するという事に関してヒントになる様な要素がある気がします。
勿論、ただただ観ていて笑えて楽しい映画なのですが、
意外に深い内容なのだという事です。
煩悩を取り払いたい時に観る映画。
お釈迦様は最も恐ろしい物は人間の執着であると説きました。
執着があるから人の物まで欲しくなる。だから戦争も無くならない。
執着を捨てる事は並大抵ではありません。(断捨離などと軽く言ってしまいますが)
人からこう見られたいとか、モテたい、尊敬されたいというのは誰にもありますよね。
映画を通して自分だったらどうするだろうかと考える事も、
禅の道に案外通ずるのでは無いかと思ったりもします。
でも執着を捨てる事も、何も考えない「無」の境地も遠き道ですよね。
それよりも抱腹絶倒のコメディに「馬鹿だなぁ」とあほ面で観ている方が、
えいがひとつまみらしい「道」の様な気がしました。
これからも煩悩にまみれて映画を観ていきたいと思います。