アニメーション映画

映画【かぐや姫の物語】おつまみ【アスパラ・エッグ】

画像引用:IMDb

こんにちは!ころっぷです!!

今日の映画は【かぐや姫の物語】です。

日本が誇るアニメーション監督、高畑勲監督の遺作。

気の遠くなる様な時間と、規格外の技術の結晶が紡ぐ至極の物語。

語り継ぐべき圧倒的な傑作映画です。

この映画はこんな人におススメ!!

●日本の古典に興味がある人

●アニメーションの一つの到達点を観たい人

●死の意味を考えたい人

●生きる事の意味も考えたい人

タイトルかぐや姫の物語
製作国日本
公開日2013年11月23日
上映時間137分
監督高畑勲
出演朝倉あき、高良健吾、地井武男、
宮本信子、田畑智子、高畑淳子
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この世界は生きるに値すると思いたい時に観る映画

今回はえいがひとつまみ初のスタジオジブリ作品です。

数々の傑作アニメーション作品を世に放ち、

絶大な影響を与え続ける存在だけに、容易に手は出せませんでした。

しかし、この【かぐや姫の物語】は巨匠・高畑勲監督の遺作であり、

次世代に語り継ぐべき傑作であるので、勇気を振り絞って筆を手にしました。

(冒頭から言い訳がましいですが)

この映画は凡そ子供向けのアニメーション映画ではありません。

それこそ月とスッポンと言える程の差があります。

この物語は実に辛辣で、切なく、救いの無い絶望と無常を感じずにはおれません。

が、それでもこの世界は生きるに値するものであるという、

肯定感に満ちた作品であるとも言えます。

その強烈なメッセージを世に残した高畑監督と、

アニメーション界を牽引するクリエイター達の熱い想いが、

全編に至り画面にみなぎっています。

圧倒的な表現力のアニメーション。

人間の手書きの線の持つ力強さと繊細さが、

キャラクター達の感情をありありと描写しています。

意外にも今回初タッグの久石穣の魂のこもった劇伴。

名優達の素晴らしい演技。

一瞬たりとも見逃せない技術と情熱の結晶が、

巨匠の14年振りの作品を鮮やかに彩っています。

類まれなネガティブストーリー

画像引用:IMDb

凡そ1000年以上前に書かれた日本最古の物語とされる「竹取物語」。

奇想天外な発想に、当時の風習や文化を見事に写し取り、

ハラハラドキドキさせるエンターテイメント性と鋭い社会批判を併せ持つ。

時を経てもその物語は深い考察と関心を集め人々に愛され続けています。

誰もが知っている物語に新たな切り口で挑んだ今作は、

日本人が忘れかけていた美徳に訴え、その人生観に強い影響を与えてくれます。

愛する故郷と親しい友の元を離れ、慣れない都で籠の中の鳥となるかぐや姫。

ただ自らの美しさのみを求められ、浅はかで強欲な人間達に追い回され、

心を閉ざしていくかぐや姫には、更に残酷な宿命への道が待っています。

これ程に辛辣で無常な物語もちょっと無いなという展開です。

この類まれなネガティブストーリーを現代に蘇らせて、

高畑監督は何を伝えたかったのでしょうか?

黄泉の国の暗喩とも取れる「月」に帰らねばならないかぐや姫。

この世での生活を終え、安寧たる「死」に向かうその心境の切実さ。

醜く、耐え難い苦しみを伴う「生」からの解放でもあるかぐや姫の宿命。

目も伏せたくなる様な世界を前に、それでもかぐや姫は残りたいと懇願します。

美しい草木、花々に鳥、虫、獣。

記憶と心を失い、ただ安寧を享受する「あの世」よりも、

四季移ろい、儚い生命を蝋燭の灯の様に継いでいく人間の営みに美しさを感じ、

限りある生命に価値を見出したかぐや姫の訴えが胸を打ちます。

こんなにも愚かな人間達が、こんなにも豊かな心を持っているという事。

だからこの世界はまだ生きるに値するという静かなメッセージ。

高畑監督が「竹取物語」に材を取った理由はこの辺りにある様な気がします。

瞬く間の様な人の一生に於いて、自由に野原を駆ける様な瞬間の素晴らしさと尊さ。

その記憶と共にまた輪廻しこの世に帰ってくるという物語。

子供向けの御伽噺とはまた違った、

深い死生観と宗教観を感じずにはいられない作品になっています。

月見アスパラ

今日のおつまみは【アスパラ・エッグ】です。

よくポーチドエッグを乗せるレシピがありますが、

今回は柔らかめに焼いた目玉焼きで代用しています。

こんがりとソテーしたアスパラガスに卵の黄身を絡ませ食べると、

本当に絶品です。

究極シンプルな簡単おつまみですが、

どんなお酒にも合う優秀な一品です。

月は見ている

画像引用:IMDb

高畑監督の制作意図に、謎に包まれたかぐや姫というキャラクターに、

新たな解釈を与え、感情移入させるというものがあったそうです。

何の為に地球に来て、何のために月に帰っていくかという永遠の命題には、

答えが必要なのでは無く、考え続けるプロセスが必要だったのではないでしょうか。

そもそも生死自体に意味は無く、限られた時間の中で何をするかが重要であるという、

監督の深いメッセージが我々を映画に惹きつけてくれている様です。

現代人が忘れてしまった豊かな生活の手ごたえを美しい作画で表現し、

笑いと涙で彩ったエンターテインメント作品として観客を楽しませる。

日本のアニメーション界を切り開いてきた偉大なるパイオニアの遺作は、

何度観ても新たな発見と感動がある懐の深い作品になっています。

観る人それぞれに解釈があり、

全てが正しい答えだと思います。

寧ろ無限に解釈の仕方があり、語り継ぐべき命題を与えられて四苦八苦する我々を、

「月」から見て静かに笑っている高畑監督の顔が見える様です。

この世界は生きるに値すると思いたい時に観る映画。

映画冒頭のかぐや姫の幼少期の農村の風景。

そして美しい草花に目を輝かせるシーンが全てを物語っています。

どんなに酷い状況でも、世界は生きるに値するという強い思い。

高畑監督が気の遠くなる様な歳月を掛けて残したこの作品を、

これからまた何度も観返してその時なりの問いと答えに想いを馳せたいと思います。