画像引用:IMDb
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【マグノリア】です。
天才ポール・トーマス・アンダーソン監督の出世作。
心に傷を持った人間達の長い一日を描いた群像劇。
滑稽さの中に力強い人生賛歌が滲む傑作ドラマです。
この映画はこんな人におススメ!!
●辛辣な人生の教訓に触れたい人
●群像劇が好きな人
●曲者俳優達の競演に興味がある人
●人生の偶然性に身を任せたい人
タイトル | マグノリア |
製作国 | アメリカ |
公開日 | 2000年2月20日(日本公開) |
上映時間 | 188分 |
監督 | ポール・トーマス・アンダーソン |
出演 | トム・クルーズ、ジュリアン・ムーア、 フィリップ・シーモア・ホフマン、 ウィリアム・H・メイシー、ジョン・C・ライリー |
偶然が支配する人生を楽しみたい時に観る映画
今回はとても不思議な映画です。
そして賛否別れるクセの強い作品だと思います。
世界三大映画祭(カンヌ・ヴェネツィア・ベルリン)の全てで監督賞を受賞し、
現代映画界の最高峰監督であるポール・トーマス・アンダーソン監督。
人生の悲喜劇性を圧倒的な熱量で描いた今作は、
監督のフィルモグラフィの中でも際立って異質な物語だと思います。
映画の冒頭で紹介される、人生に時折起こり得る天文学的な確率の偶然。
皮肉な神の悪戯は、我々の人生にパンチの効いたエッセンスを加えます。
その偶然に何の意味があるのか?
この映画では一見何の関連も無さそうな登場人物達が、
運命の糸に手繰り寄せられる様に互いの人生に影響を与え合います。
様々な職業の様々な境遇の人達。
彼らはその人生に恐怖や不満を感じ、後悔と不安を抱えて生きています。
どんな人生にも失敗はありますし、
誰だって人に言えない秘密やコンプレックスを持っています。
心の何処かに開いた大きな空洞。
日々の生活の中で次第にその穴を大きくしてきてしまった人達なのです。
人生は後戻りする事は出来ません。
とにかく今日という日を生き抜かなくてはなりません。
彼等の偶然に支配された長い一日が始まります。
ここに退屈であり、最高にスリリングな私達の物語が始まるのです。
現実と虚構の曖昧性
映画の舞台はロサンゼルスの郊外。
冒頭、リレー形式で登場人物それぞれの生活を垣間見せるシーンが実に見事です。
都市生活者の忙しい日常とその状況がスマートに説明されていきます。
音楽の使い方も秀逸で、全編に渡ってエイミー・マンの楽曲が流れますが、
そもそもこの映画の発想の起源は彼女の楽曲からだという事です。
劇中で登場人物達にリレーで歌わせる奇抜な演出がありますが、
リアリティとフィクショナリティとの境目を曖昧にし、
時に軽やかに飛び越えてみせる大胆さが、この映画の真骨頂と言えます。
脚本に自身の生い立ちやエピソードを入れ込んだというアンダーソン監督。
皮肉なブラックユーモアの中に、ドキッとする様なエモーショナルな
表現が垣間見えるのも、監督自身の思い入れの深さを感じます。
これ程に複雑で面妖なエピソードをごった煮にすれば、
バランスが取れずに破綻しそうなものですが、
激しい揺れを感じながらも、強固な脚本が強烈に引き込んでいくので、
否が応でも感情移入していってしまうのです。
人生の落とし穴にハマっていく登場人物達。
我々もその穴の淵からこの映画を観ているのです。
この現実とスクリーンの虚構との間には、
もはや明確な線引きなど無い状態に陥っているのです。
おつまみの境界線
今日のおつまみは【カレーライス】です。
えっ!カレーライスがおつまみ!?
確かに。これはお酒のお供には些か重たい。
お腹いっぱいのお食事ですよね。
でも、お酒を飲みながらカレーライスを食べる事も中々乙なものです。
お食事とおつまみの境界線も今日は曖昧に。
スパイスの刺激を冷たいハイボールで爽やかに流し込む。
えいがひとつまみに常識は通用しません。
常に新しい可能性を模索し続けます。
(そんな大層な話では無いですが)
偶然のどんでん返し
画像引用:IMDb
人生は基本的に辛辣なものです。
何時も楽しくって仕様がないという人は取り敢えず置いといて、
不安や孤独感がフルボリュームで胸を満たせば、
いつかその入れ物ごと壊れてしまいます。
誇張で無しに、我々の人生は常にその危険と隣り合わせだと言わざるを得ません。
映画の登場人物達は偶然にも、
同じ日同じタイミングでその危険な臨界点に達します。
どうにもならない状況。
それは「死」であったり、「老い」であったり、「貧困」であったり、
「満たされない愛」「孤独」「トラウマ」「欺瞞」なんてものもあります。
傍から見れば何てこと無い様に見える事も、本人には生き死にに関わる重要事です。
万策尽きた。
そんな人生最大のピンチの正にその瞬間に、街に奇跡が起こります。
全く予想外の賽の目。偶然の悪戯。
それは開いた口が塞がらない様な、呆気に取られる光景です。
人生最大のピンチを思わず棚上げにせざるを得ない。
この映画史上、稀に見る最高で最低な力業に、
茫然自失状態でエンドロールを迎える事になります。
きっと怒りだす人もいるでしょう。
賛否両論な訳です。
しかしここに映画本来の虚構としての醍醐味。
現実には起こり得ない事を起こして、
人生をひっくり返すパワーを体現出来るのです。
それは暴力的とも言えるパワーですが、
人を救い得る力でもあるのです。
例えとして適切では無いかも知れませんが、
激しい口論の最中の些細な言い間違いに思わず吹き出してしまう様な。
力が不意に抜けて、それまでの怒りやわだかまりが消えてしまう事って
無いでしょうか?
雨降って地固まると言いますが、
予期せぬ事態により、臨界点の霧が晴れる。
個人的にはこの映画の強引な手法には、
笑って拍手を送りたい気持ちになりました。
偶然が支配する人生を楽しみたい時に観る映画。
そもそも映画は絵空事です。
真剣にふざけた作品は思いっきり楽しんだ方がお得だと思います。