コメディ映画

映画【ミッドナイト・イン・パリ】おつまみ【柿フライ】

画像引用:Mediaproduccion, S.L.U., Versatil Cinema, S.L.and Gravier Productions, Inc.

この映画はこんな人におススメ!!

●美しいパリの街並が見たい人

●芸術家に興味がある人

●諦めたくない夢がある人

●過去から何かを学びたい人

タイトルミッドナイト・イン・パリ
製作国アメリカ、スペイン
公開日2012年5月26日(日本公開)
上映時間94分
監督ウディ・アレン
出演オーウェン・ウィルソン、レイチェル・マクアダムス、マリオン・コティヤール、

キャシー・ベイツ、エイドリアン・ブロディ

憧れの時代に生きてみたいと思った時の映画

今回は誰しも一度は空想した事がある様な夢物語のおススメです。

「もし自分があの時代に生きていたのなら」

懐かしい昭和レトロのあの頃でしょうか。

あるいは幕末の緊迫感満点の京都でしょうか。

はたまたゴールドラッシュに沸く開拓時代のアメリカなんてのも。

いやいや世界中の海に夢を馳せた大航海時代も捨て難い。

挙げればキリが無いですが、

それが映画の世界では叶ってしまうのです。

時は1920年代のフランスはパリ。

ヘミングウェイやピカソなど、

世界中の芸術家達が集まった華やかなエコール・ド・パリの時代。

憧れの作家や画家が夜な夜な集まるパーティーなど、

考えただけでワクワクしてしまうシュチュエーションですよね。

ウディ・アレンの軽妙洒脱な台詞回しがパリの街並みにまたピッタリとハマっています。

まるで彼の分身の様なナイーブで理屈っぽい主人公にオーウェン・ウィルソン。

やや軽薄でドライな性格の婚約者役にレイチェル・マクアダムス。

そしてエコール・ド・パリの時代に出会う情熱的な美女役にマリオン・コティヤール。

いつもながらの豪華キャストにテンポの良い演出が冴え、

ウディ・アレン監督作品の中で最も興行成績を挙げた作品になったそうです。

正に映画の魔法の力で観客に夢を見せてくれる様な作品になっています。

理想の世界

画像引用:Mediaproduccion, S.L.U., Versatil Cinema, S.L.and Gravier Productions, Inc.

この物語は理想と現実のファンタジックな融解を描いています。

小説家志望でありながら本望では無い脚本で食べている主人公のギル。

そんな彼に対して何かと軽んじる様な態度を見せる結婚予定の恋人イネス。

2人はイネスの裕福な両親の旅行に便乗する形でパリを訪れます。

町全体が芸術作品の様なパリに並々ならぬ憧れを持つギルとは裏腹に、

イネスはマリブに住む事を夢見る現実主義でパリピな性格。

決して想い合っていない訳では無いのですが、

重要な所で価値観が全く合わない2人。

夢想家のギルにとって理想と現実には大きな乖離がある様です。

ウディ・アレン作品の主人公は決して恵まれない境遇でもないのに、

己を嘆き被害者染みた憂鬱を辺り構わずひけらかす傾向にありますが、

今作の主人公ギルにもやや子供っぽい理想論に突っ走る所が見られます。

しかし基本的には害のない気の良い善人なので、

真夜中のパリは不思議な魔法によって彼に夢を見せてくれるのです。

憧れの芸術家達のいる1920年代のパリにタイムスリップし、

更に自分とピッタリと気の合う美女と惹かれ合う中にまでなるのです。

正に有頂天のギル。

現実世界との余りのギャップに彼は自分の世界を捨て去る事すら胸に過ります。

これは無理もないかも知れませんね。

現在の自分の不遇が時代と合ってない所為だと感じる事は誰しもあるでしょう。

もしもあのエコール・ド・パリの時代に自分が生きていたら。

自分の小説も理解してくれる人がいるかも知れないと感じるでしょう。

恋人の不理解も、その両親の不寛容も、

周りの人間との齟齬も、仕事への不満も。

全て時代や環境の所為だと逃げたくなる気持ち。

ましてや自分を受け入れてくれる時代が目の前で手を振ってくれているとしたら。

これは中々究極の理想と現実の問題ですよね。

意外な組み合わせの魔法

今日のおつまみは【柿フライ】です。

牡蠣の誤字では無く柿です。

これが吃驚の美味しさなんです。

柿に衣を付けて油でカラッと揚げるだけ。

加熱されたフルーツの甘味が増してトロっとしていて最高に美味。

ソースを垂らしてサクッとした衣を一口齧れば、

白ワインにピッタリのおつまみになっています。

これ本当にハマります。

現実を受け入れる

画像引用:Mediaproduccion, S.L.U., Versatil Cinema, S.L.and Gravier Productions, Inc.

藤子・F・不二雄先生の国民的作品「ドラえもん」のひみつ道具の中に、

「もしもボックス」というものがあります。

電話ボックスの中で受話器に向かって、

「もしも~の世界だったら」と唱えると本当にその世界になってしまうというもの。

これは一種のパラレルワールド発生装置の様なもので、

現実世界とは違う次元の平行世界に移動出来ると解釈も出来ます。

この【ミッドナイト・イン・パリ】という作品におけるタイムスリップも、

この「もしもボックス」の魔法の様に、

一見自分の希望を叶えてくれる奇跡に感じられますが、

平行世界の自分自身はあくまで自分のままで、

周りが変わっても自分は変わらないという現実を突き付けます。

どんな時代であっても、

それが例え自分の理想や憧れであっても、

そこで何を考え何を成すかはやはり自分でしか無く、

実体の無いパラドックスを追う事よりも、

現実の中で些細な価値観を見出す事にこそ意味があるのでは無いでしょうか。

ギルは煌びやかな1920年代の芸術家達の影に埋まる事よりも、

現実の世界で自分を理解してくれる存在に希望を感じる事が出来たのです。

それもまたパリという街がギルに捧げてくれた、

細やかながらも奇跡の様な魔法でした。

憧れの時代に生きてみたいと思った時の映画。

人は誰しも理想と現実の板挟みの中で苦悶します。

それは人が自分の存在に対して

常に夢見るような向上心がある故の悩みとも言えるでしょう。

幸せな悩みと言えなくも無いのです。

まず自分が恵まれていたという事に気付けたら、

それに感謝して自分に出来る事をやっていくだけだと思います。

ウディ・アレンの至極のロマンティックコメディを前にして、

まさかの正論に落ち着いた今回のえいがひとつまみ。

それは兎も角パリの美しい風景が本当に素晴らしい作品なので、

旅行気分で観てみるのもおススメの映画になっています!!