コメディ映画

映画【マイレージ・マイライフ】おつまみ【豚肉とキャベツのトマト炒め】

画像引用:© 2014DW STUDIOS L.L.C. and COLD SPRING PICTURES. All Rights Reserved.

この映画はこんな人におススメ!!

●映画で旅行気分を味わいたい人

●仕事一筋を地で行く人

●中年クライシス気味な人

●人生の意味を改めて考えたい人

タイトルマイレージ・マイライフ
製作国アメリカ
公開日2010年3月20日(日本公開)
上映時間109分
監督ジェイソン・ライトマン
出演ジョージ・クルーニー、ヴェラ・ファーミガ、アナ・ケンドリック

ふとこのままで良いのだろうかと思った時に観る映画

この映画の主人公は人も羨む成功者としてのステイタスと自由を手している。

そして演じるのはハリウッドきってのイケオジ俳優ジョージ・クルーニー。

洗練されたスタイルで颯爽と全米を飛び回るビジネスマン。

小型のキャリーバックを軽快に操り、

エアターミナルを縦横無尽に駆ける。

特別な乗客のみに許されたラグジュアリーな空の旅。

搭乗口の混雑を尻目に優先的にチェックインするそのスマートな姿が、

しっくりときて嫌味で無いのはジョージ・クルーニーの品格の為す所か。

この映画冒頭の主人公の境遇と性格を端的に描写するシーンからして既に、

今作の優れた脚本と演出の力を堪能出来る。

兎に角台詞にもモノローグにも全てのカットに無駄が無い。

小気味良いテンポのカット割り。

計算され尽くした見事な画面構図。

まるで熟練のスポーツ選手のプレーを観ている様な感覚になる、

この冒頭シーンにして既に我々の心はがっちりと掴まれてしまう。

兎に角カット割りが速い。

しかしそれが見づらかったり不快であったりしない。

見事過ぎて見惚れてしまう程だ。

監督のジェイソン・ライトマンは、

【ゴーストバスターズ】シリーズの監督として知られる

アイヴァン・ライトマン監督の息子。

2007年公開の【JUNO/ジュノ】で高い評価を受けた彼が、

今作の後に【ゴーストバスターズ/アフターライフ】を監督した事は感慨深い。

第67回ゴールデングローブ賞では脚本賞を受賞し、

第82回アカデミー賞でも脚色賞や監督賞にノミネートされた。

十五年以上の時を経た今観ても、

人生の意味を問う普遍的なテーマが響く見事な脚本だ。

人生の六合目に差し掛かる様な、

中年世代各位にグッサリと刺さる様なユーモアと感動に満ちた一作なのです。

ミニマリストの転機

画像引用:© 2014DW STUDIOS L.L.C. and COLD SPRING PICTURES. All Rights Reserved.

物語の主人公・ライアン・ビンガム(ジョージ・クルーニー)は、

人員削減を専門に扱う人事コンサルティング会社の腕利き社員。

年間300日以上を出張に費やし、

全国各地の依頼先の会社に赴いてリストラの宣告をして回っている。

さぞかしストレスフルで疲弊し切っているかと思いきや、

彼は嬉々としてその生活を堪能しているのだ。

人生の目標は1000万マイル貯める事。

そして結婚や子供を持つ煩わしさを回避し、

自由気ままな人生を謳歌する事なのだ。

余計な物を持たない事、常に身軽である事が信条。

中々に奇天烈なミニマリストである。

確かに日常の些事に振り回される事無く、

家庭や人間関係の煩わしさとも無縁な彼には誰もが羨む様な「自由」がある。

しっかりと稼ぎ、適当に遊び、互いに後腐れの無い様な相手との交際を楽しむ。

そこには完璧な均衡と充実がある様に一見思える。

しかし彼のキャリアにも遂に転機が訪れるのだ。

それが優秀な若い新人女性社員によって提唱された

リストラ宣告をリモート化する事に依るコスト削減案であったのだ。

これによってライアンのライフスタイルである出張生活が不要になってしまう。

究極のミニマリストだと自負していたライアン自身が、

業態のスリム化によって不要になってしまうかも知れないという皮肉。

無駄を削るという意味で言えば加害側だった存在が、

被害を被るという逆転劇なのです。

更に彼はこの新人社員の研修を兼ねた出張の日々に於いて、

それまで疑問に思わなかった自分の生き方にも一抹の不安が兆す事になる。

「本当にこのままこの生き方で良いのだろうか」という疑問。

それがそれまでの彼では考えられなかった様な、

様々な執着を喚起させていくのです。

気軽な関係しか持ってこなかったライアンが、

いつの間にか本気の恋に目覚めてしまうのです。

おつまみはミニマムに

今日のおつまみは【豚肉とキャベツのトマト炒め】です。

ミニマリズムが信条の映画の主人公になぞった訳ではありませんが、

おつまみはシンプルな物に限ります。

豚こま肉とキャベツを弱火で蒸す様にフライパンに蓋をして焼き、

トマトピューレとコンソメで優しく味付け。

ふわっとした食感を残しつつ、

満足感のある一皿になりました。

年間300日出張する様な激務の毎日ではありませんが、

晩酌にはパッと作れて直ぐに巧い!というおつまみが良いですよね。

余計な荷物の中にこそ人生がある

画像引用:© 2014DW STUDIOS L.L.C. and COLD SPRING PICTURES. All Rights Reserved.

人生から不必要な物を徹底的に排除したら一体何が残るでしょうか?

本人がそれを幸せと呼べるのであれば、

確かに家族も住まいも友人も必要無いのかも知れません。

自由に使えるお金と、一人の時間と、適任の仕事がある。

寂しさを埋める物も望むだけ手に入る。

そしてそれらを所有する事無く、身の回りは常に整然としている。

それは一つの理想的な生き方なのかも知れません。

しかし完璧な人生に完璧な幸せがあるとも限りません。

失敗や挫折の中に、

誰かの所為で背負わなければならなくなった余計な荷物の中に、

自分の本当に望んでいたものが隠れているという事もあるかも知れません。

全試合先発ピッチャーが完封し、

バンドとスクイズだけで取った一点だけでシーズンを制覇しても嬉しくありません。

抜きつ差されつの泥臭い攻防の末の大逆転。

或いは善戦の末の悔しい逆転負けがあるから野球は面白いのです。

ライアンは自分でも思っていなかった「恋に落ちる」という無駄な作業によって、

不要な心配と挫折を抱える事になります。

それは痛みを伴い、実質的な損失をも抱えます。

しかしそれが彼の人生を大きく変えるのです。

かつて人生の成功の秘訣は

バックパックから不要な物を排除する事だと説いていた彼が、

理屈では説明の付かない非合理な心のバグ的作用によって恋に落ち、

そして失恋し自らの考えを改める。

他人の生活を壊す仕事で溜まっていったマイレージを、

妹夫婦のハネムーンの為に譲り、

かつての生意気な新人女性社員の再就職の為に推薦状を書き、

他人にコミットする事で増え続ける不必要な荷物によって、

「生き甲斐」をアップデートする事が出来たのです。

ふとこのままで良いのだろうかと思った時に観る映画。

会社が嘗ての業態に再び戻り、

また全国を飛び回る出張の日々が再会されるというその時に、

空港の行き先案内板の前で静かに佇み、

固く握っていたキャリーバッグの把手からそっと離された手が何を意味するのか。

彼の本当の旅がそこから始まるのだという予感の中に、

我々自身の人生を照らし出してくれる豊かな余韻を感じます。

正に人生は旅であると感じさせてくれるクレバーな作品です。