画像引用:IMDb
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【家族ゲーム】です。
1983年公開の森田芳光監督作品。
主演はアクションスターとして絶大な人気を誇っていた松田優作。
80年代の社会世相を皮肉たっぷりに一刀両断した、
日本映画史上屈指の報復絶倒コメディ映画です。
この映画はこんな人におススメ!!
●皮肉が効いた映画が観たい人
●不条理なユーモアに触れたい人
●80年代の空気を感じたい人
●徹底的な家庭崩壊を観たい人
タイトル | 家族ゲーム |
製作国 | 日本 |
公開日 | 1983年6月4日 |
上映時間 | 106分 |
監督 | 森田芳光 |
出演 | 松田優作、宮川一朗太、 伊丹十三、由紀さおり、 |
80年代の空気を感じたい時に観る映画
今回は日本映画史に圧倒的なインパクトを残した作品のおススメです。
1981年に【の・ようなもの】で商業映画デビューした、
森田芳光監督の代表作にして80年代日本映画を象徴する傑作コメディ。
所謂、核家族化が社会現象として話題になっていた時代の、
家族の価値観の転換と、生活スタイルの変化を鋭く評した社会派映画でもあります。
偏差値教育の行き過ぎた加熱振り。
家族間の没コミュニケーション。
新たな価値観の台頭で巻き起こる世代間の軋轢。
時代が大きく変わろうとしていた80年代の社会が抱える問題点を、
一つの家族の姿に投影し、ユーモアと共に薄ら恐ろしいテーゼとして表現した、
今日までも古びれる事の無い説得力を持った作品です。
70年代から【太陽にほえろ!】などのテレビドラマで
アクション俳優として絶大な人気を誇っていた松田優作の、
それまでのイメージを払拭するかの様な、
不気味で謎に満ちたキャラクター造形も見所の一つです。
同じ屋根の下に暮らす家族でありながら、
理解し合う事の困難な家族の姿が、実にリアルで滑稽でもあります。
恐怖すら感じる滑稽さ
![](https://eigahitotsumami.com/wp-content/uploads/2023/09/f0169598_13340721.jpg)
画像引用:IMDb
物語はある家族の元に1人の家庭教師が訪れる事から始まります。
80年代当時は偏差値教育の加熱により受験戦争が社会問題として騒がれていた時代。
この家族の次男・茂之も高校受験を控え、悲惨な成績を何とかしようと
松田優作演じる家庭教師の吉本が雇われるのです。
映画冒頭の吉本が船に乗って家族の住むマンモス団地にやってくるシーンは、
何か不吉な予兆を感じる様な不気味な雰囲気があって、
その後の家族の徹底的な崩壊を予見させる見事な演出です。
伝統的な家長制度や封建的な価値観が崩れ、
家族の形も大きく変化しようとしていた80年代当時の、
どこか鬱屈とした閉塞感がこの家族の空気に現れています。
幼児性が抜けない父親は家庭の責任を全て妻に擦り付け、
その妻は子供達を甘やかし家庭に収まる事に退屈し、
長男は従順さを演じながら将来に何の希望も見出せず、
次男は受験とイジメによりひねくれた問題児になっている。
そんな歪な家族の姿を見事に象徴しているのが、
横一列に並んで食事をする有名なシーンなのです。
コミカルでありシニカルでもありながら、
人間の深い暗部に注視さぜるを得ない鋭い演出の数々に、
観客は苦笑いを顔に貼り付かせたまま、不穏な恐怖を感じるのです。
森田監督の鋭い社会批判や問題提起が、
抱腹絶倒のコミカルな演出の影に見え隠れしています。
作家の自由な表現を尊重し、大手制作会社と一線を画した映画制作を
展開していたATG(日本アートシアターギルド)。
この作品も数々の傑作に並び劣らない強烈な作家性が滲み出ています。
レトルトの豪華アレンジ
![](https://eigahitotsumami.com/wp-content/uploads/2023/09/IMG20230910132412-1024x768.jpg)
今日のおつまみは【海老のココナッツカレー】です。
これは我々の大好きな無印良品のカレーシリーズの一つです。
海老の旨味とレモンの酸味が絶妙な一品。
茄子とカボチャの素揚げや、茹で卵、人参のラペと海老をマシマシして、
豪華な一皿になりました。
おつまみと言うよりは食事ですが、
程よい辛味とスパイスの香りがビールと良く合います。
レトルト食品もちょっとひと手間で満足感がアップ。
時代を破壊する映画
![](https://eigahitotsumami.com/wp-content/uploads/2023/09/thefamilygame_348.jpg)
画像引用:IMDb
80年代という時代は60年代の反体制のエネルギーや、
70年代のカウンターカルチャーに比べ地味で陰鬱な印象があります。
どこか行き止まりの様な息苦しさに喘いだ所があった様な気がします。
この映画が扱っている受験戦争や、イジメ、家庭内暴力などは
この時代の閉塞感を象徴する様なモチーフです。
その社会状況を強烈にデフォルメした設定と展開が、
この作品の優れた批評性だとすれば、
物語の結末の徹底的な破壊とその後の不可思議な虚無感は、
森田芳光監督の作家としてのメッセージであると捉える事が出来るかと思います。
希望を失った日本の家族への、虚をつく様な不条理な破壊行為。
敗戦直後の瓦礫に覆いつくされた国土を立て直す所から始まった経済成長を、
一つの家庭内で疑似的に模倣した様にも映る辛辣で強烈なシーンでした。
映画の有りようも激烈に変化していた当時の空気を、
森田監督は目の覚める様な一撃で見事に表現しています。
松田優作という時代を代表する強烈な個性を手玉にし、
自身の作家性の元に妥協の無い作品を投下した森田監督の偉業は、
今も日本映画界に語り継がれる出来事でした。
そこには時代に大きなインパクトを与える作品でしか持ち得ない、
ギラギラとした緊張感に満ちています。
80年代の空気を感じたい時に観る映画。
後の映画作家達に多大な影響を与えたこの作品。
日本映画を語る上では決して避けて通れない衝撃作です。
今は亡き、森田監督や松田優作の会心の一撃。
是非、当時のクリエイター達の熱い息吹を感じてみてはいかがでしょうか。