サスペンス映画

映画【パラサイト 半地下の家族】おつまみ【フィッシュ&チップス】

画像引用:IMDb

この映画はこんな人におススメ!!

●韓国映画が好きな人

●ブラックコメディが好きな人

●格差社会について考えたい人

●トラウマ級の恐ろしさを体験したい人

タイトルパラサイト 半地下の家族
製作国韓国
公開日2020年1月10日(日本公開)
上映時間132分
監督ポン・ジュノ
出演ソン・ガンホ、チェ・ウシク、
パク・ソダム、イ・ソンギュン
チョ・ヨジョン、チャン・ヘジン
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世紀の問題作を体験したい時に観る映画

世界中に衝撃を与え、歴史的傑作として名高い今作品。

一体、何がそれ程までに評価されたのでしょうか?

監督のポン・ジュノはこれまでにも、

2003年の【殺人の追憶】、2006年の【グエムル-漢江の怪物-】などで、

高い評価と興行成績を得てきました。

緻密な設定と演出で知られる監督の、正に集大成とも言えるこの作品には、

鋭い社会批判と高い娯楽性が程良く共存し、

予想外の展開と圧倒的なカタルシスが観客の心を鷲掴みにしました。

日本以上に過剰なエリート思考の韓国社会。

その苛烈な格差を大きなテーマとしながら、

滑稽な人間の可笑しみや、残酷で恐ろしい人間の性を絶妙なバランスで描いています。

サスペンス映画としての、一体この先どうなってしまうのかという緊張の高まりと、

個性豊かな登場人物達の滑稽な姿を映したコメディ色。

まるでホラー映画の様な目も覆いたくなる様な恐怖。

そして美しい映像と緻密なデザインが施されたアート映画の様な佇まい。

観る者に思索を促す社会批判性と、家族の愛を感じさせるヒューマニズム。

つまりこの作品にはありとあらゆる映画的要素が組み込まれていて、

尚且つ、それがごった煮の乱雑さを感じさせない洗練されたデザインによって、

バランス良く配置させているという事なのです。

それが観客を夢中にさせ、批評家を驚愕させ、

映画の歴史を塗り替える大偉業を可能にした要素でした。

この映画を観れば、中身の薄い映画10本分の収穫が見込めるでしょう。

世界中の同業者を強烈に嫉妬させたポン・ジュノ監督。

彼はこの作品で映画監督として頂点を極めてしまったと言っても過言では無いでしょう。

2つの家族の格差

画像引用:IMDb

物語は全員失業中で生活困窮に陥っているキム一家が、

超上流階級のパク一家に使用人として次々と取り入っていくというストーリー。

元々の使用人を次々と陥れ、

入れ替わりに身分を偽って潜入していく序盤の展開は、

小気味の良いテンポでスパイ映画の様なワクワク感を抱かせます。

低所得者地域の更に下層に位置する半地下アパートに暮らすキム一家と、

高級住宅地の丘の上の、有名建築家が設計した大邸宅に住むパク一家。

ポン・ジュノ監督はこの強烈な対比を、

ストーリー展開の中で極自然な形で視覚的に説明してみせ、

いつの間にか観客の感情移入をすっかりと完了させてしまうのです。

ここでは貧乏一家の成り上がりを皆応援する気持ちで、

事が巧く進んで行く事にカタルシスを感じます。

騙されている金持ちを嘲る気持ちと、胸をすく様な下剋上を期待してしまうのです。

しかしこの作品は通り一遍の凡百の類ではありません。

降った雨が必ず高地から低地に流れていく様に、

半地下という上階にも下階にも通じる中途半端な場所にいたキム一家には、

成り上がる可能性もあれば、ずり落ちる危険性もあるのです。

「階層」という視覚的仕掛けがそのまま社会格差の暗喩になり、

コメディとサスペンスで観客の心を掴んだポン・ジュノは、

ここにきて難問を我々に投げ掛けるのです。

「幸せ」とは何か?それは「富」と同義であるのか?

狡猾で生命力のある貧乏家族。

純真で騙されやすい金持ち家族。

そして予想もしていなかった第三の存在。

これらがぐちゃぐちゃに相まみえる展開の中で、

我々は「どう生きるべきなのか?」という

単純極まりなく、超普遍的な問いの中に絡め捕られるのです。

料理に格差は無い

今日のおつまみは【フィッシュ&チップス】です。

ちょっとポテトはチップスでは無いのですが。

長ネギと人参のグリルも添えて。

野菜は本当にシンプルに焼いただけでも美味しい!

フィッシュフライの衣には炭酸水を使うとカラッと揚がるそうです。

贅沢ですがオリーブ油でやると更に旨いそうです。

料理にも格差はありますが、それ以上に創意工夫が大事だと思います。

そして何より「愛情」ですよね。本当に、はい。日々感謝しております。

半地下から見上げた世界

画像引用:IMDb

この映画が描く社会格差とは一体何なのでしょうか?

職業やそれに伴う収入、生活様式に格差が生じるのは自然な形です。

そこに優越感や劣等感が生まれるのも当然でしょう。

人はその人生の中であらゆる選択をし続け、

そこで成功した者は階段を一段登り、失敗した者は一段下がります。

次第に下層では選択の機会する与えられない様になり、

上層をただ見上げるしか無くなってしまいます。

キム一家の長であるキム・ギテクの人生は失敗の連続でした。

不景気も手伝い一家失業の憂き目にあいますが、

それでも何とか平穏な暮らしを心掛けています。

しかし、彼の心の奥深くに一滴ずつ雨水が溜まっていく様に、

暗く、固く、沈殿していった塊があったのです。

それは自分でも気が付かない様な、羨望の思い。

半地下から外の世界を見上げる度に心に疼く様な憎悪。

「絶対に失敗しない計画は何だと思う?無計画だよ」

と諦観を気取って無関心を装っていた彼の心には、

自分でも制御が出来ない様な黒い塊を貯蔵し続けていたのです。

彼の心のトリガーを引かせたのは皮肉な現実でした。

それは金持ちのパク社長が言っていた「匂い」というワード。

どんなに成り上がろうが、失敗続きの人生を歩んできた自分には、

敗者特有の「匂い」が消えない。

それを無意識に嫌悪するパク社長の言動に、ギテクのリミットは振り切ってしまうのです。

世紀の問題作を体験したい時に観る映画。

この作品には本当に多くのテーマが内奥されています。

それは一見、過度に誇張された表現に見えたりもしますが、

誰の心にも覚えがある普遍性を伴ってもいます。

「誰かの人生と比べた時の劣等感」

それと無縁で生きていける人は、現代社会に於いては少ないのでは無いでしょうか?

天才監督、ポン・ジュノが描いた滑稽で恐ろしい物語は、

我々観客の心にもいつまでも消えない「匂い」を残していきます。

それはずっと体にへばり付いて不快感を伴います。

しかし、それをキッカケに生じる変化も当然あるのだと思います。