コメディ映画

映画【逆転のトライアングル】おつまみ【海老とあおさ海苔の出汁巻き玉子】

画像引用:Fredrik Wenzel © Plattform Produktion

この映画はこんな人におススメ!!

●あらゆる差別に一言ある人。

●職業的ヒエラルキーに一言ある人

●痛烈な社会風刺に飢えている人

●いつの日か大逆転を夢見ている人

タイトル逆転のトライアングル
製作国スウェーデン、フランス、イギリス、ドイツ
公開日2023年2月23日(日本公開)
上映時間147分
監督リューベン・オストルンド
出演ハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン、ドリー・デ・レオン、ウディ・ハレルソン
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強烈な社会風刺に晒されたい時に観る映画

今作の強烈な風刺精神はトラウマ級の衝撃です。

2017年公開の【ザ・スクウエア 思いやりの聖域】に於いて、

人間の偽善を鮮やかに暴いてみせたリューベン・オストルンド監督。

今作のテーマは社会的ヒエラルキー。

職業差別、性差別、人種差別、貧富差別など実社会で日常的に見られる、

人間の根源的な階級意識を徹底的に皮肉っているのです。

如何に多様性やコンプライアンスを叫ぼうと、

我々人類の歴史と切っても切り離せない人間の恥部に、

これでもかとおあつらえ向きな展開を繰り出してくれる

痛快なブラックユーモア。

スウェーデン出身のリューベン・オストルンド監督は今作によって、

史上3人目の2作品連続カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞を果たします。

彼の映画は常に挑戦的で観客の間に物議を巻き起こします。

その中には作品を嫌悪する人もいるでしょうが、

リューベン・オストルンドという演出家は

自らの映画の前を観客に素通りして欲しくない人物なのだと思います。

体験として映画を忘れ得ぬものにして貰いたい。

彼のその思いはどんな形であれ大成功と言わざるを得ません。

究極の大逆転

画像引用:Fredrik Wenzel © Plattform Produktion

物語は3部構成となっています。

その冒頭を飾るのは人気モデルのインフルエンサー・ヤヤと、

そのイケメンの彼氏カールの日常を切り取ったシーン。

このカップルの間にはまず経済格差があり、

男女間の意識格差があり、

人生に於ける価値観の相違も如実に存在します。

カールも駆け出しのモデルなのですが中々芽が出ず、

人気モデルのヤヤに対する引け目があります。

当然収入もヤヤの方が多いのですが、

レストランでの勘定は常にカールが支払う。

その事に常日頃から不満のあるカールは遂に怒りを爆発させてしまうのです。

カールは「対等でありたいだけだ」と詰め寄りますが、

そもそもこの映画のテーマが人間は対等であり得るのかという所にあるのです。

映画の第2部では超豪華客船によるクルージングでのセレブ達の狂乱が描かれています。

世界中から集まったセレブ達の理不尽な要求にチップ欲しさにサービスするクルー達。

経済格差がここでも辛辣に描かれていますが、

アル中の船長が主催するキャプテンズ・ディナーの地獄絵図は、

正に映画史に残る衝撃的なシーンです。

悪天候のシケで船は大揺れ。

そこら中で嘔吐しまくるセレブ達と客室のトイレから逆流して溢れ返る汚物。

阿鼻叫喚の惨事の中、

泥酔した船長は船内放送で自身の信望する共産主義を説くというシーン。

資本主義が生んだ醜悪な拝金主義者達と、

世に諦観した狂気の共産主義者の対比。

そして現実社会での経済的ヒエラルキーが壊滅する非常事態が巻き起こり、

逆転の予兆を感じさせる衝撃の展開となっていきます。

逆転のおつまみ

今日のおつまみは【海老とあおさ海苔の出汁巻き玉子】です。

中々、お食事時にはキツイ作品なのですが、

食べ物に罪はありません。

白だしでジュワっとした食感。

あおさ海苔の豊かな磯の香り。

それが海老のプリプリ食感と相まって、

お口の中は大逆転勝利となります。

玉子料理はどんな時も裏切りません。

サバイバルの女王

画像引用:Fredrik Wenzel © Plattform Produktion

第3幕は極めつけの大逆転劇。

海賊の襲撃で沈没した客船。

流れ着いた無人島で何とか生き永らえたヤヤとカール。

かつてセレブだった者も、インフルエンサーだった者も、

客船のトイレ清掃員だった驚異的に生活力のあるおばちゃんの前に、

皆ひれ伏すのです。

文明から一度離れてしまえば銀行残高など何の役にも立たない。

生きるのに必要な「食料」と「火」を獲得出来る、

嘗て社会の最下層に属していたおばちゃんが大逆転を起こすのです。

これを観ていて昔トランプゲームでよくやっていた「大富豪」を思い出しました。

それまでのカードの強さの序列が一気に逆転してしまう「革命」と呼ばれるルール。

弱者と強者が逆転するこの映画の展開は、

現代の社会的ヒエラルキーを強烈に風刺し、

またその本質を見事に突いた表現であったと思います。

全ての権力を手にしたおばちゃんは、

嘗て自分の事など見向きもしなかった特権階級の者達を従わせます。

若いイケメンモデルのカールを性奴隷にし、

まるで小さな世界の女王の如く君臨するのです。

ここで第2部で描かれた船上のセレブ達の傍若無人さが思い出されます。

彼等は日頃自分達のトイレを清掃しているのがどういう人達であるかなど、

歯牙にもかけません。

しかしちょっとした価値の転換でその格差や差別は脆くも無意味と化す。

これはちょっと笑ってしまう皮肉ですが、

よくよく考えれば私達にも当てはまる事象なのでは無いでしょうか?

セレブとまではいかなくとも、

サービスを受ける「側」の人間として傲慢な態度を取ってはいませんでしょうか?

人の振り見て我が振り直せですね。

反省です。

強烈な社会風刺に晒されたい時に観る映画。

これは万人にお勧めできる作品ではありません。

しかし見る価値は間違いなくある作品でもあります。

自身の価値観を一度思いきりハンマーで叩いてみるのも、

たまにはいいのではないでしょうか?