サスペンス映画

映画【ベイビー・ブローカー】おつまみ【牛肉ガーリックライス】

画像引用:IMDb

こんにちは!ころっぷです!!

今日の映画は【ベイビー・ブローカー】です。

是枝裕和監督が韓国で撮影したサスペンスドラマ。

歪な疑似家族の思惑が錯綜する、

複雑な物語を堪能出来ます!

この映画はこんな人におススメ!!

●先の読めない展開を楽しみたい人

●不思議な家族の形を観たい人

●許しと癒しの物語を体験したい人

●韓国映画界の最高峰の仕事を感じたい人

タイトルベイビー・ブローカー
製作国韓国
公開日2022年6月24日(日本公開)
上映時間129分
監督是枝裕和
出演ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、
ペ・ドゥナ、イ・ジウン

赦す事で解放されたいと思った時に観る映画

今回は鋭く社会問題に踏み込んだサスペンス映画のおススメです。

2018年「万引き家族」でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞した、

是枝裕和監督初の韓国映画。

主演のソン・ガンホが今作でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞。

世界的に高い評価を受ける是枝監督の多視点からなる見事な脚本と、

深い人間洞察を存分に味わえる作品です。

乳児斡旋という社会の闇を描きながら、

登場人物達の奇妙な利害関係をユーモラスに描写。

人を赦す事で救われていく普通の人々のありふれた人生をじっくりと見せてくれます。

社会の歪な姿に対して単純な善悪論では無く、

一人一人の人生に光を当てる事でその反射を映し出していく。

ドキュメンタリー出身の是枝監督らしい問題提起は、

声高に観客の意識をプロバガンダするのではなく、

緩やかに自分の意見の立ち位置に気が付く様なさり気無いものです。

登場人物達の心の移ろいにそっと寄り添う事で、

今まで考えてこなかった様な普遍的な人生のテーマと向き合う事が出来るのです。

家族は必然では無く、偶然に作られる

画像引用:IMDb

是枝監督の作品群の大きなテーマの一つが「家族」です。

2004年の「誰も知らない」では育児放棄された子供を描き、

2013年の「そして父になる」では子供の取り違い事件を扱い家族の意味を問いました。

2018年の「万引き家族」では社会の底辺で犯罪に手を染める家族を描き、

今作でも血の繋がりは無いが、互いの利害と思惑で集まった奇妙な関係の

疑似家族が登場します。

あらゆる既成概念が時代の変化と共に崩れ去っていく昨今にあって、

新しい家族の形を次々に描く是枝監督のライフワークは、

「現代」を描くという事と密接にコミットしています。

映画は時代を写す鏡であるとよく言われますが、

ありのままの現実を記録するドキュメンタリーの概念と、

作為を元に観客の心に物語性を深く刻む事の両方を併せ持つ作品を作れる

クリエイターは世界広しと言えど、貴重な存在です。

問題に対して答えを用意するのでは無く、

リアルな物語の反射作用によって自分自身について考える事を促すのが、

映画の持つ大きな力であると言えるでしょう。

「家族」とは「社会」とはこうであるべきという惰性から、

考え方を自由に飛躍させる事が、価値観を変えていく事の第一歩となるのかも知れません。

社会的にあたりまえの「悪」が、

あなたにとってはどうなのか。

「家族」とはこうであるべきという固定概念が、

本当に人を幸せにするのか。

この作品は限られた物語の中を縦横無尽に考えを錯綜させる事の出来る、

普遍性と度量の大きさを持っています。

食欲に「悪」は無し

今日のおつまみは【牛肉ガーリックライス】です。

某ファストフード店の人気メニュー風ですが、

今はスーパーの精肉コーナーにご飯に混ぜて炒めるだけでOKな便利パックが、

色々とあって助かります。

がっつりと食欲を満たしてくれる問答無用な一品。

現代社会は兎角色んな問題に頭を悩ませがちですが、

腹が減っては戦は出来ません。

ガーリックパワーでスタミナを付けて、

思索に疲弊する脳にもエネルギーを送って上げなければいけませんね。

歪な人間関係の化学反応

画像引用:IMDb

この映画の登場人物達の多くは心に大きな傷を負っています。

彼等は社会的弱者であり、それ故に犯罪行為に手を染め、

あらゆる事に包囲されていきます。

韓国も日本と同様に格差社会の構造が顕著な様で、

日々の生活に必死で、明るい未来を描く事が困難なのかも知れません。

育児放棄された乳児とは言え、人身売買の斡旋は重犯罪です。

しかしこの映画の主人公達は、それに対する罪の意識が希薄である様に見えます。

そうとしか生きる事が出来ないという開き直りの態度と共に、

彼等にはどこか「善意」で斡旋を行っているという雰囲気があります。

お金が目的ではあるのですが、命を救い、その子供の幸せを願ってもいる。

仮に法律の概念を度外視して考えると、

ここには「善悪」の評価が難しい行為が描かれている事に気付いたりします。

互いの心が抱える「闇」に気が付く事が出来る人間だからこそ、

彼等は自分の利害だけでは無い所で危険を犯したり、社会からはみ出てしまったりします。

その滑稽でありながら実に人間らしい姿を克明にドキュメントしていく姿勢が、

是枝監督の作家性であり、クリエイターとしての存在意義なのかも知れません。

簡単に人間を判断する事の危険性。

価値観を疑う事の重要性。

そして命の大切さを決して説教臭く無く感じさせてくれる事。

社会不適合者達の化学反応が、実に鮮やかに教えてくれています。

人の過ちを赦す事で、自分が赦される事がある。

そして例え道を誤っても、そこから前に進む事は出来る。

赦す事で解放されたいと思った時に観る映画。

人から受けた嫌な思いに捉われ続ける事は、人生をも損なう事がある。

相手を赦す事が過去の自分を赦す事になったり、

未来の誰かから赦されたりする事にもなる。

世界の片隅の歪な家族が示した、生きる事への微かな希望。

重いテーマを扱いながらも、爽やかな充実感を残す作品です。