画像引用:IMDb
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【午後8時の訪問者】です。
ベルギーの俊英・ダルデンヌ兄弟が監督したサスペンスドラマ。
偶然が引き合わせた女性医師とある事件の顛末。
実在感ある登場人物達の造形が、
まるでドキュメンタリーフィルムを観ているかのような
没入感を誘う作品です。
この映画はこんな人におススメ!!
●過去に後悔を抱えている人
●良心の呵責に苛まれている人
●リアル過ぎるサスペンスが観たい人
●失敗から成長したい人
タイトル | 午後8時の訪問者 |
製作国 | ベルギー、フランス |
公開日 | 2017年4月8日(日本公開) |
上映時間 | 106分 |
監督 | ジャン・ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ |
出演 | アデル・エネル、オリヴィエ・ボノー、 ジェレミー・レニエ、オリヴィエ・グルメ |
変えられない過去に向き合う時に観る映画
カンヌ国際映画祭の最高賞、パルム・ドールに2度輝いているダルデンヌ兄弟。
兄のジャン・ピエールと弟のリュックは1996年公開の【イゴールの約束】以来、
全ての作品でカンヌ国際映画祭のコペティションに参加しています。
現代の映画界で最も高い評価と尊敬を集めるベルギー出身の兄弟監督が、
見事な人物描写とサスペンス要素たっぷりの演出で描いたのが、
この【午後8時の訪問者】という作品なのです。
物語の主人公は小さな町の診療所で医師として働く女性ジェニー。
ある日、診療時間を大幅に過ぎた時間に鳴らされたインターホンの呼び鈴を
自分の判断で無視してしまいます。
その翌日、近くの川岸で身元不明の女性の遺体が発見されます。
診療所の防犯カメラにはその女性がインターホンを押して助けを求めている映像が。
ジェニーは自分が診療所の扉を開けていれば、
その女性は死んでいなかったかも知れないという良心の呵責に苛まれてしまいます。
そしてその身元不明の女性を知る人を探し始めるというストーリーです。
日常のほんの些細な判断ミスが思わぬ事態に発展していってしまう。
それは多かれ少なかれ誰しも経験のある事かも知れません。
いくら自分を責めても起きてしまった事は無くせませんが、
そこから逃げずに向かい合い続ける事で、
徐々に自分自身が変わっていく。
事件の真相を追うサスペンスでもあり、
主人公の成長を描いたヒューマンドラマにもなっている作品です。
あらゆる声に耳を澄ませる事
![](https://eigahitotsumami.com/wp-content/uploads/2023/07/s_sub3-1024x681.jpg)
画像引用:IMDb
インタビューでダルデンヌ兄弟はこう言っています。
「登場人物たちは、精神状態を肉体的に表します。めまい、胃痛、癲癇の発作。
まず初めに身体が反応するのです。身体は話し、言葉にできないものを表に出す。
ジェニーは名もなき少女の身元を探ることで同時に、患者たちの苦しみを聞き、
彼らを癒そうとしているのです。」
主人公が医師であるという設定が物語のテーマと見事に直結しています。
言葉に出来ない声を聞く者としての、医師の存在意義。
そしてそれは現代社会におけるコミュニケーションの一つの理想でもあるという事。
様々な社会問題の中で生きざるを得ない我々現代人は、
心の奥深くの本心に気付き、それを聞いてくれる存在を、
何より必要としているのではないでしょうか。
身元不明の女性の死に、間接的ではあれ自分にも過失があると感じたジェシーは、
女性の身元を調べて回る内に、
これまで以上にこの言葉に出来ない声に寄り添う様になっていきます。
そしてかつて共に働く研修医の青年に高圧的な態度を取ったり、
自分の価値観を押し付けたりしていた事に気が付くのです。
この事件の真相に近付いていく過程の中で、主人公のジェシーの変化、
その成長をさり気無く描いている所が、また今作の奥深い所でもあるのです。
移民文化のヨーロッパにとって、日本人には想像もつかない程の断絶が
社会に暗い影を落としています。
それらがもたらす差別、貧困、対立、犯罪。
こう言った社会問題を直接的に批判したり描写したりするのでは無く、
あくまでも登場人物達の心理的変化の中にメッセージを込める演出が、
ダルデンヌ兄弟の真骨頂と言えるのではないでしょうか。
簡単おつまみの真骨頂
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今日のおつまみは【人参とジャガイモのガレット】です。
これぞ正に冷蔵庫にあったものでパパッと作ってしまう、
妻の熟練の技の真骨頂です。
シンプル・イズ・ベストなお味は言わずもがな。
コスパも良く、お酒にもバッチリ合います。
大丈夫かな?という位にフライパンで攻め気味に焼くのがポイント。
カリッとした食感が命の一品です。
日常を積み上げる非日常
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画像引用:IMDb
この映画も観る人を選ぶ作品です。
或いは観客は作品に試されているのかも知れません。
淡々と描かれる日常を退屈と感じる人もいるかも知れません。
この映画にはあえて同じ様なシーン、同じ様な描写を繰り返す演出が為されています。
それはあたかも我々の日常の様に。
しかし映画とは綿密な計画の元に計算されたカット割りで描く、
必要なシーンだけを抜き出した人生の総集編なのです。
この映画に無駄なシーン、無駄なカットは一つもありません。
全てがヒリヒリする程リアルに、
その場限りの非日常を日常として描いているのです。
同じように見える毎日が、如何に変化と驚きに富んだ日常であることか。
ダルデンヌ兄弟は主人公のジェニーの真摯で切実な眼差しの中に、
我々の人生が一度きりであるという事の意味を痛烈に描いていきます。
たった一つのミスチョイスが、
人の生き死にや、他人の将来の道筋を決めてしまう事もある。
同じ様に見えて、その一日は二度と戻っては来ないのです。
この人生の残酷な深淵に、ただ真っ直ぐに向き合った主人公のジェニーが
我々に教えてくれた事、それは逃げる事無く失敗から学ぶという事。
これが言うは易く行うは難しなんですよね。
変えられない過去に向き合う時に観る映画。
過去を変える事は誰にも出来ません。
未来を予知する事も残念ながら不可能です。
出来るのは「今」を変える事だけ。
この上質のサスペンス映画は、
普遍的で当たり前過ぎる事実に、
しっかりと寄り添ってくれる骨太の作品なのです。