コメディ映画

映画【フレンチアルプスで起きたこと】おつまみ【ベーコンチーズ・デニッシュ】

画像引用:IMDb

こんにちは!ころっぷです!!

今日の映画は【フレンチアルプスで起きたこと】です。

強烈なブラックユーモアと暗喩的表現が癖になる作品。

映画の多様性と前衛性を全身で傍受出来る怪作です。

トラウマ的な後遺症を伴う危険性も有り!

心して鑑賞する事をおススメ致します!

この映画はこんな人におススメ!!

●いざという時の心構えをしたい人

●本当にこの人は信用出来るのだろうかと思う人がいる人

●家族って何だろうと改めて考えている人

●圧倒的にシニカルなコメディを観たいと思う人

タイトルフレンチアルプスで起きたこと
製作国スウェーデン、デンマーク、フランス、ノルウェー
公開日2015年7月4日(日本公開)
上映時間118分
監督リューベン・オストルンド
出演ヨハネス・バー・クンケ、リーサ・ローヴェン・コングスリ、
クララ・ヴェッテルグレン、クリストファー・ヒヴュ
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固定概念の枠から飛び出したい時に観る映画

今回の映画は正にトラウマ級の衝撃作と言って過言では無いと思います。

118分間、観客はそれぞれ自分自身の価値観と対峙し、

映画の登場人物と自分自身を重ね合わせ悶絶する事になるでしょう。

監督のリューベン・オストルンドは、

2017年の【ザ・スクウェア 思いやりの聖域】、

2022年の【逆転のトライアングル】で

2作品連続のカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞しています。

正に現代の映画界において鬼才の名を欲しいままにしている人物です。

そんな天才監督の独創的かつ、普遍的な大傑作コメディが、

この【フレンチアルプスで起きたこと】という作品なのです。

物語は比較的裕福な家族がフレンチアルプスでの休暇中に起きたある事件によって、

それまでの関係性が崩壊し、修羅場を迎えるというストーリー。

家族を守るべき存在とされる父親が、

いざという場面で自分一人で逃げ出してしまった。

この出来事が平和な家族に歪を生み出していきます。

よくあるワンアイデア出発の映画と言えるのかも知れませんが、

オストルンド監督の凄まじい所はそれをこれでもかと言う程のディティールで、

観客の思考に強制的に植え付けてしまう位の世界観を作り出している所なのです。

彼の映画は徹底的な傍観。被写体から一定の距離を取った視点にその特徴があります。

現代の多様化した「家族」の有り方を通して、

人間の本来的な「幸福」とはという大きなテーマにまで増幅していきます。

そう言った意味でも本当に油断出来ない映画なのです。

家族という役割を演じる事

画像引用:IMDb

とかくコンプライアンスが叫ばれる現代社会において、

「男らしさ」や「女らしさ」という言葉は禁句になりつつあります。

最早「家族」というプライベートなコミニュティーにおいても、

あるべき姿に見える様にそれぞれがその役割を演じるという事が、

スタンダードになって久しい状況なのかも知れません。

この映画の舞台は冬山の高級リゾートホテル。

そこに集う人々はある一定レベル以上の富裕層です。

大自然の中に超人工的な施設が共存した歪な世界。

この有機物と無機物の不穏な対比が、

映画のそこかしこで強調されていて印象的です。

不自由の無い環境で、自然を満喫したいという矛盾した欲求が、

そのまま人間関係の軽薄さに直結している様で、

オストルンド監督のシニカルな作家性が如実に感じられる所です。

資本主義社会の勝者達が、

本当に人間として「幸福」であるのかという皮肉とも取れる構図。

如何に立派そうに見える人間も、偉そうな理屈を捏ねる人々も、

一皮剥けば弱く、脆く、醜い一面を持っているんだよという事。

それを独特のユーモアとアイディアで描き切ったこの作品は、

観客の心にいつまでも尾を引く強烈な印象を残す事に成功しています。

コーヒーブレイク

今日はお酒のおつまみでは無いのですが、

余りにキリキリする映画の内容なのでコーヒーブレイクを入れます。

妻はコーヒーをこよなく愛する人で、

毎朝、スペシャリティコーヒーを豆から挽いて、

ハンドドリップで飲ませてくれます。

コーヒーはハマると底なし沼の様にキリが無い奥深い世界なのだそうです。

私にはコーヒーの事はよく分からないのですが、

取り敢えず美味しい物をいつも出して貰えるので有難く頂戴しています。

今日はベーコンとチーズを乗せてトーストしたデニッシュと合わせて。

浅煎りの香り高いコーヒーは、

どんな食べ物とも合うスッキリとした味わいです。

悪夢の中で自分と対峙する

画像引用:IMDb

雪山の中で、多くの観光客の一人に過ぎない存在になった時、

人は改めて自分自身のアイデンティティと対峙させられるのかも知れません。

まるで鳥の巣箱の様に同じ様なドアが並んだホテルの巨大なフロア。

荘厳な大自然の中に、レゴブロックの様に違和感の塊として存在する高級ホテル。

その人工物がたてる金属音やモーター音が異様な程に耳に付く演出。

オストルンド監督はこの映画で徹底的に自然の中の人間の卑小さを炙り出していきます。

そして登場人物達の危ういフラストレーションが臨界点に達した時の爆発力。

その姿には悲壮感を突き抜けた可笑しさがこみ上げて来てしまいます。

人間の滑稽な本能と、それでも「家族」という形を維持しようと頑張る人々。

どこででも、誰にでも起こりそうな些細な事件の落とした影には、

人間の脆さを剥き出しにした衝撃があります。

悪夢の様なバケーションでそれまでの関係性から新たなフェーズに突入した「家族」。

その未来を暗示するラストシーンも皮肉が効いていて秀逸です。

固定概念の枠から飛び出したい時に観る映画。

この映画は「見たくないもの」「避けて通りたいもの」を

鼻先にぶら下げ続ける作品です。

鑑賞後の身体の強張りが半端無いと思います。

しかしこれはあくまでも「映画」の中の出来事。

人のふり見て我が身を直せ。

恐怖と笑いで揉みくちゃにされながら、

教訓として大いに役立つ作品だと思います。