サスペンス映画

映画【シャッターアイランド】おつまみ【ベーグルオープンサンド】

画像引用::IMDb

この映画はこんな人におススメ!!

●どんでん返しが好きな人

●脱出不可能な状況に興奮を覚える人

●伏線回収が好きな人

●自分なりの解釈で映画を観たい人

タイトルシャッターアイランド
製作国アメリカ
公開日2010年4月10日(日本公開)
上映時間138分
監督マーティン・スコセッシ
出演レオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロ、
ベン・キングスレー、マックス・フォン・シドー、
ミシェル・ウィリアムズ

本当の意味の恐怖を体験したいと思った時に観る映画

今回はどんでん返しオチの難解映画と名高い【シャッターアイランド】をおススメします。

監督のマーティン・スコセッシと主演のレオナルド・ディカプリオは、

2002年公開の【ギャング・オブ・ニューヨーク】以来の名コンビ。

今作はアメリカの作家デニス・ルヘインの同名小説を原作に、

ホラーサスペンスの要素を取り入れた緊迫感のある演出で描いています。

舞台は絶海の孤島にある凶悪犯罪者のみを収容した精神病院。

女性収容者の失踪事件の捜査の為に島を訪れたのが、

主人公のテディ(レオナルド・ディカプリオ)でした。

まずこの舞台設定がサスペンス映画の定石としてワクワクさせます。

脱出不可能な孤島。

嵐の到来で更に逼迫感が増していきます。

主人公の捜査に非協力的な癖のある登場人物達。

そして作中何度も差し込まれる主人公の夢や幻覚のシーン。

この島には何か大きな秘密が隠されていると、否応なく観客は引き込まれていきます。

スコセッシ監督はハリウッドのクラシック作品を徹底的にリサーチし、

あえてクラシカルなホラー映画の手法を取り入れて、

物語全体を霧で覆う様な雰囲気を作り上げていきます。

陰影を印象付けるライティングと、第三者の目を仄めかす様な俯瞰的な構図。

ジョン・ケージの前衛音楽が不安感を増長し、

「水」や「火」を効果的に使った暗喩的描写で

主人公の不安定な精神状態を観客に追体験させます。

あらゆる技術とアイディアが観る者を強烈に物語に引きずり込む。

映画本来のドキドキ感が堪らない作品になっています。

幾重にも張り巡らされた伏線

画像引用::IMDb

サスペンス作品の楽しみの一つに伏線回収があります。

結末を知った後で振り返ってみると、

「ああ、あの時のあれはああだったからかぁ!」となる訳です。

この作品も序盤から実に多くの伏線が張り巡らされています。

伏線回収マニアには堪らない作品と言えるでしょう。

複数鑑賞を促すテクニックでもありますし、

映画のエンターテイメント性の一つの側面でもありますよね。

そもそも謎解きサスペンスなので、

見ていると「これは何だ?」と引っ掛かるシーンは数多くあるのですが、

それが結末を知った後にはちゃんと腑に落ちる様になっているんです。

この映画の更に複雑な所は主人公のテディが見る「夢」や「幻覚」が、

本当に起きた事と、実際とは違う妄想が入り乱れているので、

それを暗示する伏線に後で気が付くと

「よく出来てるなぁ」と余計に感心してしまうのです。

オチが序盤で読めてしまった人でも、飽きさせない楽しみ方が出来るという事なんです。

そもそも人間の「記憶」というものは実に曖昧で頼りない物なので、

主人公のテディの様に強烈な「トラウマ」を持った者にとっては

余計に複雑な様相を見せるはずです。

その辺りの深層心理を事件の捜査展開と上手く絡めて進行させる脚本が、

この作品が凡百のサスペンスと一線を画している所であると思います。

やがて主人公のテディは事件の真相から自分の過去との対峙に向かって進んで行きます。

それは曖昧な「記憶」と不安定な「自我」と向き合う体験。

それこそがこの映画が描く所の本当の「恐怖」なのかも知れません。

白ワインと抜群の相性

今日のおつまみは【ベーグルオープンサンド】です。

近所のパン屋さんで買ってきたベーグルを上下に割って、

海老・黒オリーブの酢漬け・ミニトマト・チーズを乗せてトースト。

塩味の効いたベーグルが実に香ばしく、

白ワインとの相性が抜群でした。

我が家の愛犬、ミニチュアダックスフンドのうみ君は大のパン好き。

この日もベーグルの香りに大興奮でした。

心の孤島に閉じ込めた真実

画像引用::IMDb

映画の主人公には強烈な戦争体験がありました。

第二次世界戦の終戦時、

ドイツの強制収容施設「ダッハウ強制収容所」でのドイツ兵虐殺事件です。

テディはアメリカ陸軍歩兵部隊に所属し、この収容所開放の際の虐殺に関与していました。

この時の体験が彼の精神を著しく疲弊させ、

終戦後も酒に溺れ家庭を顧みず生活が荒れていきました。

そんな中で3人の子を育てる彼の妻は極度の鬱になり、

自らの手でその子供等を殺してしまうという悲劇に繋がっていきました。

テディが心の孤島に閉じ込めた真実の記憶は、

妄想の力で捻じ曲げられ、

架空の人物になる事で何とか生き永らえる事が出来る様な状況でした。

全てが自分の妄想と、捻じ曲げた記憶のツギハギである事を知り、

テディは絶望の末にある選択をします。

狂人として妄想の世界で苦しみ続ける事よりも、

そして余りに辛い現実を受け入れる事よりも、

記憶を失って廃人として自分の人生を終わらせる事。

それは余りに悲しく救いの無い選択です。

非人道的な体験が螺旋階段の様に続く戦争。

彼の人生は歪められ、破壊されました。

あってはならない暴力は実際に存在します。

それは人の人生を徹底的に破壊します。

物見遊山でハラハラドキドキしていた観客に

スコセッシ監督は強烈な鉄槌を振り落とします。

本当に恐ろしい物語はフィクションではありませんでした。

本当の意味の恐怖を体験したいと思った時に観る映画。

この映画はエンターテイメント作品という表層の裏に、

非常に重いテーマを内包しています。

それこそこの映画体験がある人にとっては「トラウマ」になってしまうかも知れません。

しかしこの主人公の人生に起きた恐ろしい暴力に触れる事で、

本当の意味での「戦争」の恐ろしさや無意味さに触れる事も出来るのだと思います。

物語に込められた様々なテーマにこそ、

本当の伏線はあるのかも知れません。

それを回収出来るか否かは、私達一人一人に懸かっていると言えるのではないでしょうか。