画像引用:(c)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【1917 命をかけた伝令】です。
舞台は第一次世界大戦下のヨーロッパ西部前線。
攻撃中止の極秘命令を前線に伝える為、
戦場をひたすら移動するあるイギリス兵の姿を描いた作品です。
全篇ワンカットに見える様な撮影と編集を施し、
空前絶後の迫力を伝える傑作戦争映画です。
この映画はこんな人におススメ!!
●圧倒的な臨場感を味わいたい人
●戦場の恐怖を体験したい人
●最高峰の撮影技術を堪能したい人
●死を通して生を考えたい人
タイトル | 1917 命をかけた伝令 |
製作国 | イギリス、アメリカ |
公開日 | 2020年2月14日(日本公開) |
上映時間 | 119分 |
監督 | サム・メンデス |
出演 | ジョージ・マッケイ、ディーン=チャールズ・チャップマン、 マーク・ストロング、コリン・ファース、 ベネディクト・カンバーバッチ |
戦場を体験したいと思った時に観る映画
この作品がこれまでの戦争映画と一線を画する最大の要因は、
全篇ワンカットの様に演出された臨場感のある撮影と視覚効果でしょう。
映画の冒頭からラストシーンに至るまで、まるで繋ぎ目が無いかの様に
編集された高度な映像技術が圧倒的な没入感を観客に与えます。
実際に戦場にいるかの様な疑似体験が戦争の恐ろしさを如実に伝えるのです。
しかも今作は殆どのシーンが屋外ロケーション。
長い塹壕を進み、地下通路を通り、湿地や草原を抜け、廃墟と化した街に迷い込む。
主人公の兵士は川に流され、森を抜け、最前線の激戦地を駆け抜けます。
この絶え間ない「移動」をカメラは我々の「目」となって追い続けるのです。
嘗てもスタンリー・キューブリック監督の【フルメタル・ジャケット】や、
スティーブン・スピルバーグ監督の【プライベート・ライアン】など、
リアルな戦場を描いた戦争映画はありました。
しかし今作品のリアリティは常軌を逸したレベルのものです。
観客は主人公の兵士2人と共に危険な前線地帯に躍り出て、
あちこちに死体が転がっている荒地の中を進んでいくのです。
唐突にこの世の果てに投げ込まれたかの様な体験に、
我々は目の前で起こる出来事を、自分の眼で見て自分の耳で聞く事になります。
その一々に強烈なインパクトを感じるのです。
正に実体験を強いる様な映画。
119分後、まるで戦争体験を終えたかの様な我々は、
平和な現実世界への帰還にほっと胸を撫で下ろす事になるでしょう。
それは死線を潜り抜けたかの様な強烈な虚脱感に他なりません。
名もなきヒーロー
画像引用:(c)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
嘗ての戦争映画は、その戦況に大きな影響を与えた英雄達を主役に据えてきました。
アメリカのパットン大将やドイツのロンメル将軍、
日本の山本五十六元帥に古くはフランスのジャンヌダルクなど。
偉人、英雄と呼ばれる人物の活躍を華々しく描く事で、
愛国心を助長する様な映画も少なくなかったのです。
それがベトナム戦争を経て戦争映画の殆どは反戦映画になりました。
戦争の悲惨さや無意味さを描いた作品では、
名も無き一介の兵士が主人公の作品が多く占めました。
これは我々観客の感情移入を狙って、
戦争の恐ろしさを疑似体験させる事を目的としたのでしょう。
戦争に「正義」も「悪」も無いですが、
避け難く存在するのは「生死」の分かれ目です。
戦場では平時とは比べ物にならない程に「命」が軽く扱われます。
極簡単に「命」が奪われ続けるのです。
我々観客に最も「戦争」の虚しさを感じさせるには、
やはり戦場に居るかの様な疑似体験が必要不可欠なのかも知れません。
今作の監督であるサム・メンデスが拘った全篇ワンカットの演出は、
それを最大限に感じさせる効果がありました。
作戦中止を前線に伝令するという、重要でありながら言ってみれば地味な、
そして単純なプロットであるからこそ浮かび上がってくるリアリティ。
途切れる事の無い時間軸の中で、名もなき兵士の眼で目撃する戦場。
泥まみれになったブーツに足が取られる様な錯覚をしてしまう程の没入感。
圧倒的な「死」の匂いが、我々に「生」への希求をもたらします。
おつまみの疑似体験
今日のおつまみは【キーマカレー】です。
近所のお気に入りのカフェでキーマカレーを食べて、
触発された妻の渾身の作です。
お店の味の再現という訳では無いのですが、
ヒントを得て家庭で疑似体験してみるのもまた楽しいですよね。
自分好みに色々とアレンジ出来るのも醍醐味でしょうか。
今度は市販のカレールー無しで作ってみたいと、
妻は張り切っていました。
キリスト教的な寓話
画像引用:(c)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
この物語にはリアルな臨場感の傍ら、暗喩的な寓話としての質感が伴っています。
特にキリスト教に関するメタファーを感じさせる描写が数々散りばめられ、
一種おとぎ話の様な超越感を抱かせます。
冒頭の主人公が相棒にパンを分け与えるシーン。
塹壕から2人が前線に這い出る直前の上官が見せる洗礼の様なシーン。
鉄条網で掌を貫かれるイエス・キリストの磔を暗示するシーン。
髪に香油を付けて鼠に耳を千切られるというエピソード。
地下室で主人公が出会う赤子を見守る聖母マリアの様な女性とのシーン。
そして連隊が森で賛美歌を歌うシーン。
まるで聖書のシーンを暗喩的にコラージュしたようなシーンが散見しますが、
物語に一種の救いの様な効果を出していると感じました。
苛烈な戦場のリアリティ、それと同時に起こる夢の様な描写が、
それぞれ「死」と「生」を象徴しているかの様。
「戦争」という非現実的な状況が、自分の身に降り掛かってきた時、
人はやはり「神」の存在に吸い寄せられていくという監督の死生観なのかも知れません。
日本人であれば、仏様やご先祖様にあたる様な。
映画のラストシーンが、まるで冒頭にループしたかのような構図で終わるのも、
戦争の終わる事の無い悲劇性を暗に表現している様に取れます。
戦場を体験したいと思った時に観る映画。
観る人によって様々な解釈、考察が可能な懐の深い作品だと思います。
驚異的な映像に目を奪われ、強烈な疑似体験に見舞われ、
「死」の匂いに晒されながら、「生」の意味を考えさせられる。
非情に体力を必要とする映画ではありますが、
一生に一度、替えの効かない作品だと思います。