ヒューマンドラマ映画

映画【フィッシャー・キング】おつまみ【揚げ豚と茄子の梅肉ソース】

画像引用:© 1991 TriStar Pictures, Inc. All Rights Reserved.

この映画はこんな人におススメ!!

●大きな挫折を経験した事がある人

●日常の隙間に存在する奇妙な世界に足を踏み入れたい人

●トラウマを克服したい人

●人生の本当の価値を知りたい人

タイトルフィッシャー・キング
製作国アメリカ
公開日1992年4月11日(日本公開)
上映時間137分
監督テリー・ギリアム
出演ジェフ・ブリッジス、ロビン・ウィリアムズ、マーセデス・ルール、アマンダ・プラマー

過ちを乗り越えたい時に観る映画

今回はわたくしころっぷの人生の一本。

何度も何度も観返し、その都度必ず元気にしてくれる心の映画をおススメ致します。

この「えいがひとつまみ」というブログももうすぐ三周年。

おススメした映画は200本に迫る数になってきました。

そして今回のテリー・ギリアム監督の【フィッシャー・キング】という作品は、

映画を好きになり始めた中学生の頃、現代国語の先生が授業の中で

好きな映画だと言って紹介してくれた作品でした。

今は亡き名優ロビン・ウィリアムズの素晴らしい演技に毎回涙がこぼれてしまいます。

愚かな人間の過ちに対して、辛辣ながらも希望を感じさせてくれる物語。

その奇抜で風変りで温かい作品のテーマには何度も救われてきました。

正に自分にとって特別な映画の一本なのです。

人間は長い人生の中で何度も過ちを犯します。

それが取り返しの付かない結果を及ぼす事もあります。

しかし苦しみの果てに自分自身と向き合い、

真摯に目の前の現実に取り組んでいれば、

いつの日か過去を乗り越えて前に進む事が出来る。

そんなメッセージが込められた素晴らしい作品なのです。

映画は人生を変える力がある。

そう思わせてくれた映画でした。

イギリスで絶大な人気を誇っていたコメディ集団「モンティ・パイソン」に於いて、

独特の風刺アニメーションを制作していたテリー・ギリアム。

ナンセンスでシュールなコメディを得意としていた彼のキャリアの中でも、

脚本に携わらずに演出に専念した珍しい作品でもあります。

余りに独自の演出スタイルを貫く事で、

スタジオの重役達と度々衝突してきたテリー・ギリアム。

そんな彼がこの作品で自分自身と重ねる様に描いたのが、

自らの驕りで悲劇を起こし、そのトラウマに苦しむ主人公の元人気ラジオDJだったのです。

人生は時に辛辣に襲い掛かる

画像引用:© 1991 TriStar Pictures, Inc. All Rights Reserved.

物語の主人公ジャックは過激なトークが売りの人気ラジオDJでした。

しかしキャリアの絶頂の中、彼の不用意な発言が引き金となり、

陰惨な殺人事件が起こってしまいます。

そして大きなショックを受け、

無気力なヒモ生活に甘んじる様になったジャックの前に現れたのが、

ロビン・ウィリアムズ演じるエキセントリックなホームレスのパリーだったのです。

パリーは突飛な言動から精神を病んでいる様に映りますが、

実はジャックが原因の殺人事件によって愛する妻を失った男だったのです。

数奇な運命で結ばれた二人は次第に打ち解け絆を深めていきます。

そしてパリーが密かに想いを寄せる女性との仲を取り持つ計画を立てていくという展開に。

映画には如何にもテリー・ギリアム監督らしい過剰でファンタジックな描写もありますが、

登場人物の感情の機微を丁寧に描いていて、自然と感情移入してしまいます。

ニューヨークのダウンタウンの活気溢れる様子や、

そこに暮らす市井の人々の生き生きとした様子が実に立体的に描かれています。

それぞれ辛辣な運命に大きな傷を持つ登場人物達が、

互いに思い合って相手の世界を肯定していこうとする姿が、

実に滑稽ながら感動的なのです。

一見風変りな人の中にも、

様々な理由や拘りがあるものです。

それを頭ごなしに否定するのでは無く不格好ながらも寄り添う事で、

奇跡の様な日々を作り出していくのです。

これ程までに希望的で、真っ直ぐな感情を映画で描く事は、

もしかしたら後にも先にもテリー・ギリアムにとって唯一の作品かも知れません。

だからこそいつも以上に深く心をえぐる作品になったのかも知れません。

過去の大ヒットおつまみ

今日のおつまみは【揚げ豚と茄子の梅肉ソース】です。

これは15年以上前に大ヒットしたメニューなのです。

当時は頻繁に食卓に上っていたおつまみも、

気が付くと忘れ去られていたりします。

今回は懐かしい映画と共に嘗ての黄金レシピを再現。

変わらぬ旨さに舌鼓を打ちました。

豚の薄切りを醤油・酒で下味を付けて片栗粉で揚げ、

茄子の素揚げと生野菜と共に盛り付け、

ソースは叩いた梅肉を酒と味醂でのばしたもの。

さっぱりとしていて、ボリュームもある大満足の一皿です。

何の為に生き、生かされるのか

画像引用:© 1991 TriStar Pictures, Inc. All Rights Reserved.

多くの人は自分の力で社会的な地位を得て、

生活を成り立たせていると思って生きています。

そこにプライドを持ち、足を踏ん張って辛い事にも耐えていくのです。

しかし一旦成功を手にすると、

自分は人よりも多くの事が許されているのだと過信してしまいます。

それはその人が何も特別に悪人であるのでは無く、

至って当たり前の人間の姿であると言えるでしょう。

主人公のジャックが犯した罪も、

いつものジョーク、いつものキャラクター、いつもの態度だったのです。

しかし時にそれは取り返しの付かない事態を引き起こしてしまう事もある。

そうなった時に人は初めて何の為に生き、生かされているのかを考えるのです。

一体そこに意味はあるのだろうか?

もし生きる事に意味があるのだとすれば、

それは唯一つ、人の為に何かを為すという事だけなのでは無いでしょうか?

その事で初めて人は生き甲斐というものを感じられるのだと思います。

ジャックは自分の所為で人生を棒に振ってしまったパリーに、

何が出来るのかを必死に考えます。

そのことによって自分自身をも救う事が出来るのだと、

直感的に気が付いたのかも知れません。

映画のタイトル【フィッシャー・キング】とは、

アーサー王伝説に登場する「漁夫王」の事です。

ロンギヌスの槍によって癒えない傷を負ってしまった王の為に、

勇者が旅の果てに「聖杯」を手にして王の傷を癒し王国を救うという話です。

妻を目の前で殺されてしまったパリーの癒えぬ心の傷を癒す為に、

ジャックは自分のキャリアを捨てて「聖杯」を手に入れようとする。

現代の御伽噺として良く出来たファンタジーの様ですが、

誰かの為に身を捨てる覚悟で事を為すという、

これ以上無い様な生きる意味を見出した男の禊の旅でもあった訳です。

過ちを乗り越えたい時に観る映画。

兎角コンプライアンスやスキャンダルに厳しくなった現代に於いて、

何かでしくじってしまった人間に対する風当たりは厳しくなる一方です。

しかし過ちは乗り越える事が出来るのだとこの作品は教えてくれます。

それが自分の罪の意識を軽くする為では無く、

本当に相手の為を思っての行為であるのなら、

そこには人生を変える力が本当にあるのかも知れません。

稀代の物語作家であるテリー・ギリアムの魔法によって、

現代の厳しい社会で生きる全ての人間に、

ささやかながらも「希望」が与えられる様な作品になっています。