恋愛

映画【愛がなんだ】おつまみ【コーンビーフ】

画像引用:©2019映画「愛がなんだ」製作委員会

この映画はこんな人にオススメ!!

●不器用な恋愛に共感したい人

●愛されるより愛したい人

●リアルな恋愛の機微に触れたい人

●愛が何なのか知りたい人

タイトル愛がなんだ
製作国日本
公開日2019年4月19日
上映時間123分
監督今泉力哉
出演岸井ゆきの、成田凌、深川麻衣、
若葉竜也、穂志もえか、中島歩

愛のどうしようもない謎に迫りたい時に観る映画

恋愛映画は共感が肝となる。

登場人物の誰がしかに自分を重ね、

その一挙手一投足に一喜一憂する。

所詮は全てがフィクションの中の出来事なのに、

まるで自分事の様に感情移入させればそれはもう大したもの。

その時点でその映画はその人にとって特別な一作になってしまう。

恋愛映画とはつまりは「自分」を観る映画と言えるのだろう。

女性の日常の機微を丹念に描き、

その葛藤や揺らぎをリアルに描写してきた直木賞作家・角田光代。

女性読者の圧倒的な共感を得てきた日本を代表する女流作家の作品を、

男性である今泉力哉監督がどう演出するのか。

登場人物達の何気ない瞬間や表情を捉える事に定評のある演出家だが、

今作でもその独特の視点が実に没入感のある物語を作り上げている。

自然体の演技を得意とするキャスト達のアンサンブルは正にリアルそのもの。

感情の起伏を助長するのではなく、

あくまでも日常を丹念に描く事で外側から人物の内面を炙り出すかのようだ。

生活感が人物の存在感を作り出し、

台詞以外の細やかな視線のやり取りで感情を見事に表現する。

観客をまるでその場に居合わせている様な感覚にさせ、

彼等の言葉が真っ直ぐ身体に入ってくる様に感じさせてくれる。

これはきっと学んで身に付く様なテクニックなどでは無く、

持って生まれた感覚的なものなのではないだろうか。

作家にとっての文体の様なものが、

今泉監督には早い段階で形作られている様だ。

誰が為の愛なのか

画像引用:©2019映画「愛がなんだ」製作委員会

物語の主人公テルコ(岸井ゆきの)は所謂恋愛依存症気味のアラサー女子。

自分の事より相手を優先する気遣い屋で、

そんな所が皮肉にも恋人から疎まれてしまう。

愛されるよりも愛したいという典型で、

気が付けば相手にとって都合の良い女になってしまっている。

対するマモル(成田凌)は一見ナルシストの様に見えて、

その実自分に自信が持てない内弁慶な性格の男子。

二人は恋人未満の関係性のまま、

ズルズルと互いの望みの叶わぬもの所ばかりを見て過ごしている。

愛とは一方通行でしか無い物なのか。

それを幸せと呼ぶことが正解なのか。

答えは容易に与えられるものでは無い。

がしかし人間の底深い生命力は、

愛がなんだという投げ槍で否定的とも取れる文句の後に、

がしかしそれでも生きていくのだという、

一種の開き直りとも取れる力強さも感じさせてくれるのだ。

決して振り向かない相手に対する愛であっても、

それがいつか振り返ればやっぱりそれも愛であったのだと

笑い話になったりもする。

それは他人には理解不能な宇宙の真理の様なものなのだ。

映画では主人公の恋路とは別に、

幾人かの生き方や価値観が言及されるが、

その全てが結局は他人には理解されない。

それぞれがそれぞれの愛に生きていて、

そうやって成り立つ世界全てが今日も変わらず続いていくという話なのだ。

おつまみがなんだ

今日のおつまみは【コーンビーフ】です。

コンビーフの誤植でありません。

文字通り、コーンとビーフなのでコーンビーフ。

至極単純にコーン缶と牛肉薄切りを焼肉のタレで炒めただけという一皿。

おつまみがなんだと自棄になった訳でもありません。

ただただこういったシンプルに腹に溜まってアテになってくれる

おつまみが好みなだけなのです。

いつまで経ってもお子ちゃまな胃袋を愛しく思います。

愛がなんだ

画像引用:©2019映画「愛がなんだ」製作委員会

この映画を観て報われない主人公に同情したり、

切ない恋の物語だと感じる人は少ないと思う。多分。

大方の人はテルコの一途な想いの強さに、

ゾッとする様な恐怖を感じるのでは無いかと思う。

マモルの傍にいられさえすれば、

自分もどうなってもいいという究極の考え方に帰着してしまっている。

これはもう笑い話では済まない。

作中最も印象的だったテルコの台詞、

「私はマモちゃんになりたい」

愛の見返り所か、相手そのものになってしまいという感情。

これは中々に奇天烈な台詞だと思う。

恋愛依存とか、愛している自分自身に酔っているとかいう次元では無い。

他者と自分との境界を超越した感情、

言葉では表現できない人間の根源的な生存本能の様な

鮮烈な印象を与える台詞なのでは無いだろうか。

物語が進むにつれ、

主人公のテルコというキャラクターが段々と怪物じみた

理解不能な存在へと膨れ上がっていく印象もある。

健気で一途なのだろうが、

周りの状況が如何に変化しようとも、

周りの人間が何を助言しようとも、

己の生存の為に全てを投げ打つ様な強烈な生命力。

それがこの映画の異質な魅力になっているのでは無いだろうか。

愛のどうしようもない謎に迫りたい時に観る映画。

主演の岸井ゆきのの怪演がやはり凄まじい。

役の芯をしっかりと捉えた表現力は、

同世代の俳優の中でも抜きん出ているのでは無いだろうか。

相手役の成田凌の飄々とした自然体の演技も良い。

そして脇役だが若葉竜也や江口のりこの演技も

実に物語に説得力を与えている。

今作を経て更に日本映画に欠かせない存在となった彼等の、

見事なアンサンブルを是非体感してみて欲しいと思います。