画像引用:(C)2022「ある男」製作委員会
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【ある男】です。
平野啓一郎の原作小説を映画化。
壮絶な過去を持ったある男の消息を追うサスペンスであり、
人間の存在の本質に迫った傑作ドラマです。
この映画はこんな人におススメ!!
●別人になってみたいと思う人
●人生をやり直したい人
●自分の存在に疑問を感じる人
●幸せの本質を考えたい人
タイトル | ある男 |
製作国 | 日本 |
公開日 | 2022年11月18日 |
上映時間 | 121分 |
監督 | 石川慶 |
出演 | 妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝、 清野菜名、眞島秀和、真木よう子、 仲野太賀、柄本明 |
別人になって人生をやり直したいと思った時に観る映画
今回は中々に重たいテーマを扱った作品です。
物語の縦軸には謎を解明するサスペンス要素があり、
その根底には社会の歪な構造に対する問題提起もあります。
骨太のドラマでありながら、エンターテイメント性も兼ね備えた、
久し振りに見応えのある伝統的な邦画作品と言った風格が感じられます。
監督は【愚行録】や【蜂蜜と遠雷】で国内外の映画賞を数多く受賞している
実力派の石川慶。
芥川賞作家・平野啓一郎のベストセラー小説を繊細な演出で描いていきます。
また出演陣の妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝の3人も、
それぞれの登場人物が抱える闇を見事に演じ切っていて、
その存在感と共に忘れ難い印象を残しています。
社会の片隅に、人には言えない過去を背負った人間達の生活が確かにあるという事。
当たり前の幸せに、どうしても手が届かない人達がこうして存在するという事。
そのヒリヒリとしたリアリティがもたらす人生の悲哀が、
観る者の心にとてつもなく重い命題を突き付けます。
「生きる事の意味とは何なのか?」
決して観ていて心躍る映画ではありませんが、
普段の生活では中々感じ得ない様な人生の意味を、
考えられる様なキッカケになる作品だと思います。
不確かな存在
![](https://eigahitotsumami.com/wp-content/uploads/2023/10/FZYwPITagAA0ngE-1-1024x718.jpg)
画像引用:(C)2022「ある男」製作委員会
物語は不慮の事故で亡くなった夫が全くの別人であったという
ミステリーが主軸になります。
窪田正孝演じる大祐は、安藤サクラ演じる里枝と結婚し幸せな生活を築きますが、
仕事中の事故で帰らぬ人になってしまいます。
悲しみに打ちひしがれる中、更に信じられない事実が明らかになります。
長年疎遠だった夫の兄によって、遺影の写真の人物が全くの別人である事が分かるのです。
亡くなった夫が、どこの誰であるか分からないという不安。
それは想像を絶する喪失感だと思います。
名前も素性も偽り、別の人物に成り済まして生きていた男。
彼は一体誰だったのか?
そして何故別人になって生きていたのか?
この映画は事件加害者の家族への偏見や差別、
または在日韓国人への差別がどんな風に人間の人生に影響を与えるかという、
社会問題に言及しています。
それは当事者にしか感じ得ない様な言語化不可能な辛辣さがあるのだと思います。
しかし我々がそれらを自分と関係の無い事と素通りしてしまうのと、
こういった作品を通して少しでも知るという事の間には、
雲泥の差があると思うのです。
人間とは本当に些細な事でその存在が簡単に揺らいでしまうものです。
普段、差別などとは無縁と思って生きている人でも、
何のキッカケで差別を受けたり、あるいは差別をしたりするかは分からないのです。
この映画は我々が如何に不確かな存在として社会に生きているかという現実を、
思い出させてくれる様でもあります。
秋の味覚
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今日のおつまみは【サツマイモとミートボールのトマト煮】です。
いよいよ食欲の秋の到来ですが、
サツマイモは本当に優秀な食材ですよね。
自然の甘味がいつものメニューにアクセントを付けてくれたりします。
これも茄子やピーマンでも美味しいと思うのですが、
サツマイモが相方になるだけで、グッと特別感と季節感がアップします。
この名脇役振りは映画の名バイプレイヤーの様。
時には主役を食った様なインパクトを残したりする、
そんな秋の味覚がこれからも楽しみです。
この社会で確かなもの
![](https://eigahitotsumami.com/wp-content/uploads/2023/10/20221130172748.jpg)
画像引用:(C)2022「ある男」製作委員会
我々のアイデンティティとは何でしょうか?
自分が確かに自分であると証明出来るもの。
それは戸籍や住民票の様なものでしょうか?
家族や友人からの認知でしょうか?
この映画はある男の人生に起こった出来事を紐解いて、
人間の存在が如何に不確かで儚いものであるかという事を突き付けています。
しかしそれと同時に、自分がどうやって生きるかという事で、
どんな人間にもなり得るのだという事も描いているのです。
他人に成り済まして違う人間になったのではなく、
誰かの為に生きようとした事で、違う自分になれたのです。
社会の中で自己の存在証明を示す事は困難であったとしても、
一人の人間の心の中に確かに存在したという事が、
本当に大切な事だったのでは無いでしょうか。
別人になって人生をやり直したいと思った時に観る映画。
人生をやり直したいと思う事は誰しも経験がある事でしょう。
生まれた環境や、育った境遇。
不運に見舞われ、不幸を背負い、圧し潰されそうになる事もあります。
どうして自分だけがと、世間を呪ってしまう事もあると思います。
しかしこの映画は、そんな絶望の淵を生きて来た人間が、
自分の優しい部分を見せれる相手に巡り合えた物語なのです。
不幸にも幸せな時間は長く続きませんでしたが、
他人の人生を生きて来たある男が、本当に愛する存在を持てたという事実。
それが本当に胸を打つ事実として真っ直ぐに描かれた作品であると思います。
主演の3人の素晴らしい演技もまさに必見だと思います。
心に残るこの映画を、秋の夜長に是非おススメ致します。