画像引用:IMDb
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【her/世界でひとつの彼女】です。
ミュージックビデオ出身のスパイク・ジョーンズ監督作品。
色彩豊かなデザイン、光彩溢れる映像。
「A.I」との恋愛を叙情的に表現した、
全く新しいハイセンスな映画になっています。
この映画はこんな人におススメ!!
●オシャレな衣装、インテリアが見たい人
●新しい時代の恋愛映画が見たい人
●バーチャルな世界が好きな人
●自分の人生にリアリティが持てない人
タイトル | her/世界でひとつの彼女 |
製作国 | アメリカ |
公開日 | 2014年6月28日(日本公開) |
上映時間 | 120分 |
監督 | スパイク・ジョーンズ |
出演 | ホアキン・フェニックス、ルーニー・マーラ、 エイミー・アダムス、クリス・プラット、 スカーレット・ヨハンソン |
自分の居場所に迷った時に観る映画
今作は「愛」を描いた恋愛映画であり、
近未来の世界を描いたSF映画でもあります。
そのテーマには都会生活者の孤独があり、
また人間とは何者であるかと言う、
不変の問い掛けを持った哲学的な要素もあります。
環境破壊や格差問題によって暗い未来が描かれる事の多いSF映画にあって、
この作品は快適な都市サービスと明るい色調で洗練された未来がデザインされています。
一見、人々は多様化された社会の中で何不自由無く暮らしている様に見えるのですが、
物語が進むにつれ人間が人間である故に派生する「エラー」や「バグ」、
孤独や不寛容がどんな世界でも人間の心を蝕むという皮肉が浮き彫りになってくるのです。
どんなに高度な法律や技術が実現しようと、人間の欲望が満たされる事は無い。
この映画はやがて来る未来の明るい面を描写しながらも、
今この時を生きる私達に自分自身と向き合うキッカケをくれる作品なのです。
自分の居場所に迷い、生きる事に疲れてしまう様なそんな時。
自分が何者で、何を愛する人間であるのか、
そっと寄り添いながら共に思考してくれる様な物語。
人間とA.Iの恋愛と言うセンセーショナルな謳い文句にはやや似付かわしくない様な、
普遍的な「愛」を描いたシンプルな恋愛映画でもあるのだと思います。
どんな形の愛でも人は成長する
画像引用:IMDb
主人公のセオドアは所謂、上位中産階級のインテリタイプ。
良い地域の良い部屋に住み、趣味の良いインテリアと衣服を纏い、
高給の仕事で、まずまずのキャリアを築いている。
都会の洗練された生活を営み、友人や同僚にも恵まれている様。
しかし彼は幼馴染だった妻と離婚調停中で、
新しい恋愛に対して臆している所があります。
過ぎ去った物に捉われたまま、前へ進もうという勇気が持てないでいるのです。
そんなセオドアを変えていくのが、人工知能を搭載した最新型のO.Sなのです。
意思や感情を持った様に、滞りなく会話するO.Sは、
実体が無いだけで殆どが人間と変わらない様に感じます。
自らに「サマンサ」と名付け、あっと言う間にセオドアにとって無くてはならない存在に。
やがて2人の間には恋愛感情が芽生えてきます。
この映画の肝は主人公のセオドアが
手紙の代筆サービスの会社で仕事をしているという設定です。
依頼者の人柄に憑依し、その気持ちになって手紙の内容を考えるのですが、
そこにはやはりセオドア自身の価値観や人生観が滲み出ているのです。
一見、感動的でパーソナルな文面なのですが、
過去の素晴らしかった「愛」に固執し、
そこから出ていく事を恐れ、拒むセオドアの気持ちが透けて見えてきます。
自分の大切な人が、目の前で成長し変化していく。
その中ですれ違い、自分への愛情が冷めていってしまうのを
止める事が出来なかった過去。
そこから先へ進む事が出来ずに、思い出の安寧の中に身を沈めていたのが、
現実の彼だったのです。
そんな彼を変えたのが、A.Iであるサマンサだったのです。
おつまみの居場所
今日のおつまみは【タコとジャガイモのオイル焼き】です。
海鮮食材と野菜のシンプルな料理に外れはありません。
塩・胡椒とエキストラバージンオリーブオイル。
隠し味は大量のニンニクパウダー。
毎夜、食卓を飾るおつまみメニューの数々。
映画のお供、お酒のお供。
いつも我々の間で美味しそうな湯気を立てる一皿。
おつまみの居場所が我々の居場所です。
自分の居場所は過去には無い
画像引用:IMDb
サマンサは常に新しい経験と情報によって自身をアップグレートし続ける、
人工知能です。
しかもそれはオーナーであるセオドアの要求を学び、
セオドアの役に立つ為に成長していくのです。
セオドアがサマンサに要求したのは人間の様になる事でした。
人間の思考を理解し、人間の様に愛する事。
それはセオドアが嘗て妻のキャサリンに求めてきた、
自分の思い描く理想の人間像でした。
嘗て深い愛情で結ばれた相手に、抱き続けてきた妄想。
自分勝手な理想、現実離れした空論。
それがキャサリンを追い詰めていた事に気が付かず、
A.Iのサマンサにも同じ過ちを繰り返してしまうのです。
要求通り「愛」を知り、人間以上に人間を知る様になったサマンサは、
元の人格のままでいる事は出来ませんでした。
超高性能のコンピューターであるサマンサは驚くべき速さで成長していくのです。
もう、「愛」を知った彼女を同じ場所に留める事は出来ません。
苦しんだ末に、旅立つ事を選択するサマンサ。
セオドアは自分が周りの人間を振り回し続けて来た事に、
漸く気が付きます。
そして、嘗ての恋人であり、妻であったキャサリンにメールを書くのです。
ありのままの彼女を、認められなかった自分の過ちを謝り、
彼女との決別を受け入れ、前に進んでいく決意。
自分の居場所は過去には無いという事を受け入れるのです。
自分の居場所に迷った時に観る映画。
人は誰しも弱い生き物で、A.Iの様にはポジティブになれません。
膨大なデータから解決策を探る事も出来ませんし、
肉体の劣化が精神を蝕んでも行くでしょう。
でも、自分の居場所を作る事が出来るのも、
その弱い自分自身しかいません。
それは、自分のその弱さを認める事からきっと始まるのでしょう。
セオドアの悲しみに澄み切った様な眼差しが、
我々にほんの少しの気付きと勇気をくれるような、
そんな映画だったと思います。