ヒューマンドラマ映画

映画【パターソン】おつまみ【ゴルゴンゾーラバゲット】

画像引用:(c) 2016 Inkjet Inc. All Rights Reserved.

この映画はこんな人におススメ!!

●ジム・ジャームッシュ監督のファンの人

●平凡な日常を慈しみたい人

●詩に興味がある人

●じっくりと自分と向き合いたい人

タイトルパターソン
製作国アメリカ、ドイツ、フランス
公開日2017年8月26日(日本公開)
上映時間118分
監督ジム・ジャームッシュ
出演アダム・ドライバー、ゴルシフテ・ファラハニ、
バリー・シャバカ・ヘンリー、永瀬正敏
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自分の世界を慈しみたい時に観る映画

1980年のデビュー作【パーマメント・バケーション】以来、

社会の片隅にいるアウトサイダー達にスポットライトを当て続けて来た

ジム・ジャームッシュ監督。

世の中の混乱や断絶や不寛容とも一定の距離を保ち、

あくまでも「個」の抱える孤独や希望を独特の詩的表現で描いてきた稀有な作家。

そんな彼の最高傑作と個人的に感じるのがこの【パターソン】です。

そもそも映画とは相対的に点数などで評価し得るものでは無いので、

完全に個人的な好みの領域になってきますが、

この作品は隅々に至るまで愛さずにはいられない「刺さる」作品でした。

主人公のパターソンという男に強烈にシンパシーを感じてしまうのです。

彼の境遇や佇まい、生活のパターンやその趣向に多くの共通点を感じて、

とても他人事とは思えない所があったのです。

長く映画を観続けていると、こういったご褒美の様な作品に出会えたりします。

それはこの世界において極些細な取るに足らない出来事なのかも知れませんが、

やはり人生における奇跡と言っても良い程の喜びでもあるのです。

ニュージャージー州のクラシカルな街並の中でバスの運転手をしている寡黙な男。

彼は架空の人物で勿論実際には存在しないのですが、それは余り重要な事ではありません。

何かしらの芸術作品の中に自分を投影出来る人物と出会うという事は、

それだけで何かしらの成果に匹敵する様な事なのだと思います。

それが自分の世界を慈しむという事なのでは無いでしょうか?

日常は奇跡で作られている

画像引用:(c) 2016 Inkjet Inc. All Rights Reserved.

主人公のパターソンは自分と同じ名前のパターソンという街でバスの運転手をしています。

愛する妻のローラとブルドッグのマーヴィンと3人で慎ましい生活を送っています。

仕事の為毎朝早く目覚め、眠っている妻に優しくキスをし、

小さなカップでシリアルを食べて、一日の仕事に出掛ける。

毎日様々な乗客の他愛ない世間話に耳を傾け、人知れずほくそ笑む。

公園から見える美しい滝を見ながら妻の手作りの昼ご飯を食べ、

仕事が終われば真っ直ぐ帰宅する。

妻と一日の出来事を話しながらの夕食を終えると、

マーヴィンと夜の散歩に出掛けその途中でバーに立ち寄り一杯のビールと世間話を楽しむ。

どこにでもある、特筆すべき事の無い様な日常。

しかしその平穏で淡々とした繰り返しの日々の中にも、

目を凝らし耳を澄ませば沢山の驚きと発見があるのです。

そしてパターソンはその日常の機微を、

秘密のノートの中に「詩」として記録していくのです。

奇をてらう事無く、飾らない言葉でありのままの感情と風景を描写する。

自由な思索は記憶や次元を駆け巡り、美しい旋律となってノートに宇宙を描いていきます。

映画はパターソンのバックボーンや人物描写をあえて描きません。

寡黙で優しい彼がどんな人物で何を考えているのかは、

ただひたすらにノートに書き連ねられた「詩」によってのみ語られるのです。

一見不愛想で、不器用な人物に見えるのですが、

話す相手の眼をじっと見つめ優しく微笑むその表情に、

彼の思慮深さと感性の豊かさが滲み出ているのです。

日常のほんの些細で見逃してしまう様な物事に、

光を当てて言葉として掬い上げていくパターソン。

それは我々の毎日にも同じ様に、無限の可能性がある様な気持ちにさせてくれます。

チーズの魔力

今日のおつまみは【ゴルゴンゾーラバゲット】です。

近所のスーパーで期限間近のゴルゴンゾーラチーズがまさかの半額に!

ゴルゴンゾーラチーズが大好物のころっぷは狂喜乱舞。

そしてやっぱりシンプルにバゲットに乗せてオーブンで焼くのが一番!

これは白ワインがいくらあっても足りません!!

ポイントはハチミツを垂らす所。

塩味と甘味の絶妙なバランスが最強です。

白紙のページの可能性

画像引用:(c) 2016 Inkjet Inc. All Rights Reserved.

この作品を観ていると「映画」も「詩」も過ぎ去っていくものを

哀悼の意を持って眺める事によって生まれ出る産物なのだと感じました。

私達は望まずとも「死」に向けてその身体と心を消耗しながら前進し続け、

どんな事を成し遂げようとまた「無」に帰す事を宿命付けられている生き物なのです。

でもそれだからこそ、一瞬を繋ぎ止めた言葉や映像に永遠性を感じるのだと思います。

ある日パターソンは愛犬のマーヴィンに「詩」を書き溜めた秘密のノートを

食い破られてしまいます。

そしてそれを慰める妻に彼は言います。

「ただの言葉さ。いつかは消える」

彼にとって大事なのは、これまで書き溜めた「詩」なのでは無く、

これから書き留めるであろう「言葉」の中にあるのかも知れません。

散歩の途中に偶然出会った日本人の詩人から白紙のノートを贈られたパターソンは、

翌朝新たな日常を書き留める為に希望に満ちた表情で起き上がります。

彼の慎ましい日常の前には、常に真新しい白紙のページが待っていてくれたのです。

その自由で、無限な喜びが映画のラストで私達の心にも細やかな勇気を与えてくれます。

自分の世界を慈しみたい時に観る映画。

ジム・ジャームッシュ監督の独特の感性で綴られたこの作品には、

「芸術」における極当たり前の日常性が溢れています。

特異な境遇や、鮮烈な体験や、高等教育など無くても人は詩人になれる。

ただあるがままに日常に根を張る事が、生きる喜びの表現になり得る。

代り映えの無い毎日に、実は2つとして同じ景色は存在しない。

その一瞬一瞬にしか有り得ない「感情」を自由に表現出来る事の幸せ。

この強烈にシンパシーを感じるパターソンという男に、

改めて創作の喜びを教えて貰った様な気持ちになりました。

自分自身も小説を書き始めたりした事で、

よりこの作品における表現の普遍性に心が動かされました。

感謝を込めてこの映画をおススメ致します。