SF映画

映画【スローターハウス5】おつまみ【旨だれ塩鶏】

画像引用:IMDb

こんにちは!ころっぷです!!

今日の映画は【スローターハウス5】です。

アメリカの小説家カート・ヴォネガット・ジュニアが、

1969年に発表したSF小説を原作にした映画です。

時間旅行によって人生の様々な場面を無作為に体験する主人公。

戦争での悲惨な体験や、異星人に誘拐されるなど

破天荒な人生がコラージュされた様な複雑怪奇な物語。

未知の映画体験が出来るカルトSF作品のおススメです!

この映画はこんな人におススメ!!

●一風変わったSF作品が観たい人

●第二次世界大戦について知りたい人

●カート・ヴォネガットの小説が好きな人

●人生観に刺激が欲しい人

タイトルスローターハウス5
製作国アメリカ
公開日1975年4月12日(日本公開)
上映時間104分
監督ジョージ・ロイ・ヒル
出演マイケル・サックス、ロン・リーブマン、
ヴァレリー・ペリン
created by Rinker
¥2,475 (2024/11/21 11:55:10時点 楽天市場調べ-詳細)

人生観に刺激を受けたい時に観る映画

今回は映画ファンよりも小説好きの人にお馴染みのタイトルかも知れません。

近代アメリカを代表する作家、カート・ヴォネガット・ジュニアの

有名なSF小説を、【明日に向かって撃て】のジョージ・ロイ・ヒル監督が

映画化した作品です。

この小説はアメリカで長い間、図書館や教材の類から排斥されてきた過去があります。

反社会的な禁書とされ、教育上宜しく無い本と見なされてきた様です。

確かにカート・ヴォネガット・ジュニアの小説は辛辣な皮肉に満ちていて、

権力者に対する揶揄や冷やかしの描写があるのも事実。

余りに過剰な反応と大きな影響をアメリカ社会に与えたこの小説は、

映画に置き換えられても、その強烈な物語のメッセージ性は今日まで色褪せていません。

戦争がもたらす決定的な悲劇と、人生における避け難い喜劇性。

SFというジャンルの持つ特異性を多いに活用し、

人間の本質を鋭く描き抜く。

アメリカ大衆文学の大いなる裾野を堪能出来る、

ちょっと普通では無いカルトSF映画に肩まで浸かれる隠れた名作だと思います。

人生を俯瞰する視点

画像引用:IMDb

この物語は少し変わった構造をしていまして、

主人公のビリー・ピルグリムは無作為に過去・現在・未来を

行ったり来たりする特異な状況に置かれています。

今流行のタイムリープ物の走りと言えるのかも知れませんが、

第二次世界大戦下のドイツや、戦後のアメリカでの新婚生活や、

異星人に誘拐されて宇宙の彼方のトラルファマドール星に隔離されたりと、

時系列も状況も滅茶苦茶に飛びまくります。

この混沌とした物語の氾濫が映画を難解で取っ付き難い感じにもしているのですが、

一旦、そういうものだと腹に据えてみると、

信じられない位にシンプルな物語として受け入れられたりするから本当に不思議なのです。

人生のあらゆるタイミングを俯瞰的に生き続けるビリー。

何が起きても、どんな運命であろうと目まぐるしく時空を飛び続ける主人公は、

あるがままに物事を受け入れていく大切さを次第に学んでいきます。

目を覆いたくなる様な惨劇。

皮肉な運命。

信じられない様な不幸。

人生における困難に心を痛めあがなうのでは無く、

静かに受け入れていく。

そうして繰り返される時間の中で美しい物だけに視線を集中していく。

世界の悲劇を1人の人間が変える事は出来ませんが、

それぞれの人生が自然な形であるべきものとして存在する世界こそが、

「平和」というものに近い様に感じます。

夏の滋養強壮

今日のおつまみは【旨だれ塩鶏】です。

連日の酷暑で食欲も落ちてしまう季節ですが、

体は常に栄養を欲しています。

そんな時にピッタリのメニューです。

鶏モモ肉は水からゆっくりと弱火で塩茹でします。

タレは大量の生姜みじん切りに、

砂糖・醤油・酒・胡麻油を混ぜ合わせたもの。

素揚げしたカボチャと茄子と共にさっぱりと食欲をそそる一品になりました。

人生とはそういうものだ

画像引用:IMDb

カート・ヴォネガット・ジュニアの原作小説に、

繰り返し出てくる印象的なフレーズがあります。

「そういうものだ」という言葉です。

物語の中で誰かが死んだり、それが暗示される描写があったりすると、

必ず「そういうものだ」という言葉がポツリと呟かれます。

まるですべてを諦めきってしまって、興味を失ってしまっている様にも

受け止められる言葉です。

しかし人生における辛辣な出来事に心を挫くのでは無く、

そのまま一旦受け入れた上で、

別の豊かさに意識を移していくという事の重要性を示唆している様にも思えます。

時空を無作為に飛んで人生の様々な光景を何度も経験する主人公は、

「そういうものだ」という心の平穏と、

その中で世界の悲劇と暴力を生み出す側には組み入れられないという意思を持って、

人生を謳歌する大切さを体現していきます。

ここに徹底的にシニカルなヴォネガットのヒューマニズム、

そして優しさと豊かな人生観がある様な気がします。

映画では宇宙で唯一「自由意志」を持った存在が人間であると言及した場面があります。

高次元に生きるトラルファマドール星人に誘拐され、

彼等の動物園で鑑賞対象として生活する主人公のビリー。

随分と独創的な設定ですが、人間が本来の自由意志で生きる力強さが、

遠い未来や遥か宇宙の彼方に轟く様子は実に痛快でユーモラスな出来事だと思います。

人生観に刺激を受けたい時に観る映画。

耐え難い現実から逃避する事は、決して批難されるべき事ではありません。

心を挫いてまであがなう価値のある物は、この世に無いのかも知れません。

SFという突飛な設定を可能にする舞台で繰り広げられるドタバタ劇が、

我々に教えてくれるのはいかに人生を味わうかという

至ってシンプルなロジックです。

20世紀は大量殺戮の時代でした。

ドレスデンの13万人。

広島の32万人。

長崎の18万人。

これらを二度と繰り返さない為に、人の自由意志による空想の力、

想像の力が大切なのでは無いでしょうか。

そしてその想像の力を「合理的な社会」や「明るい未来」の為なんかじゃなく、

どこまでも自分の心の平和の為に使用出来る様に祈りを込めて。