画像引用:IMDb
こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)】です。
鬼才アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督のオスカー獲得作品です。
この映画はこんな人におススメ!!
●未知の映像体験を求めている人
●ブロードウェイの内幕物に興味がある人
●人生、もうひと花咲かせたいと思う人
●普通の映画では満足出来なくなってしまった人
タイトル | バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) |
製作国 | アメリカ |
公開日 | 2015年4月10日(日本公開) |
上映時間 | 119分 |
監督 | アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ |
出演 | マイケル・キートン、エドワード・ノートン エマ・ストーン、ナオミ・ワッツ、ザック・ガリフィアナキス |
現代最高の映画監督の作品を観たいと思った時に観る映画
今回の映画はジャンル分けに非常に悩む作品です。
そもそも多様なテーマが詰め込まれた映画を一つのジャンルに押し込むこと自体、
ナンセンスで無意味なのかも知れませんが、一応今回は「コメディ」という事にしました。
辛辣な物語ではあるのですが、個人的に「笑える」映画だと思うからです。
そして「笑ってもらおう」という作為を、大いに感じるからです。
監督のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥは「バベル」や「レヴェナント」で
高い評価を得ている、現代映画界において最高峰のクリエイターです。
彼の作る映画は、常に人間の暗部に当てたスポットライトをスクリーンの鏡に
反射させて我々に照らし付けます。
観ていて辛い、息苦しさを感じる事もある作家です。
しかし同時に他では得難い充実感をもたらす監督でもあります。
我関せずで素通りする事など不可能な、観客の心を鷲掴みにするその握力が、
計測不能な程に強烈な映画監督なのです。
映画の中に閉じ込められる
映画は落ち目のハリウッドスターが、心機一転でブロードウェイ舞台興行に挑むお話。
世間から忘れられ、妻に逃げられ、娘にグレられ、家を抵当に入れ最後の大勝負を打つ。
次々に降りかかる災難に精神を病み、幻覚・幻聴で夢現の境も怪しい有様。
それでも舞台の成功に向けて七転八倒する様を、実に滑稽に、時にシリアスに、
全編ワンカットの様に見えるトリッキーな撮影で臨場感たっぷりに描いていきます。
迷路の様な劇場のバックヤードを、登場人物の動きに合わせてカメラも這い回る。
リアルタイムで物語が進行し、映画を観ているのか、舞台を観ているのか、
あるいは目の前で起こっている現実を直視しているのか観客は混同していきます。
それ程に息詰まる様な切迫感をグイグイと演出していくんです。
この作品の凄さは、時間の流れを恐ろしい位に実感出来る所にあります。
主人公が今観ているものを観て、感じている事を感じる。
この強烈な同調を起こす仕掛けが、高い技術によってもたらされています。
鍋の中のリアリティ
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今日のおつまみは【肉豆腐】です。
大きめにカットした木綿豆腐と豚バラ肉の薄切り。
玉葱と共に醤油・酒・みりんの黄金律でゆっくりと煮込んでいきます。
煮込み料理は往々にして、その出来を素材に掛ける時間に比例させます。
豆腐に閉じ込められた豚バラ肉の旨味は、
鍋の中での時間の流れをリアルに表現しています。
じっと耐えた者の持つ円熟味が、この豆腐の面構えに表れている様です。
二日目の旨さを知っていながら我慢出来ずに平らげてしまうのも、
致し方の無い所です。
人生の黄昏に、必死でもがく者を大いに笑う
![](https://eigahitotsumami.com/wp-content/uploads/2022/06/birdman_20150826_17.webp)
画像引用:IMDb
最初にこの映画を「コメディ」であると言いました。
異論はあるかも知れませんが、人が必死に頑張る姿は滑稽でもあります。
更に真剣であればある程、周りは好奇の目で囃したりします。
それは人間の正直な性質でしょう。
まして人生も黄昏に差し掛かった人間が、過去の栄光の未練を引きずり、
無様にもがく姿を笑う事は、正当なリアクションだと思います。
徹底的に追い詰められ、文字通り裸一貫になった主人公の悲哀は、
悲しさの中の可笑しさという原始的な「コメディ」の手本の様でもあります。
失敗した者を笑う。弱い者を嘲る。惨めな者に後ろ指を指す。
これは褒められた行為ではありませんが、人間の本質です。
「コメディ」は差別であり、暴力でもあるのです。
普段我々が意識せずに笑っているその感情の根源にも、少なからず含まれています。
この映画はその「コメディ」の先に、滑稽さの到達点のその先に、
奇跡の様な解放感を描いた作品なのです。
アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督がスクリーンに当てたスポットライトを、
どんな色形の反射像として心に映すかは人それぞれです。
その一時の現像作業は、特別な映画に出会った時のご褒美だと思います。