サスペンス

映画【セッション】おつまみ【生ハムとモッツァレラチーズのサラダ】

画像引用:© 2013WHIPLASH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

この映画はこんな人におススメ!!

●ジャズドラムが好きな人

●音楽の厳しさを体感したい人

●夢を諦めかけている人

●突き抜けたカタルシスに浴したい人

タイトルセッション
製作国アメリカ
公開日2015年4月17日(日本公開)
上映時間106分
監督デイミアン・チャゼル
出演マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、
ポール・ライザー、メリッサ・ブノワ

狂気の世界を覗き見たい時に観る映画

一つの芸事を極めるという事は、

常人には想像の及ばない狂気の世界に

足を踏み入れる事なのかも知れません。

プロジャズドラマーを夢見る一人の青年が見た、

常軌を逸した厳しい世界。

自分だけが特別な才能を持った、

選ばれた存在であると、

不安に足元を掬われそうになる度に、

主人公の青年は己を奮い立たせる為にそう心に誓うのです。

音楽家に限らず、

例えばスポーツ選手なども苛烈な競争の世界に生きています。

結果が全ての世界に於いては、

そこに至るまでの過程は「無」に等しく、

壮絶なプレッシャーの中で勝利した者のみが、

歴史に名を残すのです。

この【セッション】という映画は、

登場人物達の心の葛藤を「言葉」では無く、

「音」で表現しようとしています。

今何を思って生きているのか、

それを伝えるのは「言葉」では無いのです。

全てを犠牲にして成功を掴み取ろうとする野心と、

その中にある疑心暗鬼の不安を、

張り詰めた空気の中で

「音」によって表現した稀有な実験作。

今やハリウッドで最も新作が待たれる

若き巨匠と呼ばれるデイミアン・チャゼル監督の、

正に野心に満ちたサスペンスフルな作品です。

究極と至高。

画像引用:© 2013WHIPLASH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

好きな事を仕事にしている人、

夢を叶えた様に見える人の多くは、

当たり前ですがそれだけの努力を積み重ねてきた人です。

失敗・挫折の数だけ強くなり、

ライバルを蹴落とし、評価を集め、勝負に勝つ。

長く険しい道のりを脱落する事なく、

諦めず、地べたを這って泥水を吸ってきた者だけが

辿り着く境地というものがきっとあるのでしょう。

主人公のニーマンは名門音楽学校の強豪バンドにスカウトされ、

そこで全人格を否定し恫喝する鬼教官のフレッチャーと出会います。

スティックを握る手から血が噴き出しても、

諦めずにドラムを叩き続ける根性で、

彼は名門バンドの主奏者の座を手にするのです。

現代のコンプライアンスに照らせば、

フレッチャーの教育方針は完全にアウトです。

最早何ハラスメントか分からない位の暴君です。

そしてまたこのフレッチャーという人物が謎に満ちていて、

実に興味深い人物なのです。

最高の音楽を具現化する為には、

何の躊躇も無く人を全否定する。

とことんまで生徒を追い込み、罵倒し、

それを乗り越えて努力した者だけがステージに立つ資格を得る。

フレッチャーは極限まで理想を追い求める完璧主義者なのです。

本物になる為には、

或いはフレッチャーの言う通り

極限まで追い詰められる必要があるのかも知れません。

しかし、ニーマンは師を裏切り、

自分の生き方に挫折するのです。

正解は無いのかも知れません。

結果がどうなるかは、本人の努力ではどうしようも無い事もある。

ニーマンの気持ちに立ってみても、

フレッチャーの立場に寄り添ってみても、

どこまでも正解というものは無い。

だからこそ芸術というものは尊いのかも知れません。

芸術的おつまみ

今日のおつまみは【生ハムとモッツァレラチーズのサラダ】です。

自家製のミョウガのピクルスも添えて。

芸術的な一皿に仕上げてくれました。

やっぱりおつまみも見た目が大事ですよね。

酷暑の食卓に涼し気な一品。

白ワインが進む事間違いなしです!

業を越えた魂のステージ

画像引用:© 2013WHIPLASH, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

今作を傑作とたらしめているのは、

言わずもがなラスト10分の衝撃的な演奏シーンです。

今作を観て体罰や教育の本質を語る事も容易ですが、

最も映画的に優れている点はやはり、

言葉を越えた「音」の表現であると思うのです。

因縁の相手を嵌める為に自身のコンサートで

ニーマンに演奏させたフレッチャー。

ドラムに未練のあるニーマンは

演奏家としての復帰を夢見てステージに上りますが、

まんまと騙されて煮え湯を飲まされる事に。

しかしここからが兎に角凄い。

互いの因縁を越えて、

復讐の為では無く、

純粋に「音」を交感させる為に、

至極の演奏で二人は理解し合うのです。

それぞれに考え方も道筋も違いますが、

求めていたものは結局一緒だったという事。

それは魂を震わせる音楽の力を全身で表現する事。

このラストシーンのサスペンスフルな展開。

激しいカットバック。

二人の視線のぶつかり合い。

言葉を越えて「音」で理解し合う因縁の二人の姿には、

どんな激しいアクションシーンでも、

どんなに恐ろしいサスペンスシーンでも、

達し得ない絶大なカタルシスがありました。

狂気の世界を覗き見たい時に観る映画。

今作で第87回アカデミ―賞助演男優賞に輝いたJ・K・シモンズ。

孤高の鬼教官フレッチャーは正にハマリ役でした。

繊細な指先、身のこなし、

そして絶妙な表情で感情の高低を見事にコントロールし、

圧倒的な存在感でスクリーンを支配しました。

長く映画を観ていると、

時にこうした類稀な俳優のパフォーマンスに出会う事があります。

一世一代の名演技。

彼の完璧な役作りを目撃するだけでも、

観る価値のある作品だと思います。