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こんにちは!ころっぷです!!
今日の映画は【ギルバート・グレイプ】です。
1993年公開の名匠ラッセ・ハルストレム監督作品。
ジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオの豪華共演。
登場人物の心模様にじっくりと寄り添う感動ドラマです。
この映画はこんな人におススメ!!
●家族の問題で悩みがある人
●どこか遠くに行きたいと思っている人
●人一倍責任感が強い人
●自分の人生をじっくり考えたい人
タイトル | ギルバート・グレイプ |
製作国 | アメリカ |
公開日 | 1994年8月20日(日本公開) |
上映時間 | 118分 |
監督 | ラッセ・ハルストレム |
出演 | ジョニー・デップ、レオナルド・ディカプリオ、 ジュリエット・ルイス、ダーレン・ケイツ、 ジョン・C・ライリー、メアリー・スティーンバージェン |
誰かの為に生きる事に疲れてしまった時に観る映画
今回はちょっと懐かしい映画のおススメです。
ハリウッドを代表する大スター、ジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオが
若かりし頃に共演した作品です。(実に30年前!)
監督は【マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ】や【サイダー・ハウス・ルール】で
高い評価を受けているスウェーデン出身のラッセ・ハルストレム。
一人の青年の心の移ろいを丹念に綴った脚本。
広大な景色と人々の生活を見事に映し取った撮影。
若い俳優達の素晴らしい演技。
決して派手な見所がある訳ではありませんが、
いつまでも心にその景色が残る深い余韻を持った映画です。
ジョニー・デップが演じる主人公の青年・ギルバート・グレイプは、
重度の知的障害を持つ弟と、家から一歩も出ない過食症の母親、
更に二人の姉妹の生活を支える為に生きています。
「音楽のないダンス」と形容される様な何も無い田舎町で、
寂れた食料品店で日々働いています。
常に物憂げな表情で遠くを眺めるギルバートは、
誰かの為に生きる事に慣れ切ってしまい、
どこか人生に諦めを感じてしまっている様な人物です。
そんな彼に起こる変化がこの作品の大きなテーマになっています。
ここではないどこかへ
画像引用:IMDb
人生に降り掛かる様々な困難。
それは時に逃れる事の出来ない宿命の様に圧し掛かってきます。
誰かのせいにする事も出来ず、誰にも文句を言えず、
周りの不寛容さに苛立ちながら、それを抱えて生きていく。
主人公のギルバート程では無いにしろ、
誰しも少なからず自分の置かれた状況に行き詰まりを感じる事はあるかと思います。
「何もかも捨てて、ここではないどこかへ行ってしまいたい」
そう考えた事がある人もいるのではないでしょうか。
人は何も選べずにこの世に生まれます。
当たり前ですがスタート地点から環境には差があり、それは平等ではありません。
「なんで俺だけ」と思う気持ちは当然だと思います。
ギルバートは一切の文句も言わず、自分の役割を全うしようと努力しています。
まだ将来ある若者ですが、誰かに自分の不幸の責任を押し付ける事をしません。
ただじっと遠くを見つめ、
どこかに行ってしまいたいという気持ちをグッと抑えつけています。
彼は無理をしているのでしょうか?本当の気持ちをただ隠しているだけなのか?
映画の前半、象徴的なシーンがあります。
近所の子供達が過食症で家から出ないギルバートの母親を面白がって
窓から覗き見ようとしています。
ギルバートはそれを𠮟りつけるのでは無く、
反対にその子供の体を持ち上げて母親の姿をよく見える様にしてやります。
ギルバートの友人はそれを見て「よくない」とギルバートをたしなめますが、
彼の本意はとても複雑であると感じさせるシーンでした。
ギルバートは自分の境遇に満足している訳ではありません。
母親からは「私の騎士」と頼りにさせていますが、
当たり前の若者の感情に生きているのです。
ただ抱えるものが余りに重た過ぎる事で、彼は身動きが取れなくなっているのです。
ラッセ・ハルストレム監督はギルバートの閉塞感を様々な演出で表現していきます。
町のどこからのアングルでも給水塔が映る様に撮っているのも、
強烈な閉塞感とギルバートのどこへもいけない心の有りようを暗示しています。
そんな彼の人生を大きく変えるきっかけとなったのが、
祖母と二人でトレーラーハウスの旅をするベッキーという女性との出会いでした。
ひとつまみ一周年
今日のおつまみは【子持ちカレイの煮付け】です。
アメリカの片田舎を舞台にした映画とは何の関連もありませんが、
和食の定番も実にお酒に合うおつまみです。
気が付けばこの「えいがひとつまみ」というブログを始めて1年が経ちました。
月日の経つのは本当にあっという間に感じます。
大好きな映画の魅力をお伝え出来ればと思い始めたのですが、
こうして毎日映画と晩酌を楽しめるのは本当に幸せな事だと思いました。
素晴らしい映画を作った人々と、
美味しいおつまみをいつも作ってくれる妻に感謝します。
自分らしく生きる事
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正にあるがままの自由な気持ちで生きている様に見えるベッキーとの出会いは、
長い年月で堅く閉ざされてしまったギルバートの心を徐々に解きほぐしていきます。
自分らしく生きるという事で、
誰かを傷つけたり犠牲にしてしまうかも知れないという気持ち。
優しく、人一倍責任感が強い人間だからこそ、
ギルバートは自分の人生に希望を見出す事が出来ずにいたのです。
正しい人間が生き辛いというのは、とても不幸な事です。
誰にも言えず、一人で抱え続けていた思いをギルバートはベッキーに語ります。
外の世界からふらっと流れて来た様な彼女にだから心を打ち明けられたのかも知れません。
苛立ちの気持ちから、ついカッとなって弟に手を上げてしまった時の、
ギルバートの涙を見守ってくれたのもベッキーでした。
人の気持ちに人生を捧げてきたギルバートが、
自分自身の気持ちを理解してくれる人間に出会った喜びは大きなものだったと思います。
新たな人生の始まり。過去との決別。
この物語には誰しも思い当たる人生のとても大切な事が描かれています。
誰かの為に生きる事に疲れてしまった時に観る映画。
自分の不幸を嘆き、人生に厭世的である事は辛い事です。
人の為に自分を犠牲にしていると考えている人間は、
実は自分の事も人の事も幸せにしているとは言えないのかも知れません。
若きジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオ、
そしてベッキー役のジュリエット・ルイスの全身全霊の演技が本当に素晴らしい作品です。
映画公開から30年もの月日が経ち、
私もこの作品を初めて観た時から大分歳をとりましたが、
ずっと心に残っている景色に帰って来た様な気持ちがして嬉しかったです。
あなたの人生の景色にもなり得る様な素晴らしい作品だと思います。