ドキュメンタリー映画

映画【フジコ・ヘミングの時間】おつまみ【茄子の揚げびたし】

画像引用:©2018 「フジコ・へミングの時間」フィルムパートナーズ

この映画はこんな人におススメ!!

●フジコ・ヘミングのファンの人

●美しいピアノの音色を聞きたい人

●世界中の街の景色が観たい人

●音楽の力で時間旅行がしたい人

タイトルフジコ・ヘミングの時間
製作国日本
公開日2018年6月16日
上映時間115分
監督小松荘一良
出演フジコ・ヘミング
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ピアノの音色で心を満たしたい時に観る映画

皆さんはフジコ・ヘミングというピアニストをご存知でしょうか?

スウェーデン人の父親と日本人の母親との間に生まれ、

幼少時代からピアニストであった母親の指導でピアノを始めます。

東京藝術大学在学時から既にコンクール受賞歴があり、

将来有望なピアニストであったにも関わらず、

無国籍状態である事で留学が出来ずに、

やっと渡ったドイツではチャンスを目の前に病気で聴力を失ってしまいます。

その後治療の甲斐あって左耳の聴力は40%程まで回復し、

日本に帰国後精力的にコンサート活動を始めます。

その激しく感情的な演奏スタイルが話題になり、

NHKのドキュメンタリー番組に取り上げられたことから、

一気に人気ピアニストとなります。

自由な生き方や、歯に衣着せぬキャラクターが受け、

クラシックでは異例のアルバムセールスを次々と叩き出します。

80代になっても精力的に活動し、

世界中からコンサートのオファーが絶えない人気演奏家。

そんなフジコ・ヘミングの苦悩と挫折に満ちた半生を追い、

何故彼女の演奏が聴衆の魂を震わせる事が出来るのか、

その秘密に迫る内容になっています。

音楽を愛し、人生を愛するフジコ・ヘミングの

奏でる旋律に浸る事の出来る115分間です。

空間を満たす旋律

画像引用:©2018 「フジコ・へミングの時間」フィルムパートナーズ

作品ではフジコの普段生活する「家」が重要なモチーフとして描写されています。

パリの家。サンディエゴの家。京都の家。

彼女の家はアンティーク家具や落ち着いた雰囲気の物で満たされています。

壁一面の大きな本棚には古書が並び、

100年以上前に建てられたアパートメントの内装は、

ガラス戸一つとっても歴史的な工芸美術品です。

部屋の壁には沢山の写真が額縁に入れられ飾ってあります。

彼女はそこで毎日4時間ピアノに向かい、

思い出が詰まった部屋を美しい旋律で満たします。

彼女にとってはショパンやリストの作った名曲達と同じ様に、

自分の人生が蓄積した「家」やその「空間」を慈しみます。

それが彼女のピアノが向けられる対象なのだと感じます。

記憶の中の、既に失われてしまった風景も、

旋律の中に呼び起こす様なタッチ。

楽譜を忠実に再現するのでは無く、

そこに確かな記憶の手触りを浮かび上がらせる事が出来るのが、

彼女の演奏の類稀な所なのでは無いでしょうか?

それは彼女だけの記憶に留まらず、

聞いている我々の記憶も呼び起こしていきます。

頭を空っぽにして、ただその音色に浴する幸福が、

彼女の大切にしている「空間」には溢れている様に見えます。

街や人にも、「古きを愛し、新しきを嫌う」様な彼女の姿勢。

それは時代を超えた名曲を演奏し続ける事と同じ様に、

記憶の中にある風景を表現し続けているからなのかも知れません。

フジコ・ヘミングにとってのピアノとは過去への旅なのだと思います。

シンプルな和食

今日のおつまみは【茄子の揚げびたし】です。

うちの妻の大好物は海老ですが、

ころっぷは茄子が好きです。

子供の頃は苦手だったのが妻の手料理のおかげで矯正されました。

本当に茄子は何にしても美味しいし、何と一緒にしても合いますよね。

今回は素揚げした茄子を麵つゆベースの和風だしに漬けます。

上から鰹節とミョウガを乗せるだけ。

さっぱりとしていて、お酒にも合うしおかずにもなります。

フジコ・ヘミングさんはベジタリアンだそうですが、

勿論、我々も肉ばかりではなく野菜も大好きです。

日々の行い、歌う様に奏でる事

画像引用:©2018 「フジコ・へミングの時間」フィルムパートナーズ

映画の中で彼女はピアノの演奏についてこう言います。

「機械じゃないんだから、間違えたっていい。乱れる事、動く事、

人が歌うように弾く事」

ピアニストは人生を捧げて演奏する事を強いられます。

毎日4時間の練習。

どんな体調、精神状態でも観客に精一杯の演奏をする事。

音楽への理解、敬意。

彼女の人生は決して安寧なものでは無く、

悲しみと孤独に彩られてきました。

しかし彼女は鍵盤に向かい続け、やがて大きく羽ばたきます。

苦悩と挫折の先に掴んだピアニストとしての成功は、

誰よりも自由で、力強い演奏を可能にしました。

その演奏が聴衆を魅了するのは、

誰よりも巧いからでも、まして楽曲の理解が正確だからでもありません。

彼女はリストの難曲「ラ・カンパネラ」についてこう言います。

「この曲は死に物狂いで弾く曲だから、日々の行いと精神が出る」

同じ曲を弾いていても、演奏者によって全く違う様に感じる事。

それが演奏者の日々の行いと精神だという事なのです。

彼女が大切にしている記憶に囲まれた「家」という空間。

猫や犬との生活。街角では困っている人に必ず施しを与える事。

悲しみと苦悩を経験しつくした彼女だからこそ、

曲の中にある慈しみと愛の精神を表現出来るのだと思います。

それがフジコ・ヘミングというピアニストの強さだと感じました。

ピアノの音色で心を満たしたい時に観る映画。

そのエキセントリックで謎に包まれた存在感は、

ピアニストとしての彼女を一種神格化してきた要因でもありました。

音楽に詳しく無くても、ピアノをよく分からなくても、

彼女が鍵盤に向かう姿にはどこか神秘的で尋常ならざる迫力があるのが分かります。

これは80歳を過ぎても世界中を飛び回り演奏をする孤高のピアニストの、

バックボーンと思想に触れる事の出来るドキュメンタリーです。

そしてそれと同時に人間として至って普遍的な、

家族を愛し、人生を愛し、自分を精一杯生きる女性の物語でもあります。

是非この作品を通してフジコ・ヘミングの演奏を体験して頂きたいと思います。

ショパンやリストの悲しく美しい旋律を、

彼女の愛と苦悩に満ちた生涯を通して感じる事は、

何にも勝る幸福であると思います。